セミナーレポート20190517HRカンファ・アウトカム堀井

HRカンファレンス2019-春- 社員が共感する経営ビジョン再構築の5ステップ ~WHYから始める情動アプローチの事例紹介~

2019.06.10

上場および未上場企業の人事担当者への調査によると、「企業理念・ビジョンが必要だと感じている会社」は98%あるのに対し、その「企業理念・ビジョンが現場へ浸透していると感じている会社」はわずか6%しかありません。人事担当者が企業理念・ビジョンの浸透が必要だと感じているのに、現場への浸透がされていない、という大きな矛盾が生じています。

その原因は、企業理念・ビジョンの浸透を「How」から始めている企業が多いことにあります。ビジョン浸透を行っている現場の社員に仕事についてヒアリングをしてみると「面白くない」という声が聞こえてきます。なぜ、仕事が「面白くない」と感じるのでしょうか。それは、何のために働いているかが見えておらず、腑に落ちていないためです。

本講演では、企業理念・ビジョンを浸透させながら、社員が仕事を面白いと感じながら働いてもらうための方法、「Whyから始まる情動アプローチ」の5つのステップを、リ・カレント株式会社、人材組織開発プロデュース部の堀井悠、菅谷英明、そして小林講師から、事例を交えてご紹介しました。

2019HRカンファレンス~WHYから始める情動アプローチ

※本講演の資料はこちらのフォームからダウンロードいただけます。

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社員の働きがいが感じられない、生産性が上がらないのは、ビジョン浸透のズレによるもの

「仕事で成長できた理由」について、全国の15歳〜69歳の有能者(派遣・契約社員・自営業を含む)4,938人にアンケート調査を実施してみると、一番回答数が多かったのは、「仕事にやりがい、意義を感じることができた」からという答えでした。この結果から解ることは、仕事において、WHYが分かった時が一番成長できたと感じているということです。つまり、社員が仕事に対してやりがいや意義を感じる背景には、その会社のビジョンが浸透しているのです。ここで、堀井自身が体感した2つの実例をご紹介しました。

<実例1:大手コーヒーチェーンの場合>

Before:ルールやマニュアルの遵守度合いによって評価が決まるお店でした。しかし、どれだけ頑張っても売上は上がらず、売上昨対90%という結果に陥っていました。

After: 現場スタッフにヒアリングを実施したところ、「ドライブスルー店のカリスマになる」という声が従業員から出ました。そこでスローガンを「私たちはホスピタリティーのカリスマとしてこの街のお客様に愛される店になる」と掲げました。その結果、売上昨対108%・社内接客調査全国1位にまで変わることができたのです。

<実例2:飲食店支援の営業組織の場合>

Before: この飲食店では、日々の会話で業績の話ばかりが繰り返しされていました。当時は、売上通期目標も未達という苦しい状況でした。

After: マネジャーが代わり、まず行ったことは現場へのヒアリングでした。「営業をしているとき、何が楽しいと感じるのか」を現場のスタッフに聞いたところ、「お客様から出会えてよかったと言われた時が一番楽しい」という声を聞き出すことができたのです。その現場の声から、スローガンが「街の方々に『出会えてよかった』を届けよう」になり、結果として売上目標125%、社内順位全国2位に成長したのです。

HRカンファレンス2019春レポート-やりがいの背景にあったビジョン浸透

この2つの事例を通して伝えたいことは、売上が上がった要因として、「現場の声」によるビジョン浸透があったということです。小集団だからできるのではないかと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、大きな組織でも実現できます。その方法が「Whyから始まる情動アプローチ」です。

では、ビジョン浸透を進めるにあたってどのようなアプローチをしたらよいでしょうか。その具体的なステップについて、リ・カレント株式会社プロフェッショナルパートナー講師である、株式会社T&P Solutions代表取締役、小林孝講師からご紹介させていただきました。小林講師は米軍公認ブラックベルト、戦略計画ファシリテーター、ASQクオリティアソシエイツ、DiSCファシリテーターといった資格を持ち、IT関連、製造業、医療、金融などさまざまな分野のMVV策定、業務改革、組織変革を手掛けるプロフェッショナルです。

本当のビジョン浸透のために、WHYから動き出すためのインサイドアウトの思考法

 

HRカンファレンス Whyから始めるビジョン構築 小林講師

小林講師は「そもそも会社は難しい」と語ります。頑張っても結果が出ないと感じることがあったり、社員の士気を高めたり、満足度を上げることが難しい。「自分の組織はどんな会社ですか?」と尋ねられて、組織のことを褒めずに悪いところばかりあげてしまうのも日本人ならではです。

では、なぜ社員の満足度が上がらないのでしょうか。それは、ビジョンや働き方の成功意義が見いだせていないからです。ビジョンや働き方の意義が見えている会社ほど、社員の定着率が高い傾向にあります。人事の観点からすると、隙あらば辞めてしまおうという社員を防ぎたいところだと思います。そこで推奨しているのが「Whyから始める情動アプローチ」なのです。

