【最新意識調査から読み解く新時代の若手育成②】コロナ禍必須の若手フォロー~経験減り鈍化する成長・仕事観獲得を「問い・整え・学び続ける」自己“育成”力でブースト
目次
若手が今何を思い、「働く」をどうとらえているのか。そして、これからの時代の若手育成に何が求められていくのか。
リ・カレントで昨年から実施されている独自調査をもとに紐解く本コラム第二回目では、例年多くご相談の寄せられる「新人・若手フォロー施策」を取り扱います。
「リモートで直接の接点が減ったことで、新人・若手の状況がいっそう見えづらくなった」
「特にコロナ禍において、若手がどのようなフォローアップを必要としているのか知りたい」
弊社へのお問合せでも、こういったお声を非常によく伺います。
今回のコラムでは、調査結果に表れた「若手の本音」を取り上げながら、今彼らに必要なフォロー施策についてお伝えしてまいります。
「身近な人とのコミュニケーション」で仕事観獲得が多数、一方「機会の不足」も…
前回の若手意識調査解説コラムでは、「働く理由を明確に「持たない」若手が9割~「仕事観」早期育成の重要性~」と題し、
意識調査の結果からわかる「仕事観=何のために働くか」という価値観を持つ若手が非常に少ないこと、
一方で、若手が次世代を担うリーダーとして活躍していくために仕事観が欠かせないことをお伝えしました。
それでは、仕事観とは具体的にどのような経験をすることによって獲得され、育っていくのでしょうか。
2021年実施の意識調査においては、こういった観点から、仕事観をさらに深く掘り下げる設問が加えられました。
仕事観を「持っている」と回答した若手社員に対し、それを得るきっかけになったできごと・経験を問うたところ、以下のような結果となりました。
全体の47.1%と圧倒的多数が「身近な人とのコミュニケーション」によって仕事観を得たと回答していることがわかります。
調査設計を担当したリ・カレントのチームにとっても、この明確な回答の偏りは意外な結果でした。採用面接やインターンなどで、志望理由や就職活動の「軸」を聞くとき、多くあげられるエピソードはボランティア・部活動・サークルなどにまつわる出来事だからです。
しかし、この調査結果からは、仕事観を持っている若手のうち半数近くが、「身近な人とのコミュニケーション」をきっかけにしていることが明らかになりました。
ここで、もう一つの調査結果を見てみましょう。こちらは、仕事観を「持っていない」と回答した若手社員に対して、推測されるその理由を問うたものです。
結果を見ると、半数を占める「仕事観とは何かそもそもよくわからない」に次いで、
「自身にとっての仕事観を考える機会がない/なかった」があげられています。
先に見たように、彼らにとっての仕事観を考える“機会”に該当する体験の多くは、身近な人とのコミュニケーションです。
「機会がなかった」とする若手社員の多くが、そういったコミュニケーションの体験を得られていないことが推察されます。
また「周囲に仕事観を持って仕事をしているお手本となる人がいない/いなかった」も、全体の5分の1ほどの回答者に選択されています。この選択肢は、“身近なロールモデルの欠如”を示しています。
これらを合わせて考えると、若手の成長・戦力化に欠かせない仕事観の醸成を、身近な人(ロールモデルとなる人)とのコミュニケーション体験の減少/欠如が阻んでいるといえるでしょう。
“ふとした”コミュニケーションが絶滅の危機!水面下で鈍化する若手の成長
しかし、若手社員が必要としている「身近な人とのコミュニケーション」は、コロナ禍によってますます減少しています。
リ・カレントでご支援するオンライン研修の現場では、参加した若手社員からの
「同じチームの人とも“一緒に”仕事をしている感覚がない」
「仕事に必要なことはチャットや通話でやりとりしているが、それ以外では全く話さない」
「オフィスでは隣の人にすぐ相談していたが、リモートだとなかなか……」
といった声がよく聞こえてきます。
とはいえ、“仕事に支障をきたすほどの”コミュニケーション不足は、上長・同僚や、人事の皆様にも伝わっていくものです。長引くコロナ禍で、勤務体制もリモート・出社が入り混じるのが当たり前になっています。若手社員も、それぞれのやり方で、仕事に必要なコミュニケーションを確保していることでしょう。
しかし、「仕事に必ずしも必要でないコミュニケーション」についてはどうでしょうか?
