フォロワーシップのある中堅社員を育てる|リ・カレント
2020.10.15

【解説記事】中堅層の「フォロワーシップ」が組織全体を変える!フォロワーシップ行動5段階の習熟レベルと「リーダー代行ミッション」とは

あなたの会社で、中堅社員は十分に活躍できていますか?
中堅社員が、自分の価値観やスキルに対する自覚が不明確な状態を放置すると、どうなるでしょうか。仕事にやりがいを持てないまま管理職世代になり、数年後リーダー不在の深刻な問題を引き起こしかねません。
彼らの内省を深め、やりがいをもって動き出しリーダー人材へ成長するための一つのカギが、「フォロワーシップ」です。本コラムでは、今の中堅社員に関する問題とフォロワーシップの醸成に向けた取り組みについて解説します。

「企業と人材」フォロワーシップ記事ダウンロード※本コラムは、「企業と人材 2020年2月号」に寄稿したリ・カレント人材組織開発プロデュース部マネジャー堀井 悠(ほりい ひさし)の記事を編集して掲載しております。

管理職になりたくない中堅社員が管理職にならざるを得ない時代の危機

新人以上、管理職未満の中堅社員(20代後半から30代前半層中心にとらえています)は活躍が期待される世代ですが、彼らが存分に力を発揮できない問題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。最近は特に上司や管理職がいかに社員のモチベーションを高めるかに関心が高いゆえに、問題意識が露呈していると言えます。また、中堅社員がかかえているモヤモヤの度合いや内容にばらつきが大きく、一人ひとりの感じ方や価値観が異なるために、画一的なアドバイスでは問題解決につながらなくなっています。

このような中堅社員に関わる問題の背景には、彼らの過ごした時代背景があります。中堅社員の世代は、10代の時期をインターネット・SNSに囲まれ、リアルの世界で目立つことでバーチャルの世界でつまはじきにされた経験を見聞きして過ごしてきています。その結果、自らリーダーシップをとるなど、目立つことを避ける傾向があると考えられます。

また、自分があることに対して特別な感情を抱いていることを表に出すこと(表出)を恐れるのもこの世代の特徴です。傷ついていること、不満に思うことを口に出さず、上司が気づかないうちにメンタル不全など深刻な事態につながりかねません。

中堅社員を取り巻くこれらの問題は、近い将来リーダーに登用するべき人材がいなくなる事態をひきおこす可能性があります。企業の人員構成上、管理職のポストに対して候補者数が少ない状態となり、管理職になりたくない人も登用しなければならない状況が予想されます。

自らの意思でリーダーシップを発揮した経験もなく、感情の表出を恐れるような人物が管理職につけば、組織に良くない影響があることはいうまでもありません。近い将来の問題を避けるために、今から中堅社員に働きかける必要があるのです。

対話で中堅社員のWillを導き出して仕事へのやりがいを促すことが重要

中堅社員が責任ある仕事や価値創造に挑むことを避けるのは、彼らが、自分の「Will(価値観、好きなこと)」と、「Skill(職能、できること)」を言語化できていないことが重大な要因です。自分のWillとSkillを上司にはっきり示さないと、興味のない仕事や苦手な仕事ばかりアサインされることになり、仕事にやりがいを感じる機会を得にくくなります。

フォロワーシップのWillとSkillが言語化されていない状態とは
そこで、求められるのが対話です。管理職が中堅社員の話をじっくり聞く時間をとり、本人の口から、その人の歴史や育ってきた環境、印象に残っている出来事などを語ってもらいます。管理職は、それを聞きながら、いくつものエピソードに共通するものは何か、一貫している思いはあるか、といったことをみていきます。そのやりとりから、その人の個性や資質を表現する言葉をみつけることができれば、中堅社員のWill(やりたいこと、価値観)を明らかにすることができます。

もちろん、Willの理解は簡単にはうまくいきません。理解が甘いと、上司が部下のモチベーションにつながると勘違いし、逆にやる気をそぐような仕事をアサインしてしまう事態になりかねません。対話を繰り返し、Willの理解を明確にする努力を継続することが重要です。

中堅層の「フォロワーシップ」が組織全体を変えていく

Will、Skillの言語化では、中堅社員本人と上司が、対話を通じて納得できる答えに到達し、合意するプロセスが重要であることは前述のとおりです。一方、管理職が一人ひとりとじっくり対話の時間をとることは難しいのも現状です。そこで重要なのが社員のフォロワーシップです。

