森川氏

コロナ不安で若手社員に忍び寄るメンタルダウンをケアしよう!

2020.07.10

コロナウィルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が出されていたことによる、ステイホームや急なテレワークなどの普及の影響による、若手社員のメンタルダウンが心配されています。

メンタルダウンは目に見えづらく、また引き続きテレワークを行っている企業もあることから、人事担当の皆さまの中にもどのように若手社員をケアしていくか悩んでいるという方は多いのではないでしょうか。

メンタルダウンはこれまでのマネジメント手法では防げません。在宅勤務から通常勤務に戻りつつある今がまさに要注意のタイミングです。

ここでは、会社や組織として準備をすべき「メンタルケア戦略~3つの法則」

 1.モチベーションを上げない
 2.無理筋な目標設定をしない
 3.頑張ろうといわない

の3つの法則をもとに、心の健康の保持増進を目的とした国家資格である公認心理師である、カウンセリングのプロセッサー、森川友晴氏に、主に若手社員と若手社員と接する管理職を中心としたメンタルケアについて講演いただきました講演の模様を、セミナーレポートの形でお送りします。

目次


■登壇者プロフィール
森川 友晴(もりかわ ともはる)氏  チェリッシュグロウ株式会社 代表

【略歴および職務内容】 
モスフードサービス株式会社
–店舗において店長職に従事
–人事部において人員計画策定、採用全般、メンタルヘルス対応を行う
–教育部において新入社員研修担当、及びチェーン内教育担当として研修の作成および講師登壇

アルー株式会社
–社内マネジメント業務
–研修プログラム企画・営業支援・教材開発・カスタマイズ・講師登壇・講師育成指導

フォーリーフクローバー株式会社(研修及びコーチング、カウンセリング事業の会社として独立)
–研修プログラムの企画開発・講師登壇
–パーソナルコーチング及びスクールカウンセラー(中学・高校)として個人のあらゆる問題に対応する

 チェリッシュグロウ株式会社に社名を変更、現在に至る

【専門分野および講師実績】
専門分野: コーチング・ブリーフセラピーをベースとしたコミュニケーションスキル、人材育成、レジリエンスなど
講師実績:
–企業に対し、若手中堅~管理職までに幅広い研修を実施(キャリア、目標管理、マネジメント等)
–メンター・OJTトレーナーの制度設計から研修までのフォローを実施
–レジリエンス・メンタルヘルスなどの専門研修を実施
【資格】
公認心理師/ブリーフセラピスト/シニア(ブリーフセラピー協会千葉支部長・本部トレーナー)/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント
【認定コーチ】
MBTI認定ユーザー(Japan-APT正会員)/ワークライフバランスコンサルタント
【共著】
「解決の物語から学ぶブリーフセラピーのエッセンス」

緊急事態宣言解除が出された現在は、心理的危機の前になる状態

森川氏は、今年2月~3月に産業分野でさまざまな事例を聞くなかで、コロナウィルスによるメンタルヘルスへの影響は「ただ事ではない」と感じたと述べます。

つまり、メンタルヘルスへの心理的危機にまさに晒されている状態であるということです。

もちろん、特に新入社員をはじめとする若手社員特有のメンタルケアは必要でしょう。しかし、森川氏は「ケアを義務づけられている管理職のケアも必要だ」と考えています。

また、企業によってはメンタルケアに十分に投資をしていないところもあります。しかし、コロナによる影響は大きいため、これを機にケアシステムを作るなどケア方法を考えるべきであり、メンタルをケアする仕組みを作らないと、今後の企業活動に大きなブレーキになりかねないと感じているとも森川氏は語ります。

現在は不況と、組織が変わらなくてはいけないことがダブルで押し寄せている状況です。この状況を放置すると、休職者が増えることや、休職はしないけれどうつ病などの精神疾患を抱えながら働いている人が増えることが予想されます。

