3年目社員の抱え込み・堂々巡りのもやもや思考を「チームで成果を生み出す」推進力に変える「3つの仕事力」~「遂行」×「協働」×「自律」で、真の一人前へ!~
人材育成担当に携わるみなさまは、入社3年目の若手社員にどんなことを求めますか? ただ目の前の業務をこなすだけでなく、チームを巻き込みながら主体性をもって仕事に取り組んでほしいと思う反面、入社3年目の若手社員自身は「成長が実感できない」「キャリアパスが見えない」というモヤモヤ感から、現職で仕事を続けるべきか悩む時期でもあります。彼ら入社3年目の若手社員の離職を防ぎ、中核人材としてステップアップしてもらうためには、どのようなアプローチが必要なのでしょうか。
今回のセミナーでは、若手人材が抱えるモヤモヤを受け入れたうえで、彼らが自らのポテンシャルに目を向け、チームに貢献し、自立した人材となるためのポイントや、若手社員に伝えるべきメッセージについて、リ・カレントの人材組織開発プロデュース事業部長森からお伝え致しました。
■講師
森 強士
リ・カレント株式会社 人材組織開発プロデュース事業部長 新人から中堅時代を創業100年続く日系企業組織で過ごし、組織の「泥臭さ」を叩き込まれ、その後10年間は外資系コンサルファーム出身者の上司陣に仕事の「成果創出」を磨かれた「現場と論理」のハイブリット講師。構造化されたメッセージと熱意で、行動変容を促します。
3年目社員のモヤモヤに対する3つの仮説
セミナーは3年目社員(3年目に限らず、若手社員を含む)に対して育成担当が感じている課題の共有からスタートしました。「主体性に欠け、自分に自信がない人が多い」「日々の業務に追われて、将来のキャリアを描けていない」という若手社員が抱える問題を指摘する声がある一方で、「若手の育成を現場に任せているため、上司によって部下の成長にばらつきがある」など育成環境の問題についても指摘がありました。
若手社員が、「自信がない、将来を描けない」という問題は、本人の捉え方の問題だけでなく、周囲の環境も影響していると考えられます。経済成長が実感できたバブル世代と、生まれたときにはバブルが崩壊しており景気減退しか感じられない若手世代とでは、仕事に対する考え方が異なることは想像に難くありません。
このように周りを取り巻く環境に仕事観が影響されるからこそ、若手に対して「君にはポテンシャルがある。ポテンシャルを伸ばすのはあなた自身だ」とメッセージを伝えるべきだと森講師は指摘します。育成担当者や上司からのメッセージの発信の仕方によって、若手社員の仕事へ向かう姿勢が大きく変化する可能性があるからです。
3年目社員がモヤモヤを抱える理由として、森講師が挙げた仮説は以下の3つです。
1.日々の業務に追われるなか、後輩指導をしなければならない
2.「成長実感」がない
3.隣の芝が青く見えてしまう
自分の仕事もまだマスターしきれていないなかで、そんな自分よりも後輩の指導も行わなければならないことから、自信を持ちにくいこと。加えて、上司からも「成長している」といわれることが少なく、成長を実感しにくい。SNSを開けばキラキラした成功事例が毎日のように語られ、「このままいまの会社にいていいのだろうか」と感じやすい環境にある。
さまざまな情報があふれるなか、「転職するべきだろうか」と感じさせてしまう要因は情報育成側にも責任があると認め、若手に対してメッセージを発信する必要があると森講師は伝えました。
3年目社員を中核人材にキャリアアップさせるための3つのポイント
参加者で課題を共有したあと、講師の森から、3年目社員をステップアップさせるため、次の3つのポイントについて解説がありました。
1.自己成長は自己責任
2.仕事の精度を上げる
3.偶然も取り入れる
1.自己成長は自己責任
「自己成長は自己責任」であることには、3つの理由があります。1つは情報技術が加速度的に発展し、経済も、企業も、一人ひとりのキャリアも予測不可能な「VUCA」の時代になっていること。
パソコンが使えることで重宝された時代に、一人一台スマホを持つ時代が予測できたでしょうか。英語力が重宝された時代に、語学力のニーズがなくなるほど翻訳技術が発展することを予測できたでしょうか。森講師の体験も交えながら、将来がますます予測できない世の中になっているという前提をもと、世の中に必要とされる人材となるため、自分で正しく情報を精査しスキルを身につけ、「プロフェッショナルになる」ことをメッセージとして伝えるべきだと森講師は言います。