「Whyから始める情動アプローチ」を説明するにあたって、まず触れておきたいのが、「ゴールデンサークル理論」です。下図をご覧ください。

HRカンファレンス2019春 Whyから始める情動アプローチ-ゴールデン・サークル理論-

「WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う」(サイモン・シネック著)によると、「WHY(なぜ)を示した時に人は動く」と言われています。図で示したゴールデンサークルと、人間の大脳の構造は同じです。人は大脳の中心部分(言語をつかさどらない)で共感を得ています。ゴールデンサークルでは、図の中心に「WHY(なぜ)」があり、その外側に「HOW(どうやってやるのか)」、「WHAT(何をするのか)」と広がっていきます。つまり、人間の脳でも「活動の目的」、つまり「Why」が語られ、共有されると、情動を司る大脳辺縁系が刺激され、共感や情動といった部分から突き動かされるようになるのです。

一般的に、会社のビジョンや働き方に関しても、WHATから始まるアウトサイドインの思考法で考えがちです。逆にWHYから始まるインサイドアウトの思考法だと、WHYを理解した上で行動できるので、全社員がWhyを共有できた状態にあるため、頑張ることができる。そのためにも、自分の会社に皆が共有できるWHYがあるのかが大事になってきます。

会社のビジョンの根本となるWHYを作り出すための5つのステップ

では、会社のビジョンや働き方の根本となるWHYを作り出すためにはどうすればよいのでしょうか。具体的にはこれらのWhyを5つのステップで作り出していきます。

STEP1:Defineフェーズ
WHYが必要な背景の明確化と成果を設定する。メンバーを選抜し、CEOインタビューを実施する。

STEP2:Measureフェーズ
現状把握を実施する。(イメージおよび分析アプローチなど、さまざまな方法があります)

STEP3:Analyzeフェーズ
集まってきたデータやWHYの断片を分析する。

STEP4:Designフェーズ
断片イメージの言語化を行う。

STEP5:Validateフェーズ
出来上がった語句を第三者によって評価してもらう。

HRカンファレンス春 Whyを作り出す5ステップ

これらの5つのステップを経て、Deploymentフェーズで出来上がったMVVの展開と定着を行っていきます。本講演では、具体的にこの5つのステップに沿ってミッション、ビジョン、バリューを策定した事例をご紹介しました。

 

<実施例1:東海大学経営学科>

「人材像からWHYを導き出す」

STEP1:Defineフェーズ
大学教育の現場において、次世代の人材を作り出す重要性と現在大学で出来ていることとのギャップが大きいと学部長が実感していた。

STEP2:Measureフェーズ
経営学科の教授たちが集まり、グループワークを通じて人材像の要素と、現在できている事の現状把握を実施。

STEP3:Analyzeフェーズ
現状データを分析し、求められる人材像の具体的な在り方が導き出された。

STEP4:Designフェーズ
東海大学経営学科の価値として、「経験の場」「ネットワークの場」「学びの場」の3つの場によって成り立つとするピクトグラムによってデザインされていきました。

STEP5:Validateフェーズ
人材像の姿が明確に表現され、WHYによって学科の進むべき方向性が精査されました。

 

このように5つのステップを踏むことで、大学の学科として十分な部分、さらなる進展が必要な部分や不十分な部分が、WHYによって継続的に向上するようになったのです。

 

<実例2:アウトカム社>

「幕末の現場からインスピレーションを得てWHYを作る」

 STEP1:Defineフェーズ
従来のリ・カレント社の顧客対象や項目と違う、会社を立ち上げ、新しいサービスを提供することのWHYを明確にして新事業を進めていきたいという想いがあった。

STEP2:Measureフェーズ
平成から令和へ時代も変わったこともあり、幕末を肌で感じてインスピレーションを得る方法として、横須賀製鉄所跡を見学して現状を把握することを実施した。

STEP3:Analyzeフェーズ
集まった要素を、あえて畳敷きの和室で言語データを中心に分析。PEST分析も背景分析として実施した。

STEP4:Designフェーズ
得られたデータを基に言語化を行い、従来に無い価値観を提供するWHYを「組織変革いとをかし」としてデザイン。

STEP5:Validateフェーズ
現在作り上げた資料から、コアバリューへの展開を実施し、社内にて精査中。

 

こちらも5つのステップを踏むことにより、机上では考えもつかないインスピレーションを得ることで、WHYを使命として言語化することに繋げることができました。

本講演では、現在リ・カレントで支援を行っているサービス業のお客様について情動的なアプローチについて作成した動画もご紹介しました。動画でお伝えしたことは、「お客様が感じていることはどういうことなのかを五感を活かしてWHYを得る」ということです。具体的には、ホテルなどのサービス業のお客様にとってのWHYとは何か。ホテル・リゾートのおもてなしとは何か。それを視覚情報だけでなく、実際に使われているアメニティや食器などの肌触りの触覚、漂っている香りなどの嗅覚など、人間が持っている五感を使うことで、情動に働きかけるという取り組みです。