そういった現象が増えれば、組織改革しなくてはいけないのにブレーキがかかってしまうという状況になりかねません。

このコロナショックによる影響としてメンタルヘルスへの影響はいろいろなパターンが考えられますが、代表的に2つのパターンを考えることができます

 1)つらいはずじゃないのにやる気が出ない、鬱になるという人
 2)燃え尽き症候群のような人

1)つらいはずじゃないのにやる気が出ない、鬱になるという人

これは、新型コロナウィルスにおける、国や自治体からの自粛要請により動きが少なくなったことによる影響が大きいといえるでしょう。

また、「在宅勤務=負荷が下がっている」となっていることで、一見自分も周りからもストレスがないように見えているけれども、じつは静かな見えないストレスが溜まってきているという状況が起きているということも考えておかなくてはなりません。

2)燃え尽き症候群のような人

こちらは、変化に適応しようと頑張ってきたけれど、徐々に日常に戻るなかで、どこかふと気が緩んだときなどに、体から力が抜けたようになってしまうことがあると森川氏は指摘します。

コロナショックにより現在は「心理的危機の前になる状態」である

現在は、心理的危機に陥る前提条件に当てはまっており、「心理的危機の前になる状態である」と森川講師は言います。

森川講師メンタルケア・心理的危機になる前の状態

現在の「予想・予測のつかなさ」については、今後コロナウィルスのワクチン開発や、新しい生活様式・予防策などによって改善される見込みはあるでしょう。

しかし、Afterコロナ・Withコロナ対策としてリモートワークや働き方の変化、オフィススペースを無くすなど、コミュニケーションがなくなることでのつながりの欠如や、3密を避ける動きなど身体的幽閉(自分の意志で行動が制限される)の状態は緩くなりつつも続いています。

もちろん、つながりの欠如(自宅勤務)によって対人関係のストレスが減ったり、減っているように見えているかもしれません。

しかし、この3要素があるということは精神疾患が起きる可能性が高まる、精神疾患までにはならないが問題行動が起きたりすることがあり得ると認識をしておくべきだといえるでしょう。

若手社員と管理側のメンタルケアについて考えておくこと

森川講師メンタルケア・若手社員と管理側のメンタルケア

まず大前提として、「テレワークは効率的ではあるが、一定数『あわない人がいる』という前提で考えなければならない。」と森川氏は言います。

なかでも、特に心配な人は「空気を読む人」です。そういう人は、いままでは対面でのコミュニケーション時に、相手のちょっとしたしぐさや表情などを無意識に読んでその場の反応をしていました。ところがオンラインでの面談や会議になると、対面での状況よりも圧倒的に相手のしぐさや表情の情報が少ないために、対面で話すよりもずっと疲れてしまったり、きちんと話せていない感覚に陥る可能性があります。

さまざまな変化は「ストレス」になります。ストレスが過剰になると、メンタル不全になることを注意しなくてはなりません。

また、テレワークにおける「コーチング」にも気を付けるべきでしょう。
コーチングとは、一言でいうと「頑張らせる」マネジメント方法です。相手が見えていない状況でコーチングを行ってしまうことは、相手を追い込んでしまう状況を作る可能性があり、心理的に危ない状況を作り出してしまう可能性もあるのではないでしょうか。

森川講師メンタルケア・コロナ収束後に考えておくメンタルケア

繰り返しとなりますが、メンタルヘルスの問題は今後近いうちに起きると思っておかなくてはならないでしょう。
メンタルヘルスの問題は、ストレスを受けるようなことがあってから3ヵ月後くらいに起きてきます。これはストレスが3ヵ月ほど経つと抵抗力が弱まるからだと言われています。

リーマンショック、東日本大震災の後にも同じようにメンタルダウンした方が増加しました。経済不安や災害などは、人の心に大きな影響を与えます。今回のコロナショックも、特別な事態であると認識して、今のうちから計画をしておく必要があるでしょう。

コロナショックの新入社員に何をすれば良いのか?

