いまどき新人を読み解く Vol.6 いまどき新入社員に求められる「10の成長力」

2016.08.8

【成長力編】5.「勝手にプレッシャー」メンタリティを支える成長力

今回は、いまどき新入社員の早期戦力化するために身につけるべき力の「5.勝手にプレッシャーメンタリティを支える成長力」をご紹介します。

いまどき新入社員に求められる「10の成長力」

この「10の成長力」は、「5つのメンタリティ」にそれぞれ2つずつ対応しています。また、研修場面だけではなく、職場でのOJTでも取り入れていただけるよう、育成ポイントも併せてご紹介します。

5.「勝手にプレッシャー」メンタリティを支える成長力

5-9.ストレスコーピングを身につける

勝手にプレッシャーメンタリティには、ストレスコーピングを身につけることが有効です。ストレスコーピングとはストレッサーにうまく対処することで、ストレッサーとなる問題そのものに働きかける「問題中心型コーピング」と、問題の捉え方を変えることで対処する「情動中心型コーピング」の2種類があるとされています。

たとえば上司から自分の現状からは完遂できそうにない仕事の指示を受けたとします。仕事内容を分解し、担当領域の削減や納期の延長を上司に交渉する、という対応は問題中心型コーピングです。一方、あまりの難題に感じるストレスを前に「これは成長できるチャンスだ」と捉えなおすことでモチベーションを落とさずに仕事に取り組もうとすることは情動中心型コーピングにあたります。

新入社員にとって主に大事となるのは情動中心型コーピングです。これはトレーニングによって身につけることが出来ますので、研修のコンテンツに組み込むことをお勧めしています。できればある程度仕事の経験を積んだ後の方が使えるスキルとして定着しますが、もし配属前の導入研修時に学ばせたいということであれば、仕事体験のような形である程度壁を乗り越える経験をした後の方が実際に活用できるスキルを身につけることが出来るでしょう。
ストレスコーピングについては世の専門家の方々が良著をたくさん出されていますので、詳しい内容についてはそちらにお任せするとして、ここでは新入社員が最初のうちに知っておいた方が良い3つのステップをご紹介します。

ストレスコーピングステップ1:「出来事」と「感情」は別物であることを知る
人は、ある出来事に遭遇すると喜び・悲しみ・怒りといった感情が沸き起こります。この起きた出来事と感情は直結しておらず、その間には受け止め方フィルターがあり、このフィルターによって感情が変化するというメカニズムを知っておくと、感情コントロールに大きく役立ちます。(米アルバート・エリス氏が提唱したABC理論です)
簡単に言うと、ポジティブ・ネガティブといった見方がありますが、これは決して「ポジティブに生まれた人」という人が存在するのではなく、「物事をポジティブフィルターを通してみている人」という理解をするのです。このフィルターは人によって傾向が違いますので、自分のフィルター傾向を知り、フィルターを時に取り換えることでストレスをコントロールすることが出来るということをまず理解しましょう

ストレスコーピングステップ2:変えられるものに目を向ける
ではそのフィルターを取り換えるための最もわかりやすい方法をご紹介します。
困難や失敗経験にぶつかって乗り越えられない時に、その原因を変えられるものに置くことによって、次の一手を考えることができ、ストレス対処することができます。いわゆる「原因帰属理論」の中の、ワイナーの成功と失敗の帰属モデルです。

失敗原因を自分または自分以外のもののどちらに置くか、といえば自分自身に置きます。自分以外の環境や他者といったものは、変えにくい(変えられない)ものであるからです。次に、自分の中でもその原因を、変えにくいもの(気質・能力・性格など)から、変えやすいもの(努力・工夫など)に置きます。すると、例えば失敗経験に落ち込んだとしても、深く落ち込みすぎることなく、失敗体験からの学びを次の挑戦へとつなげることが出来ます。

