2019.04.8

人生100年時代の“ 航海図 ”を描く! 50代から考える「トリプル・キャリア」【第15回】トリプル・キャリアで、定年後も稼ぐための「健康法」 <その6>

監修者
大杉 潤(合同会社ノマド&ブランディング/リ・カレント プロフェッショナルパートナー)

『定年後不安: 人生100年時代の生き方』(角川新書)の著者であり50代キャリアの専門家、
大杉 潤講師による連載コラム!

50代社員が定年後を見据えつつ、モチベーション高く会社に貢献するための「トリプル・キャリア」の考え方を伝授します。


人生100年時代に、「トリプル・キャリア」という人生設計を立てて、長く働き続けるために必要な「戦略的に準備すべき4つのスキル」を順番に解説してきました。

  1. 時間術
  2. コミュニケーション術
  3. 情報リテラシー
  4. 健康法

トリプル・キャリアで、定年後も稼ぐための「戦略的に準備すべき4つのスキル」
総集編冊子はこちらからダウンロードください

 

今回はその4番目「健康法」について、<その6>各論の最後として、「心の健康」について、前回の続きをお話ししていきましょう。

「心の健康」で大切なこと

前回までで「運動」による健康法について、4つの運動の基本についての説明は終了しましたが、健康法の最後に、「心の健康」について触れておきます。

「食事」と「運動」における健康法に加えて、「心の健康」も併せて大切です。「心の健康」を考えるときには、とくに私たちがつねに感じている「ストレス」をどう捉えて解釈するかがポイントになります。

「ストレス」というと職場での人間関係、とくに上司との関係で連想する人が多いと思いますが、実は仕事や人間関係以外でも様々な局面でストレスというのはあるものです。

ただ、そのメカニズムは共通していて、以下の原理でストレスは発生すると言われています。ストレスとは自律神経のバランス(緊張時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経とのバランス)に密接にかかわっていて、ストレスが長期間にわたって過剰にかかると、私たちが本来持っている免疫力が低下して、がんをはじめ多くの病気の原因になる、ということです。

そうすると「ストレスは悪」と思いがちですが、実はそうではなく、一方で適度なストレスは私たちに不可欠な存在で、パフォーマンスを上げたり充実感を感じたりするものです。

つまり「ストレス」は思ったより奥の深いもので、正しく理解し、うまくコントロールするすべを知っておくことはとても大切です。

あなたは「ストレス」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。仕事や対人関係などに不満、不安、苦痛などを感じてイライラしたり緊張したりする様子を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

こうした「精神的なストレス」は、その時に摂っている食事と栄養素、あるいはその時の体調などとも密接に関わってきます。例えば、生活時間が不規則になってしまい、夜遅くまで仕事をして、休日は睡眠不足で朝早く起きることができずに、昼夜が逆転した生活になっている人は、どうしてもネガティブな発想になる、ということが科学的にも証明されています。

よく知られていますが、いわゆる「うつ病」は不眠がきっかけとなって、夜眠れないから朝起きられず、昼夜逆転した生活になって起こるケースが多いのです。

朝、できるだけ太陽の光を浴びることでしっかり目が覚めて、その時にセロトニンというホルモンがたくさん出て、思考が前向きになります。同時に、14時間後の就寝時間に、ちゃんと眠くなるメラトニンが分泌され、質のいい睡眠がとれる仕組みになっているのです。

 

ところが私たちが本来持っている、この自然のサイクルが狂ってしまい、朝十分な光を浴びずにいてセロトニンが分泌されないとどうなるでしょうか?
思考がネガティブになり、目が覚めないまま時間がすぎて、本来の就寝時間になってもメラトニンが出てこなくて、逆に目が冴えて眠れなくなる、という悪循環に陥ってしまいます。

いったん悪循環のサイクルに入ると、精神安定剤という睡眠導入剤を飲み、落ち込んだ気持ちを立て直すのに相当な時間とエネルギーを費やすことになってしまいます。
私も複数の会社で、人事責任者として数多くの「うつ病」社員に接してきましたが、「朝できるだけ早く起きて太陽の光をたくさん浴び、セロトニンを思い切り出すこと」がもっとも大切、というのが結論です。

本人も悪循環のサイクルを断ち切るにはそれしかない、と時間をかけて気づき、やっと実践できて回復するというプロセスを辿るもので、それ以外の方法で「うつ病」から脱したケースはありませんでした。

しかしながら、無理やりに朝叩き起こして太陽光線を浴びさせることはできませんので、いかに自分の意思でそうした行動をとれるかがポイントになるでしょう。

「もう一人の自分」を外から見る

このように「ストレス」を感じたときに、どのように対処していけば、ネガティブ思考の悪循環に陥らずにすむかを予め知っておくことが重要になります。

心の病になる人の特徴として、「ものすごく視野が狭くなる」ということがあります。したがって、私は「もう一人の自分」がいて、それが「現在の悩める自分」を上から客観的に見ているようにイメージすることを勧めています。

心理学の専門用語で「メタ認知」と言いますが、自分自身を外から客観的に見てみる、という発想法が、心に余裕を持たせてくれて、冷静に対処法を考えられるようになります。視野が狭くなるとどうしても「この世の終わり」のような感覚になって、思考がネガティブな悪循環に入ってしまうのです。

 

もう一つ、「ストレス」への対処法として大切なことがあります。それは「コミュニティー」のところでサードプレイスの重要性として説明しましたが、自分で「居心地のいい場所」、つまり別の世界、仲間、繋がりを持っていることです。

誰でも好きなことをしているとき、好きな仲間と一緒にいるときは、気分転換ができるものです。例えば、趣味の音楽やスポーツ、そのほか楽しい仲間と過ごす時間は、活動が終わってみたら、「今まで何を悩んでいたのだろう」と感じるほどスッキリして吹っ切れた、ということはよくあるものです。

頭を使うだけではなく、体を動かしたり、耳から音楽などの刺激を入れたりして、気分転換ができて発想が前向きになるのでしょう。ぜひ、普段から自分なりのストレスに対処する「気分転換法」を見つけておいてください。

 

以上で、「トリプル・キャリア」という人生設計を立てて、長く働き続けるために必要な「戦略的に準備すべき4つのスキル」の最後4番目である健康法が終了です。

次回以降は、このコラムのまとめとして、人生100年時代の人生設計を立てていく際にそのベースとして据える「幸福学」について、述べていくことにします。

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