人生100年時代の“ 航海図 ”を描く! 50代から考える「トリプル・キャリア」【第12回】トリプル・キャリアで、定年後も稼ぐための「健康法」 <その3>
- 監修者
- 大杉 潤(合同会社ノマド&ブランディング/リ・カレント プロフェッショナルパートナー)
『定年後不安: 人生100年時代の生き方』(角川新書)の著者であり50代キャリアの専門家、
大杉 潤講師による連載コラム!
50代社員が定年後を見据えつつ、モチベーション高く会社に貢献するための「トリプル・キャリア」の考え方を伝授します。
人生100年時代に、「トリプル・キャリア」という人生設計を立てて、長く働き続けるために必要な「戦略的に準備すべき4つのスキル」を順番に解説してきました。
これまでの1~3番目のスキルについて詳しく知りたい方は、下記から総集編冊子をご覧ください。
今回もその4番目「健康法」について、<その3>では各論としての具体的な健康法をお話していきましょう。まずは「食事」についてです。
「食事」がすべての健康の源になる
アメリカの有名なことわざに、「WE ARE WHAT WE EAT.」(=私たちは食べたものからできている。)というものがありますが、聞いたことがあるでしょうか?
まさに私たちが毎日何を食べているかが「健康」のベースになる、という意味です。
体が本当に求める食べ物を摂ること、もっと厳密に言えば、細胞の中のDNAが要求するミネラルやビタミンなどさまざまな栄養素を摂ることが、私たちの「健康」の源になる、というのが分子生物学の研究で解明されたそうです。
米国公益法人ライフサイエンスアカデミーを主宰し、杏林予防医学研究所所長として、食による予防医学の普及に努めている山田豊文氏が書いた『細胞から元気になる食事』(新潮文庫)によれば、「正しい食事が一生を決める」ということです。
なぜなら、体が要求する正しい食事を摂れば、私たちが生まれながらにして持っている生命体としての優れた機能を、効率よく、正しく、最大限機能させることができるためです。
薬を用いることなく人間が本来持っている自己複製能力を引き出して病状を改善する「分子整合医学」の理論によれば、食や栄養に関する取り組みが「健康」には最も大切だ、ということになります。
それでは、私たちは一体、どんな食事をすればよいのでしょうか?
本格的な栄養学の分野にまで入ることはしませんが、よく言われているのは、ミネラルやビタミンをバランスよく摂ること。つまり、野菜を中心とした食事が適していて、旬のものを調理する伝統的な日本食の家庭料理は理想的な食事と言えます。
さらに最近、注目されているのが、腸内環境を整えることで、これも食物繊維をはじめさまざまな栄養素や食物酵素が欠かせませんが、野菜が優れた食事になります。
日本人の場合は、栄養バランスという観点からは、不足がちになるのは、蛋白質(必須アミノ酸)、ビタミン、ミネラル、食物繊維。逆に、過剰になる人が多いのが脂質だそうです。
したがって、積極的にご飯(お米)と大豆製品、野菜・海藻類を食べて、脂肪分とお酒を控えめにするのがポイントです。
但し、あまり神経質になるよりは、体の声を素直に聞いて、なるべく季節ごとに旬の新鮮なものを、彩りよく食卓に並べて楽しんで食べるのが良いようです。
そして、何を食べるかも重要ですが、家族や仲間と楽しく話をしながら、よく噛んでゆっくりと食べることも大切でしょう。心穏やかに「食事」を楽しむことがいいのです。
加えて、定年世代以降になったら「腹八分目」は、何よりの健康法だと言います。長寿の方、とくに100歳を超えて生きる方は例外なく、日々心掛けていることとして、「腹八分目」を挙げています。
料理は長寿の秘訣、認知症予防の決定版!
「食事」に関する健康法として、「定年後」の男性にぜひ、知っておいてもらいたいことがあります。それは、料理をパートナー任せにせず、自ら役割分担を買って出ることが、健康面では大きなプラスになる、ということです。
まず第1に、これまで述べてきた「体が求める栄養」について、料理に参加することにより、実際のメニューとして具体化し、買い物なども行うことで、基本的な知識が身につきます。
第2として、いろいろと食材とメニューの組合せを考えることで、絶好の脳のトレーニングになります。
調理をする際には、全部の料理を出来立ての温かい状態で食卓に並べるには、段取りがとても難しいことに気づくでしょう。
食材の下ごしらえから始まり、ご飯が炊きあがるタイミング、汁物を温める時間、調理器具の選択や調理する順番、食器の用意など、料理はとても頭を使う知的作業なのです。
そのうえ、手を様々に使い、キッチン内を細かく移動するなど、手や指、動線の確認などにより、脳には大きな刺激が与えられ、認知症になるヒマはないでしょう。
女性の方が男性よりかなり平均寿命が長いのは、料理を担当することが脳を活性化することも大きな理由、という識者もいるくらいです。
ベストセラー『思考の整理学』(ちくま文庫)で知られる外山滋比古・お茶の水女子大名誉教授は、95歳の今も現役の作家として活動されていますが、著書の中で、毎日の料理を自ら作っていて、それが健康のためにとてもいい、と書かれています。
外山氏は、普通の散歩は「足の散歩」、料理は「手の散歩」と呼んでいて、どちらも健康にはとても大切、というのが持論です。
「食事」に付随する見落としがちな健康法とは?
「食べる」ことに関連して、食事そのものではありませんが、それと同等か、もしくはそれ以上に大切な健康法として、「歯と口のケア」があります。
まず「歯」については、しっかり自分で噛んで食べられるかどうかが健康長寿のバロメーターとも言われています。
確かに理想的な食事を用意しても、しっかり噛んで、栄養として吸収しなければ意味がありません。
日本歯科医師学会が1989年に始めた「8020運動」というものがあります。
これは、80歳以上で自分の歯を20本以上残そう、という運動ですが、運動の開始当初は20本以上の歯が残っている80歳以上の高齢者はわずか数パーセントしかいなかったそうです。
それが今は、約4割まで増えてきました。人生100年時代になりましたので、歯のケアは大切です。
実は、自分の歯を残してしっかり噛んで食べることは、認知症予防の観点からもとても重要なことです。
もう1つ、見落とされがちな問題として、「誤嚥の問題」があります。
高齢者が肺炎で亡くなるケースが増えているのですが、「風邪をこじらせて肺炎になる」というかつての常識ではなく、今増えているのは「誤嚥性肺炎」で亡くなる高齢者です。
「誤嚥」というのは、漢字の通り、「誤って飲み込む」ことで、食べ物が食道ではなく、気管や肺の方に入ってしまい、そこで炎症を起こして肺炎になってしまうのです。
日本人の死因は、がん、心臓病に続いて、肺炎が第3位になっており、長らくトップ3に入っていた脳血管性疾患を抜いてしまいました。
これは高齢者が「誤嚥性肺炎」で命を落とすことが増えているためです。
高齢者の誤嚥性肺炎は、「飲み込む力」が衰えていることが原因です。
『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』(飛鳥新社)の著者で、気管食道科専門医の西山耕一郎氏によれば、「飲み込む力は鍛えることができる」と提唱しています。
ムセる、咳込む、かすれ声などの症状が出たら「飲み込む力」が衰えているサインなので、のどの筋肉を鍛える「のど体操」をするのがいいそうです。
では、次回は「運動」による健康法に移ります。