第二に報酬体系の変化があります。年功序列制が崩れ、新入社員で1000万円、入社3年目で3000万円を年収として提示する企業も現れるなど、優れた人材にはそれに見合った待遇や教育が必要だという考えが広まっています。
第三に人生の過ごし方の変化。2019年5月には定年70歳を努力義務とする発表が行われ、年金の給付開始年齢が高齢化していることからもわかるように、時代に応じてスキルを身に着け、仕事を依頼され続ける人材となることが求められています。
これらの理由から、森講師は「自己成長は自己責任」であり、プロフェッショナルとして「替えがきかない人材となること」の重要性を伝えました。
ここで参加者から「自己成長は自己責任」に納得したうえで、モヤモヤを抱える若手社員に対して、それをどのように伝えるべきかという質問があがりました。森講師は若手に対して「どんなことが不満か? 何がやりたいのか?」を尋ねることだと答えます。質問を投げかけることによって、若手社員が持っている仕事の価値観を共有し、自社でできることを一緒に考え、若手のポテンシャルを引き出す育成力を上司が身に着けるべきだというものです。
2.仕事の精度を上げる
3年目社員をステップアップさせるための、2つ目のポイントは「仕事の精度を上げる」ことです。森講師は、「仕事の精度を上げる」ために必要な3つの力を、以下のように分類して呈示しました。
<仕事の精度を上げる3つの力>
1.業務遂行力
2.業務協働力
3.自律力
この3つの力のなかから、今回のセミナーでは「業務遂行力」「自律力」に関して解説とグループワークが行われました。
「業務遂行力」とは、仕事の依頼を正確に聞き出し、顕在化している相手のニーズだけでなく、半顕在化、潜在化している要望も含めて、3段階で深読みし、業務を遂行する能力のこと。相手も気づいていないニーズ(声なき声)を拾って価値を提供することで、相手から大きな信用を得られることと解説がありました。
また、自律力については、以下のポイントに絞って森講師から解説がありました。
1.Focus(絞る)……目的に立ち返り、不要なタスクを見極める
2.Reverse(逆から見る)……相手の立場から見る、ゴールから逆算する
3.Speed(リーンスタートアップ)……新しいアイデアを出し、即実行する
これら3つの力を踏まえ、「仕事の精度を上げる」ことを目的としたワークとして、「営業日報の様式変更を提言し、課長から承認を得る」という演習を実践しました。
ワークでは、「営業進捗を管理したい」という課長の顕在ニーズに対し、「真に管理するべき指標の指摘と、指標を管理できる日報様式を提案してほしい」という潜在ニーズをとらえ、「なぜ変更する必要があるか?」という目的を明確にして提言をまとめることが求められました。
ワークを実践する際は、3年目社員に「営業日報の様式変更を行い、私に運用させてほしい」とコミットメントさせることを付加価値として求めたいと森講師からのアドバイス。当事者精神を養うことで、若手社員が持っているポテンシャルを活かせることを伝えることが重要だと解説がありました。
3.偶然も取り入れる
最後のポイントは、「偶然も取り入れる」こと。スタンフォード大学の教育学・心理学教授であるクランボルツ教授によって提唱された、キャリア形成に関する理論である「プランド・ハプンスタンス理論」に触れ、転勤や異動など予期せぬ出来事をキャリア形成の機会ととらえる考え方を紹介しました。最後に参加者からの質疑応答にて本セミナーは締めくくられました。
今回のセミナーは、3年目社員が自らのポテンシャルに目を向け、仕事力を身に着けてチームに貢献する人材に成長するためのポイントとともに、育成側が若手のポテンシャルを信じ成長を実感させるためのメッセージを発信し続けることの重要性を認識するセミナーとなりました。
リ・カレントは、このような若手社員が抱える「モヤモヤ」を解消して仕事力を身に着け、チームで成果を生み出す企業が増えることを願っています。