フォロワーシップの基本類型からどんなフォロワーを目指すべきか

フォロワーシップとは、組織の一員として「リーダーへの自律的支援」と「組織への主体的貢献」を行うことです。フォロワーシップを発揮できる優れたメンバーの存在は、組織が成果を上げるためのカギとなります。

組織のなかで、リーダーシップとフォロワーシップの両方が発揮されれば、大きな相乗効果を生むことができます。自分のWillを理解し、フォロワーシップを身につけた部下は、困難にぶつかった場合も、上司や周りの人に自分から助けを求めることができ、成長し続けることができます。

フォロワーシップを発揮できる中堅社員が増えれば、組織が確実に変わっていきます。
フォロワーシップは、組織を活性化するためのOSなのです。

フォロワーシップを身に付ける、フォロワーシップ行動の習熟レベル5段階とは

それでは、フォロワーシップはどのようにすれば身につくのでしょうか。

フォロワーシップは、実践を通じて初めて身につくものです。リ・カレントでは、フォロワーシップの習熟レベルが分かりやすいように、フォロワーシップの行動を5段階に分類しています。

フォロワーシップを醸成する5ステップ

「0. 上司との関係性を知る」では、まずプライベートも含めて、お互いの情報を開示することから始めます。「1. 上司の仕事・役割を知る」は、上司が担っている役割や仕事の内容を理解することです。「2. 上司のニーズを知る」は、上司が自分に何をしてほしいと思っているかを対話することです。レベル3 からは「知る」だけでなく、主体的に行動することが求められます。「4. 上司の良き理解者になる」というのは、上司の強みだけでなく弱みも理解し、補佐できるということです。こられを経て、「5. 上司に提言・提案する」に到達すれば、フォロワーシップの最終段階です。

これをベースに、一人ひとりが自分のフォロワーシップは、現在どのレベルにあるかを客観評価し、全員で現在より1段上のレベルをめざしていくことによって、フォロワーシップを身につけていきます。それに対して上司も、メンバー一人ひとりのフォロワーシップの現状を把握したうえで、部下が一段上のレベルを意識できるよう支援します。

このように、フォロワーシップの行動を5段階に分類し、実践・評価・改善によって組織全体でフォロワーシップを高めていくことが大切なのです。

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フォロワーシップの醸成につながる「リーダー代行ミッション」

リ・カレントでは、フォロワーシップを実践して身に付けるための有効な方法として、「リーダー代行ミッション」をご提案しています。

リーダー代行ミッションは、中堅社員が管理職の役割を学ぶOJT です。その最大のねらいは、リーダーのリアルな心情を感じることにあります。中堅社員は、リーダーの仕事を代行することで、「自分がメンバーとしてどう行動すればいいか」を身をもって知ることができ、フォロワーシップの醸成につながります。

なかでも大きな効果が期待できるのは、職場の活性化にかかわる活動を、リーダー代行に担当してもらい、できたこと、できなかったことを、感情面も含めて内省する機会をつくる方法です。リーダーと一緒に、職場のミッション、ビジョン、バリューを策定する役割とともに、それらを職場メンバーに浸透させる働きかけをリーダー代行が果たせば、大きな効果が期待できます。職場全体で議論するミーティングを開き、そのファシリテーターをリーダー代行に任せるなどすれば、マネジメントへのコミットメントが高まり、自信につながります。

フォロワーシップを指針としたリーダー代行経験

目に見える効果が現れるまでは時間がかかりますが、リーダー代行である中堅社員が自らやりたいことを主張するようになる等、積極性の向上がみてとれれば、一つの成果と言えるのではないでしょうか。

人材開発部門も柔軟な発想から社員一人ひとりに向き合って未知の成果にトライするべき

企業の人材開発は、社員一人ひとりが「自分のWill、Skillは何なのか」を考える機会をもつことに、もっと積極的に支援すべきではないでしょうか。

中堅層はモヤモヤ感を抱えながら働いている人が多い分、自分のWillをみつけ、いったん火がつくと、爆発的な化学反応を起こして大きく変わります。

人材開発担当者の方々には、管理職と同様に、まずは謙虚な気持ちで、社員一人ひとりに向き合ってほしいと思います。そして、それぞれのWill、Skillをしっかりと確認して、それを伸ばしていくことを支援する姿勢を打ち出してください。型にはまった人物像をリセットし、一人ひとりにあった人材開発を進めていただきたいと思います。

人と組織の力を高める人材開発情報誌「企業と人材」に掲載された、リ・カレント堀井悠による「対話によってウィル(価値観)を言語化し、フォロワーシップのある中堅社員を育てる」記事は、こちらからダウンロードいただけます。

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