人生100年時代の“ 航海図 ”を描く! 50代から考える「トリプル・キャリア」【第20回】「心身の幸福」

2019.07.18 / Written by 大杉 潤(合同会社ノマド&ブランディング/リ・カレント プロフェッショナルパートナー)

『定年後不安: 人生100年時代の生き方』(角川新書)の著者であり50代キャリアの専門家、
大杉 潤講師による連載コラム!

50代社員が定年後を見据えつつ、モチベーション高く会社に貢献するための「トリプル・キャリア」の考え方を伝授します。


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これまで紹介してきた通り、『幸福の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中で、著者のトム・ラス氏(ギャラップ社元幹部)が提唱していた人生を価値あるものにする「5つの要素」は、以下の5つでした。

  • 仕事の幸福(仕事にやりがいを持っている)
  • 人間関係の幸福(良い人間関係を築いている)
  • 経済的な幸福(経済的に安定している)
  • 心身の幸福(心身ともに健康である)
  • 地域社会の幸福(地域社会への貢献ができている)

この「5つの要素」のうち、筆頭に挙げられている「仕事の幸福」が、その他の幸福(人間関係・経済的・身体的・地域社会の4つの幸福)の根幹をなす「ベースの幸福」であることを説明し、前回は3番目「経済的な幸福」について書きました。

今回は4番目に挙げられている「心身の幸福」について述べてみます。

「課題先進国」となった日本の使命は、超高齢社会での「健康法」

世界で類を見ない、人類史上最高速度で進む日本の少子化と高齢化。これまでの日本は、「欧米に追い付け、追い越せ」のスローガンのもと、海外の先進事例を国内に採り入れ、実践することで経済成長や課題解決を成し遂げてきました。

しかしながら今、世界で3番目の経済大国になり、対外純資産は世界でトップ、平均寿命も男女とも世界トップレベルに駆け上がり、もはや手本とすべき海外の先進事例がなくなった状態です。

こうした中で、日本は「課題先進国」として世界の注目を集める存在になっています。とくに大きな関心を集めているのが、急激な少子化・高齢化の同時進行による、以下の重大課題の解決法です。

  • 人口減少による地域の過疎化と財政難
  • 年金・医療財政の悪化と持続可能な制度への改革
  • 75歳以上の後期高齢者の急増と、がん・認知症にならないための健康法

ここでは、3番目の日本人の死因トップとなった「がん」をはじめとする生活習慣病をどのように防ぐか、また介護におけるもっとも大きな原因となっている「認知症」(とくにアルツハイマー型認知症)をいかに防ぐかについて述べていきます。

 

私は昨年刊行した『定年後不安 人生100年時代の生き方』(角川新書)において、定年後の3大不安(「カネ」「孤独」「健康」の3K)に対する戦略的な準備の一つとしての「健康法」において、加齢による体力面などの衰えを前提にした「ヘルシー・エイジング」という考え方をベースに準備することを薦めてきました。

東京大学高齢社会総合研究機構が提唱しているコンセプトで、とても大事なポイントを網羅しているものです。ただ、より積極的に、私たちの健康を考え、自ら行動することにより「老い」に抵抗し、人間が本来持っている力を高める方法を提唱している書籍2冊に出会い、私も考え方を変えつつあります。

体温を上げることの大切さ

科学技術の進化、とくに医療分野における進歩はビッグデータの活用などにより、飛躍的な速度でなされつつあり、これまで解明されていなかったメカニズムが、次々に明らかになっています。

その中で私がとくに感銘を受けた本が、『体温を上げると健康になる』(齋藤真嗣著・サンマーク文庫)です。齋藤氏は、米国医師免許を持つニューヨーク州医師で、専門は免疫力によるがん治療、アンチエイジングです。単行本が2009年に出版され、70万部のベストセラーとなった本の文庫版です。

体温が上がれば、内臓脂肪の解消に絶大な効果があり、基礎代謝が上がって多くのエネルギーを消費する体になります。高体温は免疫力を上げる「健康の源」で、「海馬」という記憶能力に関わる場所の血行も良くなり、記憶力低下や認知症の予防にもなるのです。

体温上昇のメリットは体の様々な場所で劇的な変化を起こすことで、血行が良くなって血流量が増えることになるため、体を構成する細胞に十分な酸素と栄養が供給される、その結果、筋肉が増えやすくなったり、胃腸の蠕動運動が活発になったりもします。

 

体温が1度上がるだけで、新陳代謝が活発になるので、細胞が若返り、肌も美しくなるなど、体全体にメリットがあるのです。

では、体温を上げるにはどうすればいいか。

著者の齋藤先生によれば、1日に1回、浴槽に入って体を温めること、そして筋肉量を増やす運動を毎日行うことです。

これを「体温アップ健康法」と呼んでいますが、具体的な運動法などを知りたい方はぜひ、齋藤先生の著書をお読みください。

この本には、ストレスがいかに自律神経のバランスを崩し、低体温にしてしまうかというメカニズムも書かれていて、ストレスと「がん」との関係も、この本でよく理解できました。

健康長寿のための医学とは?

もう一冊、私が最近感銘を受けた本が、『健康長寿のための医学』(井村裕夫著・岩波新書)です。井村先生は、京都大学医学部長・京都大学総長を歴任された、日本の科学技術政策にも指導的な立場で関わる内分泌・代謝学の第一人者です。

この本に書かれているポイントは以下の2点です。

  • 人生の全体を通して健康に注意する「ライフコース・ヘルスケア」
  • 個人個人の遺伝子の特徴に応じた「個の予防医学」である「先制医療」

これまでは、生活習慣病とよばれる加齢に伴って発症する慢性疾患の多くは、成人して中高年になってから予防する「予防医学」の考え方で、生活習慣を改善するなどの方策を医療現場では行ってきました。

さまざまな遺伝子研究や膨大なデータの蓄積により、潜在的な病的状態は、実は胎生期から、さらに少年期、青年期を通して徐々に進行すると考えられるようになってきています。したがって、人生の早い時期から、人生の全体を通して健康に注意する「ライフコース・ヘルスケア・アプローチ」が重要になっているのです。

また、発症する前に個々に予防するという「先制医療」という考え方が、とくに発症してからでは治療ができない「神経系変性疾患」では必要だとわかってきました。

その典型はアルツハイマー型認知症です。認知症は長い年月をかけて、脳内に特殊なタンパク質が蓄積して発症すると推定されており、その兆候は早くから特定できます。また、遺伝による影響もあると言われています。

そうした観点から、団塊世代が間もなく後期高齢者となる日本では、パーキンソン病など他の神経系変性疾患も含めて、「先制医療」が注目されているのです。
詳細については専門的な内容を分かりやすく解説している井村先生の著書をぜひ、お読みください。

では、次回は5番目である「地域社会の幸福」について述べることとします。

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