廊下ですれ違った時の雑談や、連れ立って昼食を取りながらの相談、休憩室などでの気が緩んだ状態での会話。こうした、これまではオフィスで偶発的に発生していた「業務外」のコミュニケーションは、コロナ禍によってまさに激減してしまいました。
そして、本来若手社員たちは、そういったコミュニケーションの中で、上司・先輩・同僚の持つ仕事観・価値観の片鱗に触れ、影響を受けながら自分の仕事観を育てていくはずでした。
現状のまま手を打たず、若手社員が「育つ」きっかけを失ったまま「過ごす」日々を続けば、前回の解説コラムで触れたように、本来得ることができるはずだった仕事観を持たないままに年次だけを重ねてしまうことになりかねません。
また、コロナ禍による仕事環境の変化によってもたらされるのは、仕事観の醸成に関する課題だけではありません。
コロナ禍では日常のコミュニケーション同様、本来新人・若手社員が得られるはずだった業務経験の量も減り、業務スキルの面でも成長が鈍化しやすくなっています。
新人・若手社員からすると
「先輩たちは経験していた業務、自分たちはやったこともないけど、このままでいいのかな…」
「成長できた感覚はないけど来年にはまた後輩がくると思うと…」
といった不安・不満を抱えていることが多いのですが、上司・先輩にアラートも出しにくく、受け身のままに過ごしてしまうことが多いのです。
人事と現場でOJTを担う上司・OJT担当者たちも、これまでと同様の形では連携がとりにくく情報交換も減少しがちなことから、どうしてもお互いのやり方への不信・フラストレーションがたまりやすくなります。そのため、一層連携が弱体化してしまう事例が多くあります。
当事者である新人・若手社員も例年以上に受け身になりやすく、
また人事や上司・OJT担当者も成長機会を与えにくい状況であることで、
若手の成長を大きく妨げかねない状況が「見えづらく」進行しているといえるでしょう。
新人フォローのすすめ:鈍化する成長を「問い・整え・学び続ける」自己“育成”力でブースト
リ・カレントの若手人材育成事業部トレジャリアでは、課題を抱える新人・若手社員のフォローを考えるにあたり、次のような全体像をご紹介しています。
「身近なコミュニケーション」や業務経験の減少に成長を阻害され、仕事観を育てにくい環境に身を置いている若手社員が健全な成長を目指すためには、減ってしまった機会を自ら取りに行く「脱・受け身」のスタンスを身に着けることが重要です。
また、どうしても少なくなりがちな経験の中でも成長を掴むため、それらの経験を通し自ら「問い」「学ぶ」力を身に着けることで、経験学習の質を向上させていく必要があります。
育成施策全体の土台として、新人・若手それぞれにとっての「こだわりを見つける」という観点のセットをおすすめしています。
これは、コロナ禍を経験した若手社員に立ちはだかる壁である「仕事観の欠如」を防ぐため、日頃から自身の仕事における価値観・大切にしたいことを自問する「くせ」作りとなります。
仕事観=何のために働くか、という抽象度の高い概念まで一足飛びに獲得することは難しいため、まずは日常の業務の中で表れるふとした自分の「こだわり」を認知させることから始めるとよいでしょう。
例えば、
「私は●●の業務よりも、□□の業務のときのほうがわくわくしているかも」
「メールの返信に、相手の方のことを考えて“ひとこと”書き添えたいな」
といったささやかな「こだわり」の自己認知を積み重ねていくことで、仕事観の芽を育てていきます。
①問いを立てる力
新人・若手フォローで育てる3つの力のうち1つ目は「問いを立てる力」です。
様々な角度から仕事に「問い」を立て、考える力を養います。
・仕事に自ら意味づけを行えるようになり、仕事への当事者意識が高まる
・相手目線・顧客目線で考えられるようになる
