2022.03.2

「実務につながる」学習設計4つの視点~中堅社員の「とりあえず受講しました」意識を変える職場巻き込み型ラーニングデザイン~

「上司から研修の効果を求められたけど、どのように示せばいいかわからない」
「せっかく時間やコストをかけて実施したのに現場に変化が現れない」

研修設計をご担当される人事の皆様から、よくこんなお声を耳にします。こうしたお悩みは以前から根強いものでしたが、リモートワークが普及したことでさらに増加しています。

研修のゴールイメージが受講生の周囲に共有されず、受講生自身も研修への期待が明確ではないため、研修で学んだことが現場で実施されず、実務と分断された「研修のやりっぱなし」状態になってしまいます。

こうした状況を打破するには、個人の学習に終始した研修・教育施策では限界があるとリ・カレントでは考えています。

本セミナーでは、官公庁等で実際に導入された、職場巻き込み型の学習設計事例をもとに、
研修と実務の分断を招いている主な原因と、個人の学びを組織に拡げるための4つの視点についてお伝えしました。

■「研修のやりっぱなし」はなぜ起きるのか

「研修のやりっぱなし」状態の要因を分析すると、大きく3つに分けることができます。
①受講生の問題
②上司・周囲の問題
③事務局の問題

①受講生の問題
自身の成長課題を発見してゴール設定ができないと、研修への意欲が高まりません。
また、日頃から学習する文化や、学習してきたことを周囲と共感して共感を分かち合うなど周囲とのコミュニケーションが不足していると、研修で学習したことを現場に置き換える力が低くなります。

②上司・周囲の問題
上司・周囲の協力を得るためには、巻き込んでいくことが大きなテーマになります。
しかし、学習する文化が根付いていないと、学習環境が整っても実務に結びつきにくい現状があります。
上司の協力が得られないという問題以上に、文化として上司が動きにくい文化がある可能性ことを念頭に置くことが必要です。

③事務局の問題
事務局は日々研修の準備・施策を投下し続けることで、煩雑な仕事が増えて忙しくなり、やりたいことがやれない状態になりがちです。その結果、受講生に対して研修のための学習を行ってしまっている可能性があります。

こうした状態を解消するためには、個人で学んだことに1人で取り組む「個人学習」で終わらせるのではなく、周囲への発信を経て、ともに変化・実践していく「組織学習」に移行していくことが必要です。

■研修の効果を最大化するために:個人の学びを組織学習に拡げる4つの視点

このセッションでは、 研修の効果が最大化されるポイント・アイデアについてお伝えしました。

研修の効果を最大化するために

個人の学びを組織学習に拡げる4つの視点

研修や教育施策の中で学んだ内容は、個人で挑戦するだけでは継続性が低くなり、挑戦することへの壁を感じやすくなります。重要なのは、周囲に共感を得て、協働することによって成果を上げる状態を作っていくことです。つまり、個人学習を組織学習に接続していくことが、研修のやりっぱなしを脱して実務に繋げていくポイントです。

個人の学びを組織に拡げるためには4つの視点があります。

①学習レディネス
②学習プロセス
③職場環境
④活動の習慣化

①学習レディネス学習レディネス

学習効果の影響は、受講前が40%、受講当日20%、受講後40%と言われています。つまり、研修当日よりも研修の前に研修内容をしっかり理解しておくことが、大きな影響を持ちます。そのため、研修前後の上司との関わり、仕事の取り組み・関連付けを強化していくことが重要です。

②学習プロセス

学習プロセス

受講生を中心に考えるということが、大きなキーワードです。受講生を中心した考え方はラ―ナー・エクスペリエンス(=LX)と呼ばれ、学習者がどういう体験をしていくのかに焦点を当てています。

LXでは受講生が最終的にどんな感情で終わり、感情的な表現で言い表すことによって、学習者を中心とした設計になっていきやすいとされます。
LXのフローは、以下の通りです。

①予期的LX:事前の案内、仕事との紐付け
②一次的LX:事前課題や上司面談などの施策
③エピソード的LX:集合研修などの何かしらの学習の機会
④累積的LX:事後課題、現場実践、新しい学習

