2015.08.21

ヒューマンキャピタル2015東京『「なでしこリーダー」を組織で育てるしくみ~ヤフー、リクルートに学ぶ女性活躍推進 挑戦とホンネ~』

 

「ヒューマンキャピタル2015東京」日経BP社主催 協賛:リ・カレント株式会社


この度、7月17日ヒューマンキャピタル2015東京にて、リ・カレント株式会社とWisH株式会社の合同企画講演『「なでしこリーダー」を組織で育てるしくみ~ヤフー、リクルートに学ぶ女性活躍推進 挑戦とホンネ~』を開催しました。

女性活躍推進には、意識・風土・制度の3アプローチが重要です。
中でも、能力はあるのに自信の持てない潜在的女性リーダーをいかに早期に発掘し、本人の意識と職場との連携により、柔軟かつ芯の強い“なでしこリーダー”へ育成するかが、企業にとって最近の大きな課題のひとつです。

今回は“なでしこリーダー”を体現する3名の女性をお招きして、潜在的女性リーダーを“なでしこリーダー”に育てる組織のしくみと、実際に現場で奮闘されている方々の挑戦を、パネルディスカッション形式でお届けしました。

登壇者プロフィール


【モデレーター】
池照 佳代(いけてる かよ)氏
有限会社アイズプラス 代表取締役
WisH株式会社 プロフェッショナルパートナー

14年にわたり複数社で企業の人事担当を務めた後、子どもが3歳の時に大学院に入学してMBAを取得。在学中に人材・組織開発を支援する有限会社アイズプラスを設立。設立のきっかけは、「子育て時間と仕事時間を自分でコントロールするため」。現在はIC(:インディペンデント・コントラクター。高度な専門性を備え、業務単位の請負契約を複数の企業と結んで活動する人)として人事・経営業務支援や女性活躍支援などのコンサルティングを展開中。自社代表の他2つのNPO団体理事、株式会社gift社外取締役も務める1児の母。

【パネリスト】
斎藤由希子(さいとう ゆきこ)氏
ヤフー株式会社
ピープル・デベロップメント統括本部
人財開発本部 本部長

インターネット黎明期からヤフー株式会社の人事業務に従事して17年目。入社当時は約100名だった社員数が、現在は約5,000名規模の大企業になり、採用および人財開発、組織活性を担当する組織の長として、多忙を極める日々。グローバルな採用活動のため海外出張もこなす。2児の母。

森本 千賀子(もりもと ちかこ)氏
株式会社リクルートエグゼクティブエージェント
エグゼクティブコンサルタント

株式会社リクルート人材センター(現・株式会社リクルートキャリア)に新卒で入社し、人材エージェントとして働きながら、結婚、出産を経験。現在はエグゼクティブ層人材、特に女性エグゼクティブのキャリア支援を行う。
本業のかたわら、小中高校生のキャリア学」「女性のハッピーキャリア支援」「 “営業ビジネスパーソン”へのエール」「婚活支援」などのライフワークにも注力。
忙しい中でも「ビジネスパーソン」×「家庭人」×「自分」という「ハッピーキャリアバランス」をとれているのは、入社当時、上司から「 “リクルートの森本”ではなく自分ブランドを作るように」と言われていたことによる。
朝3時起きで仕事とプライベートを両立。2児の母。

女性活躍を推進する適切なフィードバックと人財の可視化|リ・カレント|WisH

Q1:女性活躍推進をする側にとっての肝は何か?


池照氏からの1つ目の質問「女性の活躍を推進する側として、特に何が『肝』と感じており、何を軸に進められましたか?」に対して、ヤフー株式会社の斎藤氏は「適切なフィードバックと人財の可視化」が肝であるとし、「社員一人ひとりの才能と情熱を解き放つ」ための人事施策として、代表的なものとして以下の3つを挙げました。
1つ目の施策は、原則、週1回行う上司と部下の1対1の面談で、部下に気づきを与える「1on1」。
2つ目の施策は、管理職をさまざまな角度から評価、フィードバックすることで管理職自身の成長と、管理職とメンバーの相互理解とチーム力を高める「ななめ会議」。
3つ目の施策は、社員一人ひとりの能力や個性を見える化するために、強みや課題、3年後の理想像、その理想像に向けた経験のデザインを書き込んだ「人財開発カルテ」をつくり、上司や関連部署の管理職が、対象社員にどのような経験を積ませるかを議論し合う「人財開発会議」。

また同社が、「異動こそ最大の人財開発」として、半年ごとに社長、副社長、執行役員が社員の能力やポジションを可視化して、リーダーの登用や戦略的配置、今後の育成について議論する「全社人財開発会議」についても紹介がありました。
さらに同社は、「人財開発企業になる」という考えのもとに、管理職以外の社内コーチおよび人財開発担当を約180名置き、社員一人ひとりの育成を考えて人財育成に時間をかけているということでした。
なお、同社は現在、女性管理職比率が15.3%で、2011年比で約3%増加。「IT業界は女性が長く働きにくいのでは?と言われているが、スピードや変化が多いからこそ、しっかりと現場で社員一人ひとりと向き合う仕組みがあればむしろプラス。
長期間同じ組織にいて、あうんの呼吸で成り立つ組織よりも働きやすい。」と斎藤氏は語りました。

