24卒新入社員は「どこか他人事」 傾向&育成ポイント解説
「新入社員は研修/OJTを受けている当人なのに、どこか他人事のような態度に見える」
「今年の新入社員は素直だけどつかみどころがない」
「”なんか良いこと”は発言できるが、実が伴わない」
24卒新入社員と接する中で、そんなモヤモヤした感覚はありませんか。
この記事では、4月の導入研修で数多くの24卒新入社員と相対した中で見えてきたモヤモヤ感の正体=彼らの傾向と育成ポイントを解説します。
- 監修者
- 鷲尾 大樹
目次
24卒新入社員の傾向は「どこか他人事」?
24卒新入社員の傾向として「一歩引いて物事を見るのが得意」「真面目で素直」といったポジティブな面が挙がる一方で、「研修内でのディスカッションが表層的な内容にとどまる」「お客様意識が拭えない」といったネガティブな面も見られました。
育成に携わる側からすると、総じて「どこか他人事」のような印象を受けることが多いでしょう。
彼らの振舞いに対して「当事者意識が欠けている」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
私達リ・カレントでは、24卒新入社員の特徴を次の3つの観点で捉えています。
思考・状態:自分にも会社にも期待しない
スタンス:できない自分から目を背けたい
能力:気づきは多いが学びは浅い
本記事では24卒新入社員のこうした傾向の背景と、3つの特徴、育成ポイントを順に解説していきます。
背景:実態なき「べき論」が当事者意識を阻害している
言ったことはしっかりやるし、素直で真面目なように見えるどこかお客様感が拭えない……。
24卒新入社員の振舞いが他人事のように見える背景には、彼ら自身の持つ実態なき「べき論」が当事者意識を阻害している可能性があります。
研修においても、仕事の現場においても、「こうであると望ましい」というマナーや規範は存在すれど「こうでなくてはならない」というルールはほとんど存在しません。
むしろ、変化する状況に応じて柔軟に対応することが求められる場面が多いでしょう。
しかし、新入社員の多くは、「新入社員とはこうであるべき」、「社会人とはこうであるべき」といった固定観念に基づいて行動を“選ぶ”感覚を持っています。
しかも、それらの固定観念が、人事や研修の指示・指導などではなくインターネットやSNSなどから得られる情報に大きく影響されていることには無自覚です。
つまり、自分自身の意志で行動を決定しているのではなく、外部から得た情報に基づいて行動しているがゆえに彼らの振舞いには「どこか他人事」の印象が生まれ、新入社員自身もまた「自らの意思で行動を決めた」という当事者意識を持ちづらくなっているのです。
このような行動は、研修や日常の仕事の場面で顕著に見られます。
次の章からは「思考・状態」「スタンス」「能力」の観点から、24卒新入社員の特徴をさらに解説します。
4月導入研修で見えた3つの特徴
思考・状態:自分にも会社にも期待しない
24卒新入社員には、周囲に遅れを取らないように、けれど悪目立ちもしないように“普通”でいることを良しとするような言動がよく見られます。
その根本には、彼らの仕事に対する期待値が低く、自己評価も控えめであることが挙げられます。
彼らは出世や高収入、成功に対する野心を持っておらず「そこそこ頑張って、うまくやっていければいい」と考えている場合が多い様子です。
言い換えれば、仕事を自己実現の手段というよりも、プライベートを充実させるためのお金を稼ぐ手段と捉えているとも言えます。
このような新入社員は、仕事に対する期待値を低く設定し、自己評価も低くなりがちです。
ここ数年の新入社員傾向として特筆すべき点の一つとして、自分を「子ども」と見なし、会社や上司を「大人」として頼りにする傾向があります。
彼らは「大人」である会社や上司が「子ども」の自分に指示を出し、支援してくれることを無自覚に期待しています。
この背景には、新入社員が会社や人事、上司に対して完璧さを求めるという誤解があります。
例えば、配属が希望通りでなかったり、急遽スケジュールが変更されたりした際に、理不尽だと怒りや不満を示す新入社員が皆さんの周りにはいないでしょうか。
これも、彼らが会社や上司に対して過剰な期待を抱いているためです。
