テレワークのポイント
2020.03.16

テレワーク導入の目的と個人とチームを維持するために必要なこととは?

勤務地から離れたところで働く、「テレワーク」という働き方が広まっています。昨今ではコロナウィルスの感染対策として外出を控える呼びかけも増え、テレワークを推進していなかった企業でも、喫緊の課題として捉えられているのではないでしょうか。

この記事では、テレワークを導入するメリットと、導入する際の課題、対応のポイントについて解説します。

テレワーク導入の目的と個人とチームを維持するために必要なこととは?

  1. テレワークの主要な3つの形態とは
  2. テレワークでどんなメリットが得られるのか
  3. テレワーク導入にあたっての課題
  4. テレワーク導入のプロセス
  5. テレワークと“会社の一体感”を両立させるには
  6. テレワークの導入が目的ではない

テレワークの主要な3つの形態とは

インターネットなどのICT(情報通信技術)を活用することで、自宅や会社から離れた場所で仕事をすることをテレワークといいます。決められたオフィス勤務地以外のさまざまな場所で働くことは、育児や介護等との両立など働き方の柔軟性をもたらし、従業員にとって継続して勤務しやすい環境づくりにもつながります。

<参照>
厚生労働省:働き方・休み方改善ポータルサイト「テレワークとは」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/telework/

テレワークには、「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務」と3種類の形態があります。それぞれの特徴を見てみましょう。

1.在宅勤務

オフィスに出勤せず、自宅で仕事をする働き方です。通勤の負担がなくなり、育児・介護の関係で、自宅で過ごさなければならない従業員も働きやすくなります。

2.モバイルワーク

外出先のカフェやコワーキングスペース、顧客先などを利用して仕事をする働き方です。営業など外出が多い職種にとって有用な働き方です。

3.サテライトオフィス勤務

決められたオフィス以外にあるサテライトオフィスを利用する働き方です。自宅からサテライトオフィスのほうが近い従業員は、働く場所を選ぶことができ、通勤の負担を軽減することができます。

テレワークでどんなメリットが得られるのか

では、テレワークを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。テレワークを導入することで得られる、企業・従業員それぞれのメリットについて解説していきましょう。

■企業にとってのメリット

1.優秀な人材を確保できる

場所に限らず人材を採用できるので、企業にとっては、海外や地方など遠隔地にいる優秀な人材を雇うことができます。また、育児や介護、急な病気などで通勤が難しくなった優秀な社員の離職を防ぐことにも繋がります。

2.業務改善の機会になる

テレワークを導入を検討する、実際に導入する過程で、必要な資料の電子化や不要な会議を無くしたり整理したり、タスクを管理する環境を整えることが必要になるため、業務の効率化を推進するキッカケになります。

3.自然災害等のBCP(事業継続計画)対策になる

普段からテレワークを実践することで、自然災害などの発生時でも、さまざまなケースに対応した働き方や生産活動など、企業の業務活動を継続する仕組みを作ることができます。コロナウィルスの流行などはひとつの例ですが、地震、台風などの災害、停電による交通機関の停止など、企業活動を妨げるさまざまな要因に対処することができるでしょう。

■従業員にとってのメリット

1.ワークライフバランスが改善される

通勤時間の負担が軽減されることで、1日片道1時間などかかっていた通勤時間を家族との時間や趣味の時間に充てることができるようになります。単純に自由な時間が増えるだけでなく、満員電車などの通勤のストレスから解放されることで、ワークライフバランスが改善されるでしょう。

2.仕事の効率がよくなる

社員が集中しやすい環境を選んで仕事ができるため、個人やチームの生産性の向上につながります。通勤の負担が軽減され、より効率的なミーティングや仕事の進め方が求められるようになり、仕事の効率アップにつながります。

3.職場とのコミュニケーションが強固になる

テレワークを導入すると、これまで社内で行っていたミーティングが、Web会議やチャットなどに置き換わることになります。対面で行っていたミーティングと同様なコミュニケーションをオンラインで行おうとするならば、働くメンバーそれぞれが、より意識的に情報共有を行う必要がでてきます。テレワークにより、コミュニケーションがより強固になるでしょう。

