【セミナーレポート】”指示命令トップダウン型チーム”から”意見創発ネットワーク型チーム”への変革挑戦のストーリー ~コロナ禍で経営ビジョンを実現させる~クリスピー・クリーム・ドーナツの「4STEPマネジメント・自社バリューづくり&浸透施策」~

2021.06.2

2021年になり、新型コロナウイルス感染拡大の終息を見据えるトップの発言が目立っています。「危機対応」のフェーズは終わり、ただ元に戻るのではなく、アフターコロナの日常にむけた組織・事業戦略の変革および再構築が求められています。今回は、コロナ禍での組織変革の最新事例として、クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社様(以下、「KKDJ」)の取り組みをご紹介したセミナーレポートをお届けします。

1.これまでのKKDJ ~「選択と集中」から「再成長」へ~

1-1.大量閉店からV字回復まで

日本上陸後、日本全国最大64店舗まで規模拡大したKKDJ。しかし、急拡大したゆえに店舗運営が課題となり、上陸10周年となる2016年の前年度には大幅な店舗数削減を実施しました。そして、改めてお客様に末永く愛される店を目指すために、顧客サービスと商品の改善に集中し、既存店事業の建て直しを行いました。

既存店事業の見直しを行い、「最高のドーナツ体験」を届けるために、次の3つのKPIを持って取り組んでいました。

①お客様満足度

②従業員満足度

③既存店売上高前年比

これら3つのKPIに対し、それぞれプラスの結果を得ることができました。KPI達成のカギとなったのは、組織・人事回復に着手したことだといいます。

1-2.V字回復前後の組織とマネジャーの変化

組織のV字回復前後で、組織・マネジャーに次のような変化がありました。

<Before>

組織:積極的出店による規模拡大を重視し、商品も目新しさから努力せずとも売れる状態。各店舗でナレッジが属人的になっている。米国標準の主力商品を売っていた。

SV(マネジャー):トップダウンかつ個々の経験値に頼ったマネジメントになっている。経営と現場の足並みが揃っていない。

<After>

組織:店舗の選択と集中により、顧客価値を追求。ナレッジ共有を徹底し、業務の仕組化を行う。日本独自の主力商品の開発も積極的に実施。

SV(マネジャー):SVの役割期待の定義づけをし、研修・選抜という教育の仕組を通してSV同士およびSVと経営で同じ意識・目線を持つ仕組みを整えた。

顧客に届ける体験価値と、従業員の満足度に注力した結果、特にマネジャーを起点として経営と現場で同じ意識を共有し、互いに良い影響を与えあう組織に変化したといえます。

2.コロナによる現場の混乱と、あるべき姿の再構築

2-1.緊急事態宣言発令後の動き

緊急事態宣言発令当時、商業施設内に大多数の店舗を有するKKDJでも、どのような対応をするべきか議論がありました。結果として、勤務できる社員のみでの店舗運営、ミーティングの頻度の減少、アルバイト・社員の休職および休業補償の給付等の対応を行われました。

コロナ禍において、お客様のため、従業員のためにできることを考え、デリバリー需要の増加への対応、デリバリーでもお客様に感謝を伝えるためのサンキューカード(お客様へのメッセージカード)の導入、社員教育のための動画マニュアルプラットフォームの導入等を実施されました。その結果コロナ禍で行ったお客様アンケートでは過去最高の実績となり、存在意義を再認識する機会になったといいます。

2-2.マネジャーにおける課題

一方、環境の変化に伴い、改めてマネジャーに関する現状の課題を整理し、あるべき姿の可視化を行いました。

<As-Is(現状)>

・マネジャーのレベルに差がある

・マネジャーの役割・職務についての理解度が不足している

・マネジャーへの期待と現実とのギャップがある

・マネジャーのコミュニケーションレベルに差がある

・マネジャーに求める能力を組織として整理できていない

・マネジャーに対する教育が不足している

<To-Be(あるべき姿)>

・KKDJのマネジャーのあるべき姿が明確になっている

・役割期待・職務期待の共通認識がある

・役割期待・職務期待が現KKDJの組織と合っている

・役割期待・組織期待と業務が連携している

・マネジャーそれぞれの強み・課題の理解がある

・マネジャーが自らの役割を理解し、実行している

・お互いを助け合える環境になっている

・マネジャーが目指したいと思える役割になっている

・次世代の候補が育つ仕組みができている

あるべき姿を言語化した上で、それを人事から現場に押し付けるのではなく、ユニットリーダー(SV統括)が中心となり自ら動いて新しい形を作ろうと背中を見せてくれたことが、組織変革施策が機能した理由だと考えられています。