 

情動アプローチで大切なことは以下の3点になります。

①共感と共鳴を生み出すビジョンとは、職場の価値観やメンバーの生の声が反映された「自分達らしさ」。選抜メンバーがただ渡すだけでは意味がない。作り上げていくときに共有することが情動アプローチの大事な部分。

②「自分達らしさ」は業種、業態、地域、文化など、職場の背景に合わせて作ることが必要。

③「自分達らしさ」を生み出すプロセスに同じものは無く、オーダーメイドで企画する必要がある。

このように情動アプローチによって、自分たちが共感できるWHYを生み出すことこそ、MVVを作成して持つ意義であり、そうして共感できるWHYから作られたMVVを持つことが強い組織を作り出していくのです。オーダーメイドで企画するといっても、自分たちで作り出すのは難しいこともあるかもしれません。そのお手伝いを担うのが、先ほどの実施事例でもご紹介したアウトカム社なのです。

現場主体のネットワーク型組織を構築し、自己変革ができる組織に変えていく

ここからは小林講師に代わり、アウトカムの一員である、リ・カレント株式会社の人材組織開発プロデューサー菅谷英明から「アウトカム社が目指している組織改革の方向性」についてお話をさせていただきました。

HRカンファレンス2019 アウトカム|Whyから始める情動アプローチ菅谷

私達はこれまで一般的に形成されてきた「トップダウン型組織」から「現場主体によるネットワーク型組織」へ、組織の形を変えていきたいと思っています。「トップダウン型」のピラミッド構造だと、経営意思決定がトップにより行われ、管理職に対し短期利益の追求を行うようになり、従業員は出された指示を忠実に守った方が安全だから、余計なことはしないようにしようという価値観に繋がり、停滞組織になってしまう。

一方で、私達が提唱している「現場主体によるネットワーク型組織」では、意思決定を多くのメンバーが参画した合議で行い、権限移譲を促進し、メンバーの成長を信じて待つ。

管理職はセルフマネジメントをするようになり、従業員はチャレンジすることが不利益に取り扱われないため、失敗に寛容な組織で新たな取り組みを推進することに価値をおくようになり、「まずは私からやってみよう」という価値観へと転換していきます。そうすることで、自己変革組織になることができます。

この考えに至ったのには、以下のような事態を目にしたからです。次世代リーダーへの教育支援としてセミナーを実施してきました。しかし、このセミナーに参加した方々が、離職願いを出す事態が起きたのです。何が原因なのだろうとヒアリングをしてみると、共通して出てきたのは「人事マネジメントへの不満」でした。急な制度変更による減給、意図が明確でない現場への細かな指示出しなど、理由はさまざまです。

つまり、セミナーを受けることで次世代リーダーの個としてのレベルアップはできたが、その周辺環境のレベルアップがなされていないということに気づかされました。「そこを変えたい」と強く感じました。働いている社員の方々がMVVをしっかり実感することも大切ですが、組織としてバックアップして育てていくことが大事であるということを伝えたいと思いました。

HRカンファレンス2019 Whyから始める情動アプローチ アウトカムの目指す組織像

そこでアウトカム社では、全社員参画型のMVV構築サービスを提供しています。会社としてこのサービスを取り組むのは、社会的に意義があることだと感じているためです。「人生100年時代と言われるなかで、面白くないと感じながら働く人が多いままでいいのか」「やりがいや仕事の意義が必要なのに、組織で何かを実行するとなったらどうしたらいいのかわからないという多くの日本企業が抱える現状をそのままにしていいのか」。やりがいや意義はロジックだけではなく、情動を伴ったWHYがあれば変えることができます。「面白いってなんだろう」と真面目に分析して行き着いたのが、先ほどの事例で小林講師からもお話があった「いとをかし」でした。

仕事や組織の面白いは、自分たちの言葉で作り出すことができます。先ほどの事例のように自分たちのなかに答えはあったんですね。自分たちの言葉で面白くすることができる。「面白い」というのと、「幕末」のインスピレーションを得て、改めて「日本」という要素が日本の企業には必要ではないかと思い、考えたのが「いとをかし」だったのです。

HRカンファレンス2019 Whyから始める情動アプローチ アウトカム

「WHYから始まる情動アプローチ」を行うことで、社員自身が参画し、仕事を面白いと感じながら働くことで、士気が高まり、企業理念・ビジョン浸透にも繋がります。小林講師がお伝えした5つのステップにより、WHYを見いだすことはできるものの、なかなか実践的にするのは難しいと感じる方もいるのではないでしょうか。

そのときはアウトカム社が行っているサービスを活用して、自組織の企業理念・ビジョン浸透へと役立ててほしいと思います。

 

※当日の講演資料は下記のフォームからダウンロードしてください。

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