テレワーク導入にあたっての課題

ここからは、テレワークをこれから導入する会社が検討するべき課題と、その対応ポイントについて説明します。

1.情報共有・管理

遠隔だと、対面で伝えるよりも認識の齟齬が起こりやすいため、社内の情報共有不足が起こりやすくなります。また、情報の管理方法・管理場所についても各社員に周知、徹底が必要になります。

2.セキュリティ対策

社内で管理されていたデータを外部に持ち出すことになるため、さまざまな情報漏洩の危険が出てきます。またカフェなどの公共の場で仕事をする際は、パソコンの画面を横から見られたり、携帯電話やチャットなどの会話が盗聴される危険についても留意する必要があります。

3.勤務管理

社員の勤務時間が見えづらくなります。各社員が勤務の開始時間・終了時間をチャットやメールで伝える、また社員が使用するパソコンの作業時間を計測できるツールを活用するなど、勤務管理ができる方法を検討する必要があります。

4.人事評価

社外で稼働している人の働きを目で確認できないため、人事評価がしづらくなります。テレワークをしている社員としていない社員がいる場合は、両者で不公平感などが出ないようにする注意が必要です。

5.通信機器などの費用負担

リモートで働く際、社外で稼働する人のインターネット利用料や電話代など、通信料の費用負担の分担を考慮する必要があります。

6.導入コスト

テレワーク用端末や社内データアクセスの仕組みづくり、ビデオ会議システム、チャットツール、勤務・人事評価等の管理ツール等、ICT導入にコストがかかります。導入に際する費用対効果を検討する必要があります。

テレワーク導入のプロセス

テレワークを導入する際のプロセスを説明します。

1.テレワーク導入の目的を明確にし、社内に共有する

テレワークを仕組みとして導入するだけでは意味がありません。実際に社員のなかで制度が使われてこそ効果を発揮します。社員が納得して利用できるよう、テレワーク導入の目的を明確にし、社内に共有・同意を得たうえで進めることが大事になります。

テレワークの目的は会社によってさまざまですが、テレワークのメリットとしては、従業員にとっての「ワークライフバランスの向上」「生産性の向上」や、企業にとっての「業務改善」「自然災害時のBCP対策」などが考えられます。

参考:厚生労働省「労使管理QA集」より「テレワーク導入の目的」

テレワークの導入目的

2.就業ルールを作る

テレワーク用にまったく新しい就業規則を作るのではなく、従来の就業規則に、テレワーク勤務規程を付随して作成する企業が多く見られます。

下記のような内容について就業ルールを追加で作成します。
・テレワークの適用範囲について
・始業・終業の共有方法
・労災保険の適用
・給与
・通信費用等の負担
・緊急時の連絡体制
・人事評価

人事評価制度については、現状の制度でテレワーカーに不利益が生じないかを見直したうえで、テレワーカーとそうでない社員が公平に作業内容や業績についてアピールできるようなプロセスを設ける等の対応が考えられます。

参考:
厚生労働省「テレワークモデル就業規則」
https://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/16.pdf

一般社団法人日本テレワーク協会「テレワークに関わる勤務規則例」
https://japan-telework.or.jp/tw_about-2/tw_rule/

3.セキュリティ対策をする

データやパソコンを社外に持ち出すことになるため、社内データの外部漏洩やコンピュータウィルスなどのリスクに対応したセキュリティ対策が必要です。

パソコン、タブレット、スマートフォン等の端末利用については、社用の端末を貸与するか、社員が持っている私物のパソコンを利用するかの2通りのケースがあります。会社として、社員の私用端末の利用を認めれば端末のコストを抑えられ、災害時等も仕事を継続できるようになります。一方で、使用するOSやソフトウェア、セキュリティソフトの導入やアップデートなどが社員それぞれに任されるため、管理が難しくなります。

セキュリティ対策が必要な例としては、下記のような内容があります。

・トラブル時の連絡体制の整備
端末の紛失、不正アクセス、情報の盗聴などにより情報漏洩の危険が発生した場合、どのようなルートで連絡するか、連絡体制を整えます。

・コンピュータウィルスへの対策
ウィルス対策ソフトの導入、アプリケーションのインストール許可、OSの最新化など、テレワーク端末とテレワークを行う社員に対し対策を適用します。