3.アフターコロナのあるべき組織像と自らの役割再定義

3-1.マネジャー層と組織の問題

前章で可視化されたKKDJのマネジャー・組織の課題に対し、全社でバリューの再定義をし、あるべき組織像に近づくためリ・カレントが行った施策について紹介します。

当時のKKDJでは、マネジャーが細かく指示・命令を行うマイクロマネジメントを行っていました。上司の指示命令で動かされることで現場マネジャーの効力感・発信力が低下し、それをみた現場スタッフが、マネジメント職を目指すことに対する魅力を失っていたと考えられます。このような現場の状態が、チャレンジ・チェンジに対する意欲の低減の原因となっていました。

3-2.目指す組織の状態と今回の研修アプローチの意図

今回の研修では、個人の多様性を尊重した、個人の生産性・創造性が高い「ネットワーク型組織」となり、一人ひとりがコミットメントして行動する組織を目指すべく、取り組みました。個人の行動変容を促すため、従来のインプット型の研修ではなく、行動・結果を踏まえ、内省し価値観や信念にアプローチする「ダブルループ学習」を採用しています。これは、他人に決定される「アウトサイドイン」の考え方ではなく、「インサイドアウト」のアプローチをとり、意識下にある価値観を変えることで、意識できる言動をかえることを意図しています。

また、経営理念と個人の価値観が共感できている状態を目指し施策を行いました。そこで、最終的には、個人と組織が共感するマネジメント・バリューを一人ひとりと対話しながら、言語化し理念に取り入れるという形式で実施しました。

 

3-3.マネジメントバリューづくりの4STEP

具体的には、次の4つのステップでマネジメントバリューづくりを行いました。

STEP1:現場マネジャーと講師の1on1による現状把握と勇気づけ

マネジャー一人ひとりと講師が対話し、社長からの期待に対する自分の現状と課題の深堀りや、現状の悩みの掃き出しを実施します。

STEP2:組織の存在目的・マネジャーの行動規範を改めて議論

自分史と全社歴史の振り返りを行い、マネジャーとしての役割を再考します。モチベーショングラフを用い自分の過去を振り返り、その時の上位者の対応・自分の対応、自分がどう感じたかを洗い出し、「Good Boss」「Bad Boss」の姿を言語化します。

STEP3:外部環境を直視し、アフターコロナのあるべき組織増を議論

過去の振り返りを踏まえて、外部環境の分析による会社の変化から、マネジャーの役割をさらに検討します。自分たちの「最高のドーナツ体験」がどう作られてきたかを振り返り、他社の行動規範で見習うべき事例・サービスの調査を踏まえ、自社の行動規範のブラッシュアップを行います。また、消費動向の変化について、大量生産・大量消費の時代から、顧客との意味的なつながりを創り出し、D2Cブランドとして個々人の発信がブランドコミュニティに大きな影響を及ぼす時代になったことを踏まえ、新しい価値を生み出すために、会社や部署の垣根を越えて、個人が意見・提言発信するネットワーク型の組織へ変化していく必要があることについて認識合わせをします。

STEP4:全員参画でのバリュー作成。浸透施策の計画

最終的に、全員で新たな浸透施策を立案します。浸透理念の手法を難易度別に検討したうえで、行動規範としてまとめていきます。

マネジメントバリューへ落とし込むことは、個人学習のモデルを組織に適用した組織学習モデルの構築につながっています。今回の研修においては、組織学習モデルを意識した取り組みとなっていることを付言します。

4.KKDJの現在の浸透施策

最後に、マネジメントバリュー策定後、現場でどのような浸透施策を実施されているか、ユニットリーダーより紹介いただきました。

策定したマネジメントバリューを「風化させない」という強い意志のもと、現場への浸透施策を徹底されています。決めた7つの行動規範の推進委員を決め、チームごとに自己・他己診断を定期的に行われています。部下・上司が互いに評価を受け止め、その結果を同僚のメンバーに共有し、メッセージカードを活用して称賛・アドバイスをするなど、全員で取り組む場を設けています。また、毎月・毎週のミーティングで、自分が取り組むべき項目、具体的に実施したことを発表する場を設け、一人ひとりとの意識共有を継続されているとのことです。

5.まとめ

コロナ禍の危機対応を経て、マネジメントバリューを策定し、さらに強い組織・ブランドへと成長されているKKDJ様の事例をご紹介しました。マネジメントバリューを決めて終わらせるのではなく、一人ひとりと対話をし、個人の振り返りとお互いにフィードバックする機会を定期的に設けることで、マネジメントバリューを組織全体に浸透され、”ネットワーク型組織”へと変化しつつある素晴らしい事例といえます。

組織の行動規範・バリューの再認識を行うことで、「元に戻る」だけではないアフターコロナのあるべき組織像へむけたチームの土台づくりが求められているのではないでしょうか。

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