
人生100年時代の“ 航海図 ”を描く! 50代から考える「トリプル・キャリア」【第18回】「人間関係の幸福」に大切なこととは?
- 監修者
- 大杉 潤(合同会社ノマド&ブランディング/リ・カレント プロフェッショナルパートナー)
『定年後不安: 人生100年時代の生き方』(角川新書)の著者であり50代キャリアの専門家、
大杉 潤講師による連載コラム!
50代社員が定年後を見据えつつ、モチベーション高く会社に貢献するための「トリプル・キャリア」の考え方を伝授します。
トリプル・キャリアで、定年後も稼ぐための「戦略的に準備すべき4つのスキル」
総集編冊子はこちらからダウンロードください
これまで紹介してきた通り、『幸福の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中で、著者のトム・ラス氏(ギャラップ社元幹部)が提唱していた人生を価値あるものにする「5つの要素」は、以下の5つでした。
- 仕事の幸福(仕事にやりがいを持っている)
- 人間関係の幸福(良い人間関係を築いている)
- 経済的な幸福(経済的に安定している)
- 心身の幸福(心身ともに健康である)
- 地域社会の幸福(地域社会への貢献ができている)
この「5つの要素」のうち、筆頭に挙げられている「仕事の幸福」が、その他の幸福(人間関係・経済的・身体的・地域社会の4つの幸福)の根幹をなす「ベースの幸福」であることを前回は説明してきました。
今回は、2番目に挙げられている「人間関係の幸福」について述べてみます。
職場でも家庭でも、よい人間関係を築くことは幸せに密接に関わってくることは誰でも理解できるでしょう。
では、どうすればよい人間関係が築けるのでしょうか。
その基本は、コミュニケーション力にあると私は考えています。
そして、コミュニケーションの第一歩はまず、相手の言うことをよく「聴く」姿勢、すなわち傾聴力です。
実は人間は「人の話をほとんど聞いていない」のが実情です。つまり、自分に関心のあることしか聞いていなくて、それ以外は物理的には聞いている形にはなってはいますが、「聞き流している」状態で、頭にも意識にも残っていないのです。
自分の損得に直接かかわることなら人は関心を持って聴きますが、そうではないと一般論として聞き流してしまうのです。
よい人間関係を築くというのは、自分に関係ないことでも、相手の立場に立って聴く、相手の気持ちや心を聴くということです。
そこから相手を理解し、自分を理解してもらう信頼関係が構築できて、ほんとうのコミュニケーションが始まります。
まずは「傾聴」で、その次に、「質問」による相互理解へと進むのです。
人間関係の基本は「貢献」と「利他の心」
そして相互理解の次のステップとして、コミュニケーションが継続し、さらなる信頼関係に発展させるには、自分が相手にとっていかに「貢献」できるかが大切です。
まずは「見返りを求めずに貢献する」、「与える」ことが、いい関係の基礎になります。
Give & Take ではなく、ますは Give & Give の精神が重要なのです。これは相手のためにという「利他の心」で、これがある人は「幸福度」が高まるという様々な研究結果が発表されています。
日本の「幸福学」の第一人者である前野隆司・慶応義塾大学大学院教授の日本人を対象とした研究によれば、「利他の心」は「幸せの四つの因子」にも入る重要なポイントです。
人間は誰しも、自分の利害を考えてしまうものですが、感謝の気持ちや他人への思いやりの心を持つことによって、幸福感が高まることが明らかになってきました。
また、かつて高額納税者番付が公表されていた時代に、10年連続で高額納税者トップ10に入り続けていた斉藤一人さんは、「ツイてる、ツイてる、ラッキーだ。」、「幸せだ、ありがたい、感謝します。」を口ぐせにして、毎日心からこの言葉を発して成功したと述べています。
さらに、『レバレッジ・リーディング』(東洋経済新報社)ほか多くのベストセラーがある事業家で、ハワイと東京のデュアルライフを送っている本田直之さんは、人脈やネットワークを作っていく際に、「コントリビューション」という言葉を使って、自分が相手に対してどういう貢献ができるのかをまず考える、と提唱しています。
もう一冊、究極の本を紹介します。ディビッド・ハミルトン著『親切は脳に効く』(サンマーク出版)です。親切には、次の5つの「副作用」がある、と説いている書です。
- 親切は、幸せをもたらす
- 親切は、心臓と血管を強くする
- 親切は、老化を遅らせる
- 親切は、人間関係をよくする
- 親切は、伝染する
この本の内容を詳しく知りたい方は、私のブログにある書評を、こちらからお読みください。その上で、実際に書籍を読むことをお薦めします。
http://jun-ohsugi.com/column/sinsetsuhanounikiku
「情けは人のためならず」という諺がありますが、他人への親切や手助けは、直接の見返りではないけれども、巡り巡って必ず自分に戻ってくるものなのです。
人間関係の基本は、まず相手の望むこと、心からのニーズをよく聴いて理解し、その上で、現在の自分は相手に対して何ができて、どういう貢献になるのかをよく考えて実行することでしょう。
コミュニティーの連鎖で大きく広がる人間関係
こうした人間関係を次々と築いていければ、あなたは所属するコミュニティーの中で、いろいろと声をかけられる存在になるはずです。
趣味のコミュニティーでも、専門分野のコミュニティーでも、人脈の豊富な人というのは複数のコミュニティーに所属しています。そうした人から、別のコミュニティーの主催者やメンバーを紹介され、人間関係がさらに広がっていきます。
コミュニティーの中で気の合う人は、問題意識や感覚が自分と近いので、自然と自分に相応しいコミュニティーと縁ができ、次々に新たなコミュニティーへ迎えられる好循環が起きてきます。これを私は「コミュニティーの連鎖」と呼んでいます。
私の場合は、神保町の子どもの本専門店「ブックハウスカフェ」を応援するため、毎月トークショーイベントをプロデュースして、主にビジネス書の著者を招いて、対談やセミナーを行っています。
そこで様々な出会いや交流が生まれ、いろいろなコミュニティーの方々を紹介していただきました。そうしたご縁から、一緒にイベントを開催したり、ビジネスに繋がっていったりすることもあります。
私の場合はとにかくビジネス書が大好きで、毎日1冊、ビジネス書を読んで、その書評をブログに公開していることから、自然と著者や出版関係者の方々とご縁ができ、ブックハウスカフェでのイベントなど、リアルな場においても交流が深まっています。
あなたもぜひ、まずはよい人間関係をひとつずつ作っていくことを心がけてみましょう。トム・ラス氏が言うように「幸福」の大きな要素になってきます。
では次回は、幸せの「5つの要素」の3番目「経済的な幸福」について、詳しく見ていくことにしましょう。
関連セミナー