・情報セキュリティポリシーの策定
上記の内容を踏まえ、すでにある情報セキュリティポリシーに、テレワークにおけるポリシーの更新を行い、社内に周知します。

参考:総務省「テレワークセキュリティガイドライン」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000199491.pdf

4.ICT環境を整える

環境を整えるうえで、端末と社内データへのアクセス方法を用意する必要があります。

社内データへのアクセス方法としては、次の4つがあります。

1)リモートデスクトップ
オフィス内にあるパソコン端末のデスクトップに表示した画面を、自宅等のパソコンのデスクトップで表示して操作をする方法です。オフィスの中のパソコン端末を操作するので、オフィスにいるときと同じ環境で仕事ができます。
ただし、オフィスのパソコンの表示サイズに依存するため、手元のパソコンと規格が異なる場合見づらい、操作しづらいという場合があります。また、オフィスのパソコンを起ち上げておかないと機能しないという不便さもあります。

2)仮想デスクトップ
デスクトップの情報がサーバに集約されており、手元のパソコンからサーバ上にあるデスクトップに遠隔でログインして利用する方法です。リモートデスクトップと異なり手元でパソコンを操作しているのと変わらない使用感で使えますが、常にインターネットにつながっていないと使えないため、通信速度によっては動きが遅くなる場合があります。また、専用のサーバやネットワーク環境などを用意するのに初期コストが必要です。

3)クラウド利用
インターネット上のクラウドに情報を集約し、クラウドにアクセスして利用する方法です。この場合は手元のパソコンにデータをダウンロードして利用することもできるため、情報の管理徹底がより難しくなります。クラウドサービスの月額費用がコストとして必要な場合が多いです。

4)会社パソコンの持ち出し
会社の端末を外に持ち出し、社内ネットワークに外部からアクセスして利用する方法です。導入コストはかかりませんが、社用パソコンの私的利用の制限や、紛失防止の徹底、紛失した際のハードウェアロックなど、社員の情報セキュリティに対する意識づけと高度セキュリティ対策が必要です。

また、コミュニケーションツールとして、チャットツール、テレビ会議システム等の導入すると、よりスムーズに業務を行うことができます。

参考:総務省 テレワーク情報サイト「ICT環境の整備」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/furusato-telework/ict/index.html

5.実施・改善

テレワークを開始する際、いきなり全面採用する会社は少なく、パイロット的に一部部署で運用を開始することが多いでしょう。
実際に運用が始まれば、テレワークを適用した社員やその上司から意見を出し合いながら改善を進め、当初のテレワークの目的に近づいているか確認しながら、就業ルール・セキュリティ対策等の見直しを繰り返します。

テレワークと“会社の一体感”を両立させるには

技術面・制度面の導入はできても、実際に運用する際、チームワークや一体感を損なうことにならないか、不安に思う人事の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

リモート環境で働くことで、
・個人、チームが達成を感じられにくいのではないか
・チームが目標を持ち、一致団結して取り組む感覚を失うのではないか
というコミュニケーションの不足を不安に思う方は、実際に多いようです。

コミュニケーションや情報共有の不足を補うためには、システム・制度の導入にとどまらず、情報共有に工夫が必要です。
社内チャットツール等で下記のようなコミュニケーションの工夫の事例があります。

・社内情報共有ツールを用いて、個人やチームの目標について発信する
・個人の発信に対し、お互いに感謝や賞賛を伝える

制度を導入することばかりを先行させるのではなく、テレワークを導入したうえで、どのようにすればよりよいコミュニケーション・働き方ができるのか、ひいてはよりよい組織を目指せるのかを、一人一人が考えることが重要なのです。

テレワークの導入が目的ではない

テレワークの導入について、メリットと導入のポイントをお伝えしました。

規模が大きな企業ほど、テレワークの導入には何重もの壁があり、導入そのものが目的化してしまう傾向があります。最初に検討したテレワーク導入の目的を振り返り、何のために導入するのかをよく検討すること、また社内で周知・意識づけをすることが大切です。

社員の働き方改善や、災害や非常時にも継続的に勤務ができるような仕組みづくりのため、ぜひテレワーク導入を検討してみてはいかがでしょうか。そして、導入にとどまらず、それをきっかけによりよいチーム・企業を目指せるよう、一人ひとりが継続的に考える仕組みづくりを行ってはいかがでしょうか。

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