また、24卒新入社員は仕事に対して大きな期待を持たない反面、遅れを取りたくないという気持ちを強く持っています。
彼らは「普通でいたい」、「グループから遅れたくない」という感覚を持っており、一部の人事や上司・先輩からは成長意欲として捉えられることがあります。
しかし、この成長意欲は、ナンバーワンを目指すというよりも、集団から遅れを取りたくないという消極的な動機に基づいています。
彼らは、自分が目立たずに、周りと同じペースで進むことを重視し、そのために必要最低限の努力をします。
彼らのこうした行動をいわゆる「成長意欲」として捉えていると、一定以上のラインを超えないようにする彼らの振舞いに、肩透かしを食らったように感じるかもしれません。
スタンス:できない自分から目を背けたい
できない自分にがっかりしないよう、予防線を張っておく。
そんな言動も24卒新入社員の特徴の一つです。
彼らは自己評価が低いため、今よりも自他ともに評価を下げたくないという心理が働いています。
このため、失敗を避けるために予防線を張ったり、意図的に手を抜いたりする傾向があります。
具体的には、言われたこと以上のことをやらない、細かい確認を頻繁に行うといった行動が見られます。
彼らは、失敗して怒られること以上に、自分自身が失敗によって傷つくことを恐れているのです。
一生懸命やってミスをすることで、自分を「できない人間だ」と感じたくないため、リスクを避ける行動を取ります。
育成側の視点で見ていると、「思考・状態」の章で先述した「周囲に遅れを取らないように、けれど悪目立ちもしないように“普通”でいることを良しとする」特徴と相まって、能動的な行動は少ないように感じられるでしょう。
能力:気づきは多いが学びは浅い
「抽象的な会話には長けているが、アウトプットの内容は浅い」「具体と抽象の行き来が苦手」といった特徴はここ数年の新入社員によく見られますが、24卒新入社員においても顕著です。
よくわからないことを考えるのはストレス。指示もケースワークもなるべく具体的にわかりやすくしてほしい。
そんな言動を、育成側の皆さんもよく目にしているのではないでしょうか。
新入社員は多くの「気づき」を得るものの、それを深く学びに繋げることが苦手です。
彼らは抽象的な課題や未来のビジョンを考えることに対してストレスを感じる傾向があり、それゆえ課題や講義に対して自分ごと化して意見を述べるのが苦手な方も多いでしょう。
育成側が彼らのこうした特徴に “合わせすぎない”ことも重要です。
「思考・状態」の章で先述したように、新入社員が自分たちを「子ども」と認識し、施しを受ける存在だと考える思考傾向があります。
研修や育成上の課題を提示する際に、「私は営業じゃないので」「私は事務職じゃないので」といった理由で、自分に直接関係のない課題を遠ざけることがあります。
このような態度は、思考力や知性の成長を妨げます。
社会人として必要なスキルは、抽象的な概念を具体的な事象に置き換える、あるいはその逆を行うことです。
つまり、具体的なケーススタディに頼りすぎず、一般化された問題から自分の状況に当てはめて考える力が求められます。
24卒新入社員の心理傾向:生存戦略としての「大人しさ」
ここまで24卒新入社員の、特にネガティブな特徴に着目して解説を進めてきました。
では、こうした特徴を持つ彼らをどのように育成していけばよいか。
それを考える上では、彼らの特徴の背景理解が欠かせません。
24卒に限らず近年の新入社員=Z世代には、過剰なまでの「大人しさ」という特有の傾向が見られます。
これは彼らにとって一種の生存戦略であり、彼らの安定志向が背景にあります。
ここでいう「安定志向」は以前の世代が求めた経済的安定とは異なり、心理的安定が重要視されています。
具体的には、心や体がリスクにさらされず、不安定な状態にならないことが彼らにとっての安定です。
この心理的安定を求める背景には、彼らが育った環境があります。
彼らZ世代は、SNSの普及により失敗や目立つ行動が炎上や批判の対象となるリスクが高まった中で育ってきました。
そのため、彼らは目立つことやリスクを取ることを避け、無難で安全な行動を取る傾向が強くなっています。
周囲に同調し、自分の意見を控え、過度な自己主張を避けることで、目立たずに安定を保とうとするのです。
また、新入社員たちは働くことに対しても無理をしたくないという姿勢が強く見られます。