一連のフローの中で、受講生が「学んだこと事で仕事が面白くなった」など、感情的な表現を含めて考えていくことが、学習プロセスを考えるポイントです。

③職場環境

職場環境

どのように上司・周囲を巻き込み、事務局の負担を軽くするかにおいて焦点になるのが、職場環境です。

ポイントは、人材・組織のビジョンに合意して学習のゴールを決めることです。そのためには、事業部側・経営陣・管理職と人材や組織のビジョンに合意しておくことが必要になります。事業部側・経営陣・管理職の合意に基づいて、学習のゴールが設定されていると示せるようにしておくことは、上司を納得させる上で重要になります。

事業の方針から逆算した人材・組織のビジョンに合意して、その上で施策に繋げていく一連の流れを見せることで、上司にも論理的な納得感を与えることができ、巻き込みやすくなります。

④活動習慣化

活動習慣化

人間はどうしても研修で学んだことを忘れ、やってもやらなくても変わらないという風になってしまうと、やらなくなるという原則があります。

研修で学んで意欲が高まったとしても、周囲が変わっていなければその中でやり続けていくことは、ストレスがかかる状態になっていきます。

そのため、上司のアドバイスや期待の伝達など、周囲とコミュニティを組んでやっていく状態を構築していくことが求められます。受講生・上司・周囲のコミュニティをどう作っていくかが、大きなテーマとなります。

■実例紹介!4つの視点で考えた学習デザイン

セミナー後半では、これら4つの視点を踏まえ、官公庁で実際に取り入れられた研修についてご紹介しました。

●事例概要
官公庁の業種・所属共に3年目の職員が対象。職場におけるコミュニケーションや自身の在り方に焦点を当てて、日々の業務で成果を出すための仕事の進め方について学ぶ。最終的に日々の業務、上司・周囲との関わり合いをより良くして最大の成果を出せる環境にする。

●受講生の課題
責任感が強く、仕事を一人で抱え込みがちな側面がある。また、異動などで職場が変わる方も多く、関係性ができていないので、自分なりの提言・提案が苦手。

この研修施策の狙いは、これまでの職場のコミュニケーションや自分自身のあり方を振り返り、日々の業務を楽しみながら成果を出すための貢献力と提言力を学習し、部下力の向上を図ることです。

4つの視点で考えた学習デザイン事例

受講生には、上司と一緒にガイダンス動画を視聴してもらい、研修目的の理解を深めた上で、事前課題として資料作成・動画視聴、理解度テスト・ディベートを行っていただきました。

また、LMSを活用し、e-ラーニングでの学習を進め、フォロワーシップ診断で自分を客観的に見る要素を入れています。

この研修で一番のポイントになるのが、ディベートです。
※実際に事前に動画を視聴して、動画に沿った内容をもとに、自分の意見をLMS上に挙げていくことをディベートと定義

研修前に自分ごと化されたことで、自己成長課題が見えて学習レディネスが高まり、安心感を持って研修に臨むことができました。このように現場と研修を、ディベートを使用して繋ぐことで、実務に近い学びを受講生が言語化していくことに繋げることができました。

■脱・やりっぱなし研修!職場を巻き込み個人の学びを組織へ拡げるために

本セミナーを通じて、個人の学びを組織に拡げるための4つの視点や、それを活用した官公庁の事例についてお伝えしました。

研修効果を上げて組織としての成果を最大化するためには、個人で学んだことに1人で取り組む「個人学習」で終わらせず、周囲への発信を経て、ともに変化・実践していく「組織学習」に移行していくことが重要です。

それぞれの会社の文化や風土、または現場の方策・制約・リソースがあると思いますが、その中でも出来ることを、ぜひ、私たちと一緒に模索してみませんか。ITツールなども活用し、シンプル化された学習デザインを、自社にあった形で実践していきましょう。

詳しいセミナーの内容・学習デザインの設計事例を含めた詳細資料は以下からご覧いただけます

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