【最新意識調査から読み解く新時代の若手育成】①働く理由を明確に「持たない」若手が9割~「仕事観」早期育成の重要性~

2021.07.8

「他社を含めた今年の新人傾向を教えてほしい」
「若手と育成側の世代間ギャップに悩んでいる」
「キャリア研修をしても、若手に響いている感覚がない。何を考えているのかわからない……」

人事の皆様と多くお会いする中で、特に若手育成を担当される皆様から、毎年必ず伺うお話です。

そういったお悩みに対し、例年リ・カレントでは、新人・若手研修を通して見えた受講生の方々のお姿や、講師・研修設計者から見た若手の課題などをお伝えすることでお役に立ってきました。

しかし、
「あくまでも“人事・育成側”から見えている像をお伝えしているだけでよいのだろうか」
「若手社員自身の価値観や、本当の悩みを引き出しきれているのだろうか」
という悩みが、リ・カレント内部でも声としてあがってきました。

そこで、リ・カレントでは、若手人材育成事業部トレジャリアが主導し、2020年より「働くに関する意識調査」と題した独自調査プロジェクトをスタートさせました。
この調査では、「若手を“育てる”育成から、若手と共に“育つ”育成へ」を掲げるトレジャリアにおいて、企業人事の皆様と共にこれからの若手育成を考えていくにあたり、まず20代の若手自身の率直な考えや声を聴くことが重要と考え、調査設計を行っています。

今年で2年目となる春の調査結果には、若手社員の、職場・文化に対する忌憚のない意見や、仕事・働き方に対する率直な価値観が表れてきています。

若手が今何を思い、「働く」をどうとらえているのか。
そして、これからの時代の若手育成に何が求められていくのか。
本コラムシリーズでは、2021年4月に実施された最新の調査結果を、実際の研修現場などで見えてきた働く若手の受講生像とあわせて紐解き、次世代の人材育成に関わる皆様と共に「若手育成」をとらえ直し、考えてまいりたいと思います。

働く理由を明確に「持たない」が9割、「持つ」若手も「報酬」と回答

今回の調査では、「その人自身が何のために働くか・働く上で重要視している価値観」を「仕事観」と表現し、様々な角度から調査しました。
「あなたは自分の仕事観=「自分はなんのために働くのか(仕事において譲れないもの・価値観)」を持っていますか」(参照:「若手意識調査」設問4)と問うたところ、以下グラフのような結果が表れました。

何のために働くのか、「誰かに語れる明確な形で持っている」と回答した割合は、全体のわずか13.3%に留まりました。「持っていない」「考えたことはあるが固まっていない」「語れるほどではない」がほぼ9割を占める形となっています。

重ねて、仕事観を持っているとした回答者に対し、「あなたの仕事観(働く目的・譲れないもの・価値観)とは何ですか」その具体的な内容を問うたところ、以下のような結果となりました。

「何のために働くか」をある程度言語化できている回答者にとっても、その多くが、働く理由を「報酬を得るため」としていることが見て取れます。

そもそも、本設問を調査に組み込んだ背景として、多くの若手意識調査において「あなたの働く理由は“何”ですか」といった問いが置かれていることにありました。
確かに、人事・育成者目線で考えると、若手社員のそれぞれの「働く理由」は何だろう?という問いがたちやすくなります。
しかし、そもそも若手にとって、「私の働く理由は●●です」というように、自分がなぜ働くのかを明確に言語化できているものなのでしょうか。
そのような疑問から置かれた本設問の結果からは、やはり20代の若手たちのほとんどが、働く理由を明確に言語化できていないことが明らかになりました。そして、言語化できている若手の多くも「報酬」と定義していることがわかります。

言うまでもなく、適切な報酬をモチベーションにして業務にあたることも健全なひとつの「仕事観」といえます。しかし、弊社の若手人材支援の現場で、実際に若手社員の皆様と接する中で聞こえてくる声として、
「給料をもらうために働くだけ」
「働くことに自分にとっての理由は必要ない。お金がもらえればそれでいい」
といった、あきらめ・思考停止の仕事観の一種の表出が見られます。
社会人経験が数年とまだ少ない中での仕事観の「報酬」という断定が多くみられることについて、育成側は注意を払う必要があるでしょう。