出来事と感情を切り離し、その間のフィルターを変えるというトレーニングを研修では行います。これは自分の中で無意識に行ってきている思考パターンなので、なかなか一人で実践することは難しいと思います。同期数名のグループ内でワークするだけでも効果があります。自分自身のフィルターを知ると同時に、人によってこれだけ物事の捉え方が違うということを学ぶことが出来るため、対人対応力の強化も期待できます。

ストレスコーピングステップ3:口ぐせを変える
ステップ2を職場で継続するために、特に新人にお伝えしているのがこの口ぐせ法です。
口ぐせの効果は脳科学でも証明されています。難しい、つらい、ムカつく、ありえない、しんどい…といったネガティブな言葉は脳みそにネガティブな感情を刷り込み、ストレス感情を助長します。やりがいがある!しんど楽しい!いろんな人がいるなぁ!新しい考え方だ!など、プラスの口ぐせに転換することで、自律神経が活性化してだんだんプラスの感情に変化していきます。自分の口ぐせは意外と自分では気づかないうちに発しているものです。ぜひ導入研修期間中に、マイナスの口ぐせを見つけたら、お互いに指摘し合ってプラスの口ぐせを身につけるようなしかけをしてみてください。

5-10.乗り越えた達成感を味わう

「勝手にプレッシャー」メンタリティの背景に、捨てきれない万能感というお話をしました。この万能感の扱い方にはいろいろとあるのだそうですが、万能感を健全に捨て去るためには、挫折経験(中でもコミュニティにおける他者との関わりの中での挫折)とそれを乗り越える経験をすることが最も有効なのだそうです。
これも専門的な話は各所の名著にお任せをしますが、私自身は実はこのテーマが最も根深く重たいテーマだと感じています。いまどき新人と向き合っていると、学生時代に他者と本気で関わる中で挫折した経験が年々減っていると感じます。導入研修では3日間の仕事シミュレーションを通じて社会人としてのマインドや仕事の基本と同時に、人と本気で関わるとはどういうことなのか、また仕事に本気で取り組むとはどういうことなのかという体感知を養って職場へと送り出すプログラムを10年ほど実施しています。当初このプログラムの目的は既述の通り、仕事のイロハを体験してもらうことと、突破体験を通じたマインドの醸成だったのですが、ここ数年でもう少し深い意義が加わってきているように感じます。

余談ですが、いまネットで「挫折経験」と調べると就活での挫折経験トークマニュアルがたくさん出てきます。中には挫折経験を聞くことに意味がないという論評もあるようですが、私自身はこといまどきの学生に対してはそう思いません。理由はすでに述べた通り、万能感を捨てきれずに社会組織へ入ることがいかに本人にとって大変なことか、身近でいくつかのケースを見てきたからです。
人材開発担当者としては、「採用でなんとかしてよ」と嘆きたくなるところかもしれませんが、残念ながらいまどき新人が活躍し将来を担える人材となるよう、人材開発施策でなんとか手を打たなければなりません。近年では、OJTトレーナー制度がかなり整えられ、失敗しないように丁寧に教えてもらえる職場環境が増えてきているようです。他にも1人1人の負荷増大や残業時間削減などを背景に、20代のキャリアに必要と言われる荒波にもまれるような修羅場体験を積みにくくなっている職場が増えています。私たちができることは、新人指導者が良質な失敗体験を積ませるための支援のほか、職場配属前の早い段階で大きな挑戦を乗り越える経験を仕掛けることで、職場で期待される新人となるような支援をしていくことが大事だと考えています。


楠 麻衣香
リ・カレント株式会社 若手人材開発事業部マネジャー

中央大学総合政策学部卒。経営コンサルティング会社、外資系研修会社を経てリ・カレントに参画。社会人1年目の挫折が原点となり、現代の新人教育のあり方の 追求に取り組むようになる。大手企業を中心とした人材開発支援に携わる傍ら、ゆとり世代新入社員育成のための「ゆとレスプロジェクト」を発足しゆとり世代 にフィットした新人研修を開発。現在は講師として登壇する傍ら、同社マーケティングや新卒採用も担う。


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