CASE
個人と組織の未来を変えていく
人材開発担当者様の挑戦ストーリー
共感によって外部環境変化を顧客価値に変える
エンゲージメント向上施策
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中山福株式会社
管理本部 人事総務部
岡本豊氏、今村沙織氏
キッチン用品やダイニング用品など家庭用品の専門商社である中山福株式会社。
同社では2021年より、各種研修施策と連動した全社エンゲージメント向上施策に取り組まれています。
本施策について、実施に至った経緯や、背景にある想いを担当者のお二人に伺いました。
対談者
中山福株式会社 管理本部 人事総務部 シニアマネージャー 岡本豊氏
中山福株式会社 管理本部 人事総務部 マネージャー 今村沙織氏
リ・カレント株式会社 人材組織開発プロデュース部 マネジャー 谷口大岳
若手社員をはじめとした離職防止をきっかけとした、
エンゲージメント向上施策の実施
-施策企画時にお持ちだった課題感はどのようなものですか
今村氏(以下、敬称略):
きっかけとなったのは、離職率の高さが非常に大きな課題だったからです。
特に課題となっていたのは若手層です。入社3年目での離職率は一般的に3割程度とされていますが、当社の場合、それを大きく上回る状況でした。
年間の離職率で見ても、社員全体の数%が辞めていました。
この状況を見て、課題をきちんと把握し、数値として可視化する必要性を感じました。そのため、人事部で話し合い、離職者や現役社員へのヒアリングを実施し、問題点を明確化することにしたんです。
岡本氏(以下、敬称略):
当初は離職の理由が漠然としていました。
上層部からも対策を求められていましたし、具体的な対策が見えない中で「職場コミュニケーションを増やすには」といった話が出たこともありました。
けれど、それだけでは根本的な解決にならないと感じたんです。
そこで、課題を整理し、優先順位を明確にして、本当に取り組むべきことを見極めることに全力を注ぎました。それがエンゲージメント診断を導入したきっかけです。
-導入を決定するにあたり、どのようなことを重視されましたか
岡本:
エンゲージメント診断をとるだけではなく、結果に対しても突き詰めて考える必要がありました。
人は問題の原因追及には積極的になりがちですが、良い結果についても深掘りすることが大事です。
そうした強みを活かし、現場と人事が一体となってエンゲージメントを高めることが理想的な形だと考えています。
そして、単に「こういう結果でした」と共有するだけで終わらせず、実際に現場で活かせる形にすることが、これからも大切だと思っています。
谷口:
導入支援を担当した立場から申しますと、まず最初に調査を行い、その結果をマネージャーの皆さんにお返ししました。
この際、マネージャー研修とセットで実施したことが、彼らの行動を促進するきっかけになったと思います。
多くの企業では、経営層が結果を取りまとめて現場に伝えるのに苦労するケースが多いのですが、御社の場合、アシスタントマネージャーも含めた研修を行うことで、現場での実践に繋げる仕組みが整えられていました。
また、初めてのエンゲージメント調査ということもあり、部署ごとの結果シートを用意するなど、活用しやすい形でフィードバックを進めたのも工夫の一つでした。
結果を長期的な視点で捉え、2〜3年かけて取り組むスパンで考えられたのも特徴的でした。
とはいえ、時期によって事業状況が変化するため、その変化に合わせて柔軟に対応する必要があり、ここは苦労された部分だと思います。
今村:
その点、社長が人事分野への理解が深く、人材を重要視していたことが、エンゲージメント調査や研修をセットで進める際にスムーズに導入できた要因だったと思います。
岡本:
加えて、若手社員の高い離職率がリスクとして認識されていたことも、導入を迅速に承認していただけた理由ではないでしょうか。
課題を解決するための動機が明確だったことが追い風になったと感じています。
-そうした施策を検討するうえで、リ・カレントを選んでいただいた理由はなんでしょうか
今村:
当時、エンゲージメント向上を支援いただける会社に4〜5社ほど話を伺いました。
その際、調査内容だけでなく、具体的な施策の提案がセットでできるかという点を重視していました。
私たち人事部は少人数で採用から労務管理まで幅広い業務を担っています。
その中で、エンゲージメント向上に取り組んでいたため、伴走してくれるパートナーが必要だと感じていたんです。
リ・カレントさんは以前からアシスタントマネージャー研修でお世話になっていたこともあり、信頼感がありました。
特に他社と違ったのは、私たちが抱えている課題感を引き出し、それをしっかりと言語化してくれる点でした。
調査が得意、ウェブ対応が可能といった強みを持つ他社もありましたが、リ・カレントさんは研修と調査を総合的にサポートしながら、私たちと一緒に並走してくれる点が非常に魅力的でした。そのため、最終的にリ・カレントさんを選ばせていただいたんです。
施策を単発で終わらせない。職場自走型のエンゲージメント向上へ
-実施にあたり、特に注力したポイントはどんなところですか
岡本:
今回のエンゲージメント調査では、「上司の支援」に特に力を入れるよう部内メンバーと共有しました。
社員が「この会社で頑張ろう」と思えるきっかけは、近しい先輩や上司の存在が重要だと考えたからです。
トップダウンで社長が発信しても、階層が離れているため、どうしても受け身になりがちです。理想としては先輩からの支援が十分に得られる環境をつくることですが、まずは上司が支える仕組みをしっかり整備することに注力しました。
特にフォーカスをあてたのは25歳から29歳の層です。
この年齢層は世間的にもエンゲージメントが低くなりやすい傾向があるため、この層に対して重点的に働きかけを行えるよう注力しました。
-実際にそうした点に注力してみての今回の結果は、どのように感じられましたか?