調査内においても、「仕事観を「持っていない」「固まっていない」と回答した理由」を問うた設問では、このような結果が出ています。

この設問結果からは、仕事観=何のために働くか、という問いを、そもそも立てる機会のなかった若手の姿が浮かび上がってきます。

「働く理由は“いつか”見つかる」?~育成現場で出会う若手の本音と不安

働く理由をまだ持たないこと、持つための機会が少ないことを、若手自身はどうとらえているのでしょう。
近年の若手受講生からは、このような声がよく聞かれます。
「仕事はある程度できるようになってきたけど、このままでいいのか不安」
「なんとなく仕事をこなしているだけで、将来後悔するんじゃないか、自分の選択が間違っているんじゃないかと思ってしまう」
「キャリアビジョンは、働いている中でだんだん見えてくると思っていたが、見えてくる実感もなく、前に進んでいる感覚がない」
共通するのは、まだ自分の中で形になっていない働く理由やビジョン・価値観が、「いつか」「そのうち」形になって現れるだろう、という漠然とした期待です。

実際に、仕事観やキャリアビジョンの大部分が、働く中で形作られていくことも確かです。
ただし、それは新人・若手のうちから能動的に働くことを考えつづけ、行動し、言語化しつづけることで見えてくるもの。漠然とした「いつか」を待っていても、誰かから「何かのきっかけ」が与えられることは多くありません。

現実問題として、3年目~5年目など、ある程度の経験を積んだ若手が集められるキャリア研修では、
「新人の時は、この年次にはもうキャリアビジョンが見えてくるものだと思っていたのに…」
「何のために仕事をしているのか見失ってしまった」
「目の前の業務に追われ、前に進んでいる感覚がない」
といった声が非常に多く聞こえてくるようになります。

「いつか」見つかるはずだった価値観・ビジョンが確立されないまま、“一人前”とされ、若手と呼ばれる年次から卒業するタイミングを「迎えてしまう」ことへの恐怖が、若手の漠然とした大きな不安の裏側にあるといえるでしょう。

そして、先ほどもお伝えしたように、働く意味や価値観とは、
「自分にとっての働く意味とは何だろう?」
「どのように働きつづけたいのだろう」
といった問いを立てて経験を積み、時には他者と対話しながら、時間をかけて見出し、言語化していくものです。
一人前とされる年次になってから、初めて価値観の育成に着手することは、本人にとっても育成側にとっても、大変な困難を伴います。

「何のために働くか=仕事観」の早期育成が必要

その人自身が何のために働くか=「仕事観」を、新人・若手の早い段階から育てることは、彼ら自身のキャリア形成にとっての重要性はもちろん、組織の人材育成という視点からも、非常に重要な土台づくりになります。
仕事観を育成できないまま、「なんとなく」業務経験を積み年次を重ねていった若手人材は、次世代のリーダーとしての視野・視点、能力を求められた際、高い壁に悩まされがちです。

その壁とは、
「自分が今後、リーダーとして何を成し遂げたいか」
「どのようなビジョンを実現したいか」
がまったく出てこないという現象です。

自身が働き続けていく原動力ともいえる価値観や、仕事における強いこだわりを見出し言語化できていないことは、リーダー・管理職に求められるスキルを身に着けているかどうかよりも根深く、個人の可能性を狭めてしまいます。
彼らはリーダーとして活躍しにくいばかりか、
「自分自身はどうしたいか」「何のために仕事に取り組むか」という決断軸を持たないために、
業務の抽象度・難易度が上がれば上がるほど「決められない」ぶらさがり人材となってしまう可能性があるのです。

今後ますます、決まった業務を決まった手順でミスなく進めていくオペレーター育成を超えた人材育成が求められていくことは疑いがありません。
必要となるスキルも、ベースとなるマインドそのものの在り方も柔軟な変化を求められる時代の中で、「“自分は”何のために働くか」=“その人自身”の仕事観を早期育成することが、学び続ける人材を支える土台となり、組織の次世代リーダーを育む上でも重要となるのです。

今後も、意識調査から見えてきた若手の本音と、新しい時代の若手育成について、無料セミナーや本コラムを通じ皆様にお伝えしてまいります。

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