コロナウィルスによる影響のなかには、新入社員特有のものもあります。とくに現在はニューノーマルの時代への移行期にあたるので、コロナによるショックの強さは先輩社員に比べて大きいかもしれません。

では、具体的に新入社員に何をしていけば良いのでしょうか。

森川氏は、新人導入研修期間の1ヵ月の内容を、インプットと儀式で分けて考えることが必要だと述べます。

森川講師メンタルケア・コロナ禍の新入社員に何をしていけば良いのか

現在の状況下では、OJTがオフラインからオンラインになること自体は、もちろん構いません。実際、とくにインプットにおいては、オフライン研修でも意外にうまくいっているという声もよく聞きます。

OJTとして「オフライン」で改めてやったほうが良いこととして、森川氏は以下のようなポイントを挙げています。

・自己管理能力:オンラインで身に着けるのは難しい。
社会人になるのが初めてであるため、サポートするべきではないでしょうか。
・コミュニケーション不足:絶対発生するので、方法を検討するべきでしょう。
・社内人脈の把握と構築のケア:つながりが持てないので、最も弱まってしまっていると考えられます。
・意識転換プロセスの欠如への対策

 

コロナ禍のメンタルケアで支援するべきポイント

森川講師メンタルケア・コロナ禍のメンタルケアの支援ポイント

支援する側である人事・上司の方は、以下のようなポイントに気を付けるとよいと森川氏は述べます。

サイコロジカルファーストエイドの活動

「観察すること、話を聞くこと、問題があったらすぐつなぐこと」を怠らないこと。

心の基本的ニーズを押さえる

こころはいつも「有能さ、関係性、自律性」の3つを求めていることを認識する
この3つを社員が持てるように設計することが大事です。

システムの自己組織性を活かす(すでにうまくいっていることを見つけること)

ケアしようとしすぎると、支援者と被害者という図式になりケアされる人が弱くなります。
あくまで、新入社員は被害者ではなく努力している人たちです。うまくいっていることを見つけることで主体性を出し、自分たちでうまくやってくことを作ることが大事だと言えるでしょう。

支援者自身が自分の状態に気を付ける

支援者自身が危ないということも理解しておく必要があるでしょう。

ここから、さらに具体的にメンタルダウンに対する対応策についてお話いただきました。

今後予想される「メンタルダウン」を改善するためにおすすめしたい対策例

森川講師メンタルケア・コロナで予想されるメンタルダウンに効果を発揮する対策例

会社全体:ストレスチェック「やりっぱなし問題」の解決

人事の皆様とお話しするなかで、「ストレスチェックはおこなっているけれども、結果が出たらそれを確認するだけで、実際その結果を活用していない、しきれない」という声はよく伺います。

ストレスチェックを施策としてやるだけではなく、活かすようにするか、活かせないならアンケートなどで発見する仕組みを作ることが必要だと言えるでしょう。

会社全体:外部カウンセラー制度などの「制度はあるけど利用はしない問題」の解決

今までは、外部カウンセラーがいて、何かあれば相談できる環境を整えておき、その制度があることを社内に共有するだけでもよかったでしょう。
ただ、実際外部カウンセラーの方とのカウンセリング利用はあまりされていない、というのが現状ではなかったでしょうか。

このような状況下で、休職はしないけどメンタル的にきついという社員が増えてしまうことが危惧されます。
利用をされていない制度をそのままの状態にするのではなく、欧米や外資系企業のような「顔が見える・人事連携ができるカウンセラーを社内に入れておく」か、外部カウンセラーでも顔が見え、人事連携ができるように変えていくのが良いのではないでしょうか。

各組織:在宅勤務の管理方法「上司集中システム問題」の解決

上司は各社員とのやりとりのなかで、一人一人のことはある程度知っています。しかし、人の管理というのは、1対1だけでするのには限界がありますから、限りがあることを理解しておくべきでしょう。いろんな目があってこそです。そのため、周りの人が何をやってるかわかる仕組み作りが大事だと言えるでしょう。

