2019.08.2

人生100年時代の“ 航海図 ”を描く! 50代から考える「トリプル・キャリア」【最終回】「地域社会の幸福」

監修者
大杉 潤(合同会社ノマド&ブランディング/リ・カレント プロフェッショナルパートナー)

『定年後不安: 人生100年時代の生き方』(角川新書)の著者であり50代キャリアの専門家、
大杉 潤講師による連載コラム!

50代社員が定年後を見据えつつ、モチベーション高く会社に貢献するための「トリプル・キャリア」の考え方を伝授します。
今回は、1年を超える本連載の最終回となります!


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これまで紹介してきた通り、『幸福の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中で、著者のトム・ラス氏(ギャラップ社元幹部)が提唱していた人生を価値あるものにする「5つの要素」は、以下の5つでした。

  • 仕事の幸福(仕事にやりがいを持っている)
  • 人間関係の幸福(良い人間関係を築いている)
  • 経済的な幸福(経済的に安定している)
  • 心身の幸福(心身ともに健康である)
  • 地域社会の幸福(地域社会への貢献ができている)

この「5つの要素」のうち、筆頭に挙げられている「仕事の幸福」が、その他の幸福(人間関係・経済的・身体的・地域社会の4つの幸福)の根幹をなす「ベースの幸福」であることを説明し、前回は4番目「心身の幸福」について書きました。

今回は最後の5番目に挙げられている「地域社会の幸福」について述べてみます。

「地域社会の幸福」は自ら参加することで実現

他の4つの幸福と比べて、5番目の「地域社会の幸福」は実感できない人が多いかも知れません。しかし、水や空気のような、生きる上で必要不可欠なものの安全性が十分に確保されていないと、人生に重大な悪影響を及ぼす、と『幸福の習慣』では解説されています。

例えば、自分が住んでいる家の周りを夜でも安心して1人でも歩けることや、自分が危害を加えられたり、突然襲われたりするような怖れなく暮らせることも、日々の生活における重要で基本的な要素の一つなのです。

アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどの欧米先進国でさえ、3人に1人は、自分の家の周辺を夜1人で安心して歩けないと感じているそうです。

そうした中で、必要最低限の安全と安心感の次に重要なのは、住む地域が自分の性格や興味関心、家族のライフステージなど、自分や家族が求める条件に合うかどうか、という問題です。

さらに付け加えると、自分が住む地域社会をより良くするための活動に参加することで、あなた自身の幸福度は向上するのです。人間は人のために行動すれば、本当に幸せになることは広く知られています。

では、地域社会の幸福度が非常に高い人と平均レベルにある人の違いは何でしょうか?

最も大きな違いは、自分の住む地域に「お返し」をしているかどうかという点だ、と著者のトム・ラス氏は指摘しています。

自分が地域にどのような貢献ができるかを考える際に、幸福度の高い人は、自分が属する地域やグループに対して何かを「与えている」ということではなく、そもそも地域社会から与えてもらったもの(自然の豊かさ、水や空気、犯罪の心配がない安全・安心な暮らし)に対して、「お返し」をしているという意識を持って、地域社会に関わっている、ということです。

利他的な行動は習慣化する 

「経済的な幸福」においても、他人に対して果たした貢献が、めぐり巡って自らに返ってくることを説明しましたが、誰かのために役立つ行動をして地域社会とつながりができると、自己中心的な世界から解き放たれる、ということです。

一般に、私たちは2つの選択肢が用意されている場合には、あらかじめ設定されている選択肢、すなわちシステムで言えば「初期設定」されている選択肢を選ぶ傾向がある、と言います。

地域活動への参加についても、はじめから「初期設定」しておき、自らの強い意志ではなく、生活習慣の中で自然と参加し、誰かに貢献している状態をつくり出すことが大切です。

例えば、臓器提供、ボランティア活動、寄付行為など、自分から動き出そうとしなくても、自動的に参加できる仕組み、すなわち「初期設定」をしておくとこで、利他的な行動を習慣化することができます。

これは「地域社会の幸福」を目指す場合に大きなポイントになる点で、水や空気や安全など、私たちは気づかないままダダでその恩恵を享受しているので、改めて意識することなく、「お返し」としての地域社会での活動に参加し、貢献する仕組みが必要なのです。

以上、『幸福の習慣』(トム・ラスほか著・ディスカヴァー・トウェンティワン)にて紹介されている人生を価値あるものにする「5つの要素」について、解説してきました。

人生100年時代を迎えた現在、定年後の長い期間を、「幸福学」の考え方を取り入れながら戦略的に人生設計を作っていくことの重要性は、理解いただけたのではないかと思います。

最後に、50代から「トリプル・キャリア」という考え方を知り、生涯現役の人生設計を立てることで、皆さまが真に「幸せな人生」を送ることをお祈りして、本コラムの結びといたします。長い間、連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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