彼らにとって働く目的は、主に報酬を得ることにあります。
これは、働くことが単なる労働力の提供と報酬の交換であるというバイト感覚に近いものです。
したがって、余計な努力や頑張りを避け、最低限の仕事をこなして給料を得ることが合理的だと考えています。
特に新入社員の段階では、インセンティブが少ないため、彼らからすれば頑張る動機が弱いのです。
さらに、不安を避ける傾向も顕著です。
自己効力感や自己肯定感が低い彼らは、曖昧な状況や成果目標に対する自信がなく、不安を感じやすい状態にあります。
このため、心理的な安定を提供する企業、すなわち急な仕事の割り当てや過度な残業がない職場を好みます。
こうした点から、新入社員の「大人しさ」は、リスク回避と安定志向から生まれたものであり、彼らの心理的安全性を確保するための戦略と言えます。
育成のカギを握る2つのポイント
ここまで述べてきた内容を踏まえて、24卒新入社員育成のポイントは大きく2つです。
- 誤解を解く
- 会社・仕事の意味づけを変える
それぞれを詳しく解説していきましょう。
24卒新入社員育成のポイント1.誤解を解く
まず1つ目のポイントは「誤解を解く」です。
新入社員の素直で真面目な態度の裏にある「大人しく受け身でいる」という生存戦略。
これは、新しい環境に順応するための自然な反応です。
しかし、これが続くと、受動的な姿勢が固定化し、自身のキャリア形成において大きなリスクとなります。
新入社員には、自分の仕事に対する誤解を解き、主体的に取り組む姿勢を持つことの重要性を伝えましょう。
世の中のリアルな状況を伝え、ただ受け身でいることのリスクを理解させることが必要です。
24卒新入社員育成のポイント2.会社・仕事の意味づけを変える
2つ目のポイントは「会社・仕事の意味づけを変える」です。
どこまで行っても、仕事を通して給料を得るという構造は変わりません。
しかし、仕事にはその他の意味もあります。
新入社員には、仕事が単なる対価を得るための労働ではなく、自分の人生に大きな影響を与えるものだと理解させることが大切です。
今の時代でキャリアを描くことの難しさは、社会的な正解・成功がないからこそ自分でしか正解を作れないという点にあります。
価値観や選択肢が多様化しているゆえに、自己決定が重要となり、同時に難しくなっているのです。
育成側の私達は、24卒新入社員に対してその難しさを伝えたうえで、彼らが自身の生き方・働き方に自己決定権を持ち続けられるよう育てていく必要があります。
まとめ
この記事では、4月の導入研修で数多くの24卒新入社員と相対した中で見えてきたモヤモヤ感の正体=彼らの傾向と育成ポイントを解説しました。
24卒新入社員の傾向は「どこか他人事」。
「一歩引いて物事を見るのが得意」「真面目で素直」といったポジティブな面が挙がる一方で、「研修内でのディスカッションが表層的な内容にとどまる」「お客様意識が拭えない」といったネガティブな面も見られました。
記事内では、24卒新入社員の特徴を次の3つの観点で紹介しました。
思考・状態:自分にも会社にも期待しない
スタンス:できない自分から目を背けたい
能力:気づきは多いが学びは浅い
また、こうした特徴の裏にあるのが生存戦略としての「大人しさ」です。
24卒に限らず近年の新入社員=Z世代には、過剰なまでの「大人しさ」という特有の傾向が見られます。
彼らZ世代は、SNSの普及により失敗や目立つ行動が炎上や批判の対象となるリスクが高まった中で育ってきました。
そのため、彼らは目立つことやリスクを取ることを避け、無難で安全な行動を取る傾向が強くなっています。
これらを踏まえ、最後の章では24卒新入社員の育成ポイントを2つ紹介しています。
- 誤解を解く
- 会社・仕事の意味づけを変える
24卒新入社員の傾向は、リスク回避と安定志向から生まれたものであり、彼らの心理的安全性を確保するための戦略とも言えます。
同時に、彼らがその受動的な姿勢を固定化させてしまうと、自分でしか正解を作れない今の時代でキャリアを描くことが難しくなっていきます。
育成側の私達は、24卒新入社員に対してそのリスクや難しさを伝えたうえで、彼らが自身の生き方・働き方に自己決定権を持ち続けられるよう育てていく必要があります。
本記事の内容が、24卒新入社員の育成に関わる皆様の参考になれば幸いです。