また、在宅勤務では雑談などがうまくできず、効率的だけどつらいと感じている人が多いようです。つまり、在宅勤務が苦手な人材への理解も必要ではないでしょうか。

森川講師メンタルケア・コロナによるメンタルダウン対策例・レジリエンス

個人を強くする:レジリエンス力(=回復力)の強化

叱られたときに「自分はダメだ」「将来にわたって自分はだめだろう」と感じる人はストレスに弱いです。自責が強く、永続的にとらえてしまう人ほどストレスに弱いと言えるでしょう。

互いにストレスを極力減らす、という点はもちろん意識しておかなければなりません。その上で、物事を部分的に、一時的・現在的に考えられるようになることで、レジリエンス力が鍛えられストレス耐性がつくということです。

個人を強くする:自己管理能力の強化

体調管理はメンタルヘルスにとってとても重要です。体調管理や、時間になったら仕事しないなど自己管理能力の強化も必要となるでしょう。

サポート力を上げる:上司のコミュニケーション能力の向上

この状況下においては、今まで以上にコミュニケーション力の向上が必要です。顔を見る力、ディレクション判断が今まで以上に求められてきます。
とくにテレワークでは文脈や阿吽の呼吸、というのは通用しなくなります。相手の顔やしぐさが見えないからこそ極力具体的に、話をしていく必要があります。

ただし、不得意な人に「コミュニケーション力を上げる」ということは難しいでしょう。その場合はツールなどを使って仕掛けを作ることで解決できることもあります。

コミュニケーションの際に意識するべき「トライアングルシステム」

では、上司と部下がコミュニケーションをとる際に用いられる、1on1ミーティングなどをうまく作用させるにはどのような工夫が必要でしょうか。

1on1などで上司と部下が話をする時間を持つことは効果は高いけれども、心理学的には不安定なものと森川氏は述べます。

本来、1on1とは「心理的安全性が担保された上司と部下とのコミュニケーション」の場であるべきです。しかし、1on1が本来の意味で使われず、尋問のように上司が業務進捗を部下に問う場となっていることが多いのが現状です。

また、日本では本来の意味で、心理的安全性が保たれた1on1がまだできていないところが多いこと。上司と部下という2者関係は対立構造になりやすく難しい、という理解をしておくことが重要です。

森川氏は、「1on1をするときは絶えず3者関係だと安定的であるということを、念頭に置くとよい」と説きます。

森川講師メンタルケア・コミュニケーションのトライアングルシステム

「トライアングルシステムを作る」というのはどういうことか

トライアングルシステムを作るには以下3つの方法があります。

・3人目を作るという方法
3者関係のXには、3人目のメンバーを入れるという方法もあります。

・ほかの人は入れず、「話題」を浮かび上がらせてから始めるという方法
もう1人を加えるというだけではなく、「何を話すか」を決めておいて、部下についてではなく「話題について」常に話をするようにするという方法もあります。

・「ツール」を間に置くという方法
オンラインであれば画面共有をしながら話をすると効果的です。互いに話している量などが可視化できるようなツールを使うのも一つの方法です。

管理職が部下のメンタルケアを意識的に行うことが部下のパフォーマンスを向上させる

コロナショックによる社員のメンタルヘルスへの影響は大きく、まさに今取り組むべき課題です。コロナによって在宅勤務、リモートワークが取り入れられるなど、ニューノーマルな働き方も定着するかもしれません。

しかし、そのような新しい働き方によって、新入社員だけでなくOJTを担う若手社員や管理職のマネジャー層などもメンタルに少なからず影響をもたらしているのも事実です。上司と部下の関係など、現在は顕在化していないところでも、後からメンタルが問題になって、マネジメントがうまくいかなくなる可能性もあります。

いまから社員のメンタルに気を配り、管理職が部下のメンタルケアを意識的に行うことで、マネジメントのパフォーマンス向上ができるようになるのではないでしょうか。

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