HRカンファレンス2018秋「理念浸透による組織開発 ~『仕組み先行型』から『共感ベース型』へ~」Part.1

2018.12.7

2018年11月13日(火)~16日(金)に行われた「HRカンファレンス2018秋―東京―」(主催:株式会社アイ・キュー)にリ・カレント株式会社が出展しました。

リ・カレントからは、

「理念浸透による組織開発──『仕組み先行型』から『共感ベース型』」

というタイトルで、理念浸透による共感をつくり出す、マクロ=トップダウン型組織開発の成功要因と、トップのメッセージを縦横無尽に組織に届ける新手法「マイクロ組織開発」をご紹介しました。

今回のセミナーレポートでは、「理念浸透による組織開発」の重要性を紹介した鬼本講師による前半パートをお送りいたします。

講演者

戦略人財コンサルタント 代表
鬼本 昌樹 氏

講演概要

本講演は「理念浸透による組織開発──『仕組み先行型』から『共感ベース型』」と題した2部構成で行われました。前半で戦略人財コンサルタント代表の鬼本講師より、日本企業の組織構造における弱点と「これからの組織」をつくるためのポイントをお話しいただき、後半はリ・カレント株式会社 堀井より、お客様事例をもとに、社員一人ひとりの企業理念への共感を引き出す理念浸透・共感ベース型の組織開発についてご紹介しました。ここでは鬼本講師による「理念浸透による組織開発」の重要性についてご紹介いたします。

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組織開発とは『企業が持続的に成長をするための組織をつくること』

「突然ですが、みなさんバッティングセンターに行ったことはありますか?」

講演の冒頭、鬼本講師はいきなりこんな問いを投げかけました。鬼本講師は京都大学理学部宇宙物理学科出身。かの湯川秀樹博士の薫陶を受けた元サイエンティストらしく、意表を突く喩え話で、「経営理念」という観念的なテーマに受講者の興味を誘います。

その意味するところは、バッティングセンターで来る球、来る球を無心で打ち返すように、仕事でも毎日いろいろなところから飛んで来るいろいろな“球”をひたすら打ち返して職務を果たすのが、ビジネスの現場の日常です。しかし「朝から晩までずっと打ってばかりいると、ふと『自分は何をしているのか』と虚しさを覚えることがあるのでは」と、鬼本講師は問いかけました。

「うまく、強く打ち返すたびにある種の達成感は得られるものの、しだいに球を打ち返すこと自体が目的化しがちです。目先の変化や忙しさに追われ、そもそも『自分はなぜこの球打っているのか』という根本的な部分を見失うと、やらされ感が強まり、疲弊しやすくなってしまいます」

日々の仕事や業務という“球”をなぜ打つのか──その問いに対する答えこそ、企業が組織の隅々にまで浸透させるべき「経営理念」にほかなりません。実際、鬼本講師が示した経団連のアンケート調査(2018年7月実施)の結果でも、経営者の多くが「企業が持続可能な成長を実現するためには『経営理念』が重要」と考えています。このことが、本題である「組織開発」にどう関係するのか。鬼本講師は以下のように続けます。

「組織開発というと、組織の活性化やチームビルディングなどとよく同一視されますが、間違いではないものの、正解でもありません。私は組織開発を『企業が持続的に成長をするための組織をつくること』と定義しています。企業の持続的成長に必要なものは経営理念ですから、組織開発においては経営理念を経営戦略や経営目標・計画へ落とし込み、組み込んでいく仕掛けが必要になるのです」

 

3つの事例に見る組織作りにおける理念浸透の成功要因とは

変化に打ち勝つ企業には、社員がやらされ感にとらわれず、社員の一人ひとりが「理念」を軸として自律的に行動できる「組織力」が備わっています。
しかし、どうすれば理念を組織に浸透させることができるのか。ここで鬼本講師は「共感」をキーワードに掲げました。持続的成長を実現する組織作りの成否は、経営理念への共感を醸成できるかどうかにかかっているといっていい。その組織開発の原則を、鬼本講師は3つの企業事例で示しました。

最初の事例は失敗例でした。100年以上の歴史を誇る日本のある専門商社のケースです。もともと経営理念自体はきちんと設けられており、ホームページで社内外に告知するほか、社長も毎年の新年会で理念に絡めたメッセージを発信するなど、一見、理念浸透に熱心な会社でした。しかし、理念浸透の実態が伴っていなかったと指摘します。

「どれだけ理念が組織に浸透しているかを調べようと、第三者機関のアセスメント(抜き打ち電話による調査)を導入することになったのですが、このとき、同社の人事部の方が何をしたのか。いつ、誰に電話がかかってきてもいいように、1200人の従業員全員に名刺大の“アンチョコ”を配ったのです。こういうふうに答えてくださいね、と。当然、アセスの結果は100点満点。第三者機関の業者から『御社の理念浸透は完璧です』と言われ、社長は大喜びでした」