岡本:
実際に、エンゲージメント調査の結果では、25~29歳の層でエンゲージメントが大きく上昇しました。この点は非常に良かったと感じています。
ただし、「何が良かったのか」をさらに掘り下げる必要があると考えています。
一方で、会社の雰囲気が緩すぎる印象を持たれないようにすることが次の課題です。
エンゲージメントが高いことは共感を得られていますが、それを企業として実際の成果に結びつける必要があります。
現在の重点は「定着と活用」にありますが、次は「活用」に重点を置いた取り組みへシフトしていかなければならないと考えています。
-エンゲージメント調査後、活用において難しかったことはありましたか
谷口:
研修の後、アンケートを取ったり、行動がちゃんと変わったかを確認したりするなど、研修を単発で終わらせない取り組みをされていましたよね。
他社の方がやりたいと思ってもなかなか手が行き届かない部分を、社内で徹底して行っていらっしゃると拝見しております。
岡本:
研修の満足度が年々上がっているのは嬉しいことです。ですが、研修に頼りすぎるのもリスクだと思っています。
社員達それぞれが自分たちで成長していける仕組みが必要で、研修を少しずつ減らしていく方向に持っていかないといけないと感じています。
今村:
管理職の方々はエンゲージメントの重要性を理解してくれていますが、職場を変える仲間が欲しいという気持ちがあるみたいで、「メンバー層も一緒に研修に呼んでもらいたい」との声が最近は増えています。
岡本:
そういった点では、一つ下の階層であるアシスタントマネージャーによる「フォロワーシップ」がカギになるんじゃないかな、と。
マネージャーとアシスタントマネージャーが互いに助け舟を出しあうことで、エンゲージメントの効果をさらに実感できるようになるのではないかと考えています。
言いたいことを言える企業風土が、エンゲージメント向上の後押しに
-施策実施前後でどんな変化がありましたか
今村:
施策を始めた初年度は、会社や制度に責任を求めるような意見が多かったんですが、徐々に「自分たちが動かなければ変わらない」という意識に変わってきました。
特に管理職以上の社員間では、自分でできる範囲で行動しようという姿勢が目立つようになり、具体的なアクションを起こす人が増えています。
一方で、ネガティブな変化としては、研修への依存度が高まっているという新たな課題も出てきています。
「あの人も研修に呼んでほしい」「みんな参加しなければ」という声がどんどん増えていますね。
-研修の目的やタイミングが現場にうまく伝わらないこともあると思いますが、人事と現場の間で壁をなくすために工夫されている点はありますか?
今村:
現場の管理職と話す機会を増やし、気軽に意見を言える関係づくりを心掛けています。
最近では、現場から本音を伝えてくれる方が増え、現場と人事の間の壁は薄くなってきたと感じます。
岡本:
こちらの意図がある程度浸透してきている実感があります。
研修の後にアウトプットやヒアリングが来るというのを現場が理解し、備えるようになったのは進歩ですね。
今村:
現場の感覚としては「言ったことが上に伝わる」という認識が強まってきていると思います。
-その変化が生まれた要因は何でしょうか
今村:
人事と職場の皆様との距離は、他社と比べても近いかと思います。
うちの社員は素直で真面目な方が多いので、意見を出す場があれば、積極的に話してくれるのがありがたいところです。
谷口:
意見を聞き出すためにパワーをかける必要がなく、初めから率直な意見を話してくれるのはすごいことだと思います。
アンケートの回答が抽象的な場合でも具体的にヒアリングや電話をして深掘りするという取り組みは、通常、人事はやるべきと分かっていてもそこまで踏み込めないことも多いものです。
我々としても、第三者的な立場から意見を聞くことや、現場ヒアリング、さらには店舗訪問を提案することもありますが、御社の場合は内部で本音を話しやすい環境が整っているようで、それは非常に珍しいケースだと思います。
今村:
ありがとうございます。
岡本と私はもともと支店出身で、営業現場の実情をよく理解しているので、「現場ではこうなるだろうな」という感覚を持ちながら話を進められるのは強みかもしれません。
エンゲージメントとウェルビーイングの両輪を目指して
-今後の人材育成や企業の目指す姿、ビジョンがあればお聞かせください
今村:
エンゲージメントを高めることは引き続き重要ですが、その先の目標として、全社員がチームとして高い目標に向かって走れるような職場環境を作りたいと思っています。
エンゲージメントが高まる一方で、目標が曖昧なままだと「ゆるい職場」になりかねないという懸念があります。
そのため、エンゲージメントと共に、具体的な目標に向かう姿勢を育む人材育成を進めたいです。
岡本:
私たちの部門では「活力ある人材で組織を埋め尽くす」というビジョンを掲げています。この目標に向かうため、部門メンバー全員にビジョンの柱を共有しました。
エンゲージメントを高めることがこのビジョン達成の基盤となりますが、同時にウェルビーイング(幸福感)の実現も重要です。
エンゲージメントとウェルビーイングは両輪の関係であり、これを推進する役割は人事総務部が担います。
この部門が起点となって経営理念を全社員に浸透させ、行動に移すことが求められています。
部のビジョンと各施策が繋がっていることを理解してもらえるよう、繰り返し伝えていくつもりです。