続いて株式会社リクルートエグゼクティブエージェントの森本氏は、「そもそもリクルートがダイバーシティー推進に力を入れ始めたきっかけは、社会からのリクルートに対する多様な働き方支援の期待値が高かったことが背景にあった」と言います。
森本氏自身も女性が活躍している企業であることを期待して就職。実際、常にフェアに扱われたため、男女の差を意識したことはなかったそうです。
しかし、男性管理職には、ワーキングマザーをどう支援したらいいのかわからない人もおり、フェアではあるがケアはない風土だったと付け加えました。

このような課題から、「リクルートグループ各社は役員の10%以上を女性にする」という目標を設定しています。

具体的な取り組みとしては、女性を経営層へと押し上げるキャリア育成のために「女性リーダー研修」を実施。社内の女性役員や社外のロールモデルとなる人のセッションを受け、自らの情熱や志に向き合い、課題を内省し、ビジョンを描いて明確化し、役員と各社社長の前でビジョンを語るという研修を半年かけて行っています。研修の中で、同じ立場にある仲間との接点を作る構成になっているそうです。

女性を経営層へと押し上げるキャリア育成のために「女性リーダー研修」を実施||リ・カレント|WisH

また、28歳の女性を対象にした同グループのキャリア支援制度「28 Career Cafe」では、施策の一環としてセミナーを実施しています。
「28歳はライフイベントを迎えるターニングポイントであり、迷いや葛藤がある年齢」という仮説を立て、ワーキングマザーの管理職が登壇するワークショップ、個別面談などを行っています。

ワークショップでは、キャリアとプライベートの両方にチャレンジするスタンスを醸成し、漠然とした不安にとらわれ過ぎず、いつライフイベントが来てもいいように今できることに目を向けるようにすると言います。

その中で、「子供を持ってバリバリ仕事をするバリキャリ派」や「ライフワークを重視しながら趣味や表現の場を持ち、ワークライフバランスを取る派」など、多様なタイプのワーキングマザーに登壇してもらい、自分の目指したい姿の参考にしてもらっているそうです。
そして、個人の属性情報に合わせて先輩女性社員をメンターとしてマッチングさせ、漠然とした不安を解きほぐし、キャリアの選択肢のアドバイスを行うという取り組みも紹介しました。

なおワークショップでは、グループ各社の人事ではなく、トップに参加してもらうことで、「トップが忙しい中でも自分たちのために参加してくれている」ということを示し、参加者のモチベーションを上げ、自分たちのポジションを見直す機会にしてもらうそうです。

さらには、上司向けに、若手女性社員が不安に思う仕事と生活の両立に関する知識を深め、ライフイベントを視野に入れた成長支援の重要性を伝えるためのマネジメントブック」を制作し、リクルートグループの管理職約780名に配布するという取り組みもしているそうです。

以上2社の取り組みについての回答を受けて、
池照氏は「テコ入れする年齢層を決めて集中的に育成すること(横)、上司・部下のラインで育成すること(縦)の2つが重要」と語りました。

Q2:自身がリーダーや管理職になったときの意識や取り組みは?


つづいて池照氏は、「ご自分が周囲に影響力を与える立場(リーダーや管理職)になったとき、どのような意識でおり、またどのような取組みをされたのですか?」と質問しました。

斎藤氏は、「初めて管理職になったときは、管理職が嫌でした」と回答。

結婚、出産を経て部長になり、組織変更で新体制に変わってからは、半年で約60の施策を実施したと言います。当時は部下にも完璧を求め、周囲から「孤高の人」とフィードバックを受けることもあったと話しました。
その後、管理職の役割は「部下の才能と情熱を解き放つこと」と考え、部下に任せることを大切にし、6割を合格ラインと設定し、優先順位づけをしっかり行ったと言います。
その他、組織開発では「傾聴、観察力の強化」「関係構築力の強化」「アシミレーション」「自己理解、他者受容」を施策や研修として行ったと紹介がありました。

一方、森本氏は20代で管理職になり、「当時はリーダーシップを発揮しなければ」と躍起になっていたが、上司に「部下の力を引き出す伴走者でよいのではないか」と言われたことで肩の力が少し抜けたと回答しました。
その後、育休から復帰後に時短マネジャーとなった際の話では、「とてもやりがいのある経験でした。管理職を出産前に経験していたので、復帰後に管理職になる覚悟が決めやすかったです。また、人が育つことは自分のやりがいとなるので、そういう意味でも管理職は魅力のある仕事だと思います。自分の経験を踏まえて、出産前に経験する“前倒しキャリア”を推奨します」と話しました。

両氏の回答に対して池照氏は、「女性に管理職の魅力を伝えることは、会社としてすぐにできることの1つ」とパネルディスカッションを締めくくりました。

しなやかに輝き続ける働く女性が活躍できる組織へ


リ・カレント株式会社とWisH株式会社 では、各自の環境や状況に応じたキャリアデザイン、働き方をバランス良く実現していけるような支援、施策を発信しています。
3つの取り組み
(1)研修・制度構築
(2)女性活躍組織診断
(3)ワーキングマム・プロジェクト

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