しかし、現実には理念は浸透していませんでした。それが組織の官僚化を招き、社内コミュニケーションを悪化させたことは、以降の同社の凋落ぶりからも明らかでしょう。業績低迷に歯止めがかからず、鬼本講師がコンサルタントとして招かれたときには、創業家の資産を切り崩して社員の給与に充てなければならないほどの窮状にあったそうです。経営理念について現場でヒアリングしてみると、案の定「経営理念は、私の仕事には何の影響もありません」「経営理念の必要性も、意味もわかりません」「言葉は立派だと思いますが、抽象的すぎて理解できません」といった声が返ってきました。

2つ目の事例は、日本航空の再建における組織開発です。2010年1月19日に経営破綻した後、無報酬で代表取締役会長に就任した稲盛和夫氏がリーダーシップをとり、わずか2年8ヵ月で再上場を果たしたJAL復活劇は、まだ記憶に新しいところでしょう。

稲森会長のリーダーシップの何がすごいのか。鬼本講師は「マネジメントではなく、リーダーの育成を最優先し、そのためにJALフィロソフィの策定など、経営理念を全社員で共有・共感するしくみをつくりあげ、理念を軸に意識改革と組織改革を並行して推進したこと」と指摘します。「経営破たんの原因は財務的な問題だと思っていたが、それは違っていた」(経営幹部)「企業理念が“拠りどころ”として腑に落ちた」(課長)など、理念浸透による組織開発の成果を裏付けるコメントも紹介されました。

3つ目に鬼本講師が挙げたのは、講師自身がかつて在籍していたGEの金融部門、GEキャピタル(2016年4月に売却)の事例です。同社では「技術と革新によって生活の質を向上させる」という経営理念に基づくマネジメント。いわゆる「理念経営」が実践されていました。

「リーダーシップ研修では、『正解より共感を求める』『Whatより、Why(問題意識)を大切にする』といった価値観。いわゆる『GEウェイ』が徹底的に教育されます。さらに人事評価において、その価値観を日々の業務やマネジメントの中でどれだけ実践したかが問われ、認められればアワードの授与や事例集への登録につながる。パフォーマンスより価値観を重視し、採用・育成面でも理念を共有・共感できる価値観の持ち主を確保し、リーダーとして輩出する仕組みが整っていました。組織開発のあらゆる側面に、経営理念への『共感』が組み込まれているのです」

 

組織開発の原則とこれからの人事部の役割

この3つの事例から得られる学びとして、鬼本講師は「組織開発の原則」と「人事部の役割」の2点を挙げました。

「組織開発の原則」とは、まず何よりも「経営理念」を起点とすること。そして、その理念を経営目標・戦略・計画に紐づけた上で、それを「誰がどのようにして実行するか」、すなわち具体的な人事戦略(採用、登用、育成、配置)やマネジメント手法へと落とし込み、社員一人ひとりの達成感・成長感にまで結びつけていかなければなりません。経営理念を判断基準や行動の軸に据えることで、こうした一連のプロセスに一貫性、整合性が付与され、企業文化が育まれていくのです。

 

 

ただし、ひとつ目に出てきた専門商社の事例にあるように、「額に飾られたお題目」のままの理念では、肝心の共感を得られません。「『火の用心』といくら口うるさく唱えていても、その言葉だけでは、いざ火事になったとき、現場はどう動いていいかわからないでしょう」。問題は「経営者の視点でつくられた経営理念が、従業員視点の経営理念へと適切に“翻訳”されていない」ことにあると鬼本講師は指摘します。

理念への共感を生み出すために、抽象的な表現から具体的で分かりやすい表現に換え、理念自体の必要性と重要性を説明し、それを社内の共通言語として浸透させる──JAL再建の道を開いた稲盛氏も、こうした膨大な翻訳作業に力を尽くしたといいます。

 

では、「人事部の役割」はどうあるべきか。鬼本講師は「日本企業の人事はこれまで、組織開発を現場の責任とみなし、現場まかせにしてきたのではないか」と問題を提起しましたた上で以下のように述べました。

「これからは、そうはいきません。組織開発は人事の役割に組み込まれ、人事部は経営の戦略的パートナーとしての貢献を求められます。経営戦略を人事戦略として現場に落とし込んでいくためには、人事も変革を起こすリーダーにならなければならないのです」

本講演のまとめとして、鬼本講師は次の5つのポイントをあらためて整理しました。

 ・組織開発は、経営理念を組み込んだしくみが重要
 ・マネジメントより、理念と共感のリーダーシップを育成することが重要
 ・組織開発は、人事部の役割
 ・人事部は経営の戦略的パートナーとして期待されている
 ・理念が実践されているか、360度アセスメントなどによる確認が必要

先行き不透明で複雑なVUCA時代。客観的な“正解”を求める企業経営に、持続的な成長は望めません。企業自らの拠りどころである経営理念を軸に据えたマネジメントが、ますます重要視される時代に入ってきたと言えるのではないでしょうか。

 

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