・“何となく”仕事をするのではなく、常に考えながら取り組めるようになり、マンネリ化に陥りにくくなる
「問いを立てる力」を身に着けることで、若手社員にはこのようなメリットがあります。また、こうした問い立ての力は、新人・若手の年次を脱しても非常に役に立つものですが、年次が高じてからの育成は難しくなります。そういった観点からも、早期育成をおすすめしています。
②学び続ける力
2つ目は「学び続ける力」です。
多くの人がコロナ禍を通して痛感しているように、私たちの暮らす社会は常に激変の可能性にさらされています。VUCAという言葉も広く知られるようになりました。
これから世界がどのように変化していくのか、そこに生きる我々に何が求められ、どのような対処をしていくべきなのか、「答え」を知り与えてくれる人は誰もいないのです。
新人・若手社員は、そういった私たちの現状を「前提」として認知し、その上で、変化する世界に適応できるよう、「学び続ける力」を身に着けることが重要になります。
リ・カレントの研修においては、失敗を前提とし試行錯誤から学び取るポイントや、上司・先輩など周囲のビジネスパーソンから意図的に「学び取る」ための秘訣をお伝えしています。
③自らを整える力
「問いを立てる力」「学び続ける力」は、いずれも成長するために非常に重要な“観点”=考え方となりますが、それらは行動として具体化され、習慣づいて初めて「行動変容」となり得ることはご存知の通りです。
そこで、私たちは、3つ目の力として「自らを整える力」を提示しています。
自分自身の思考・行動を認知しコントロールすることで、観点を行動・習慣まで落とし込みます。自分の現在地を知り、目標を定めたり習慣化することで行動が変わるのを体感していくことで、一生使えるセルフマネジメント力の土台を作っていきます。
リ・カレントでは、習慣化のための実行プランの立て方や、「自分で決める」ことがパフォーマンスに及ぼす素晴らしい影響をお伝えすることで、「やらされ」ではなく「やってみたい」セルフマネジメント力育成をご一緒しています。
おわりに:若手フォローの「とりあえず後回し」はリーダー育成に影響大
「新人・若手フォロー」についてご相談が非常に多い一方で、研修の実施そのものは意外にも少ないテーマです。コロナ禍の影響も受け、ただでさえやるべき施策が山積みの中、
「まあ、一旦、新人研修・●年目研修という形では集めているし…」
「離職が目立つわけではないし、人事に特に相談してくる様子もないから…」
といった判断が先立ち、別施策へのリソースが優先されるのは、やむを得ないケースもあります。
しかし、今回のコラムで見てきたように、
今、しっかりとしたフォローを行わないことが、業務スキルの成長鈍化や中・長期的にみたリーダー育成などの観点から、潜在的に大きな課題を生み出してしまうことにもつながりかねません。
また現在は、若手の多くが「コロナが落ち着くまでは転職活動がしにくい」と考えていることから、目立って離職率が上がりにくい点も押さえておく必要があるでしょう。
新人・若手社員たちは、これまでに例のない制限多き状況下で、本来学びの多いはずの時期を過ごしています。彼らに、この逆風を大きな糧として次世代を担っていってもらうため、フォロー施策を見直していくことが大変重要です。
今後も、意識調査から見えてきた若手の本音と、新しい時代の若手育成について、無料セミナーや本コラムを通じ皆様にお伝えしてまいります。
また、新人・若手フォローをはじめ若手育成についてのお悩み・情報収集について、いつでもご相談ください。本コラムの中でもご紹介している新人フォロー施策について、弊社セミナーにも登壇している専門コンサルタントがお話を伺い、個社ごとのご状況に合わせた育成施策をご紹介いたします。