2024.12.6

2025年卒新入社員傾向予想 :「冒険はしたくない安定志向」

4月に入社してくる2025年卒新入社員。

10月に入って内定式を終え、新人育成担当者の方からこんなご相談が増えています。

「内定者が、成長機会は“会社がくれるもの”って思っているように感じます。
入社に向けてのサポートをしているはずなのに、まるでこちらからの“サービス提供”みたいになっている気がします。

「こちらから『まず挑戦してみることが大事です』というメッセージを伝えているのですが、“これをやったら、私は何が得られるんですか?”って、彼らは細かく聞いてくるんです。
自分で考えて動いてほしいのに、どう伝えたらわかってくれるのでしょうか?」

こうしたお悩みを受け、リ・カレント 若手人材キャリア開発室「ワカテカ」では25卒新入社員の就業に関する意識などから、新入社員育成担当者が知っておきたい傾向を予想しました。

鷲尾 大樹
監修者
鷲尾 大樹
略歴
リ・カレント株式会社 若手人材キャリア開発室「ワカテカ」室長

監修者詳細

25卒内定者の「仕事に関する意識」

25卒大学生を対象にした就職意識調査によると、安定している会社に行きたい(49.9%)・給料が良い会社に行きたい(23.6%)と答えた人が過去最多。

一方で、ノルマがきつそうな会社に行きたくない(38.9%)・転勤が多い会社に行きたくない(30.3%)と答えた人も過去最多ということが明らかになっています。

※出典:マイナビキャリアリサーチLab「2025年卒大学生就職意識調査」(2024)

安定志向は年々強まっており、給与など外的報酬面の他、ワークライフバランスを重視する傾向があると言えます。

25卒新入社員傾向予想:リスクを避けるための「貰い手意識」

この結果から、リ・カレント 若手人材キャリア開発室「ワカテカ」では25卒新入社員は“まだ見ぬリスク”を避けてリターンを得るための「貰い手意識」が強く表出するとの予想を立てました。

コストを減らしてコスパ良くリターンを得たい。
自分の体力気力を使うことを極力減らして、多くの給料や成長を得たい。
それには自ら機会を取りに行くよりも、会社や上司から”もらってしまう”のがもっとも安全な選択肢だろう。

そうした思考による「貰い手意識」から、新入社員導入研修などの場において「まずはやってみよう」「失敗から学ぼう」という育成スタンスは、25卒新入社員のリスク警戒を強め、行動をむしろ狭めてしまう可能性があります。

安定志向が強まっている思考背景

ただ、強く意識しておきたいのは「25卒新入社員に悪気があってそうした思考をしているのではない」という点です。
彼らのリスク警戒・安定重視志向は成長してきた環境や時代の変化によって形作られている部分が大きいとワカテカでは考えています。

それは、物価上昇・実質賃金の低下といった経済面の変化はもちろん、次の2つの思考が背景になっていると考えられます。

  1. 変化の激しい時代で育ってきたことによる自己効力感の低さ
    25卒新入社員は、大学入学をコロナ禍の緊急事態宣言下で迎え、閉鎖的な状況で学生時代の後半を過ごしてきた世代です。自身を取り巻く社会変化に対して「自分ではどうにもならない」適応を余儀なくされた経験を肌身に知っていることで、まだ見ぬことや未知の困難に対して「自分ならできる」と考える力が低いと言えます。
  2. 社会的な正解・成功がないため、自分でしか正解が作れない
    価値観が多様化し、さまざまな情報にアクセスできるようになった反面、SNSやインターネットを開けばキャリア(さらに大きな括りで言えば「生き方」)の比較対象や選択肢が無数に提示される中で育ってきたデジタルネイティブ世代。だからこそ、溢れある選択肢の中から自分の正解は自分で決めなければならず、リスクが取りづらい思考に偏りやすくなっていると言えます。

25卒新入社員育成 2つのポイント

では、「まだ見ぬリスクを避けたい安定志向」が予想される25卒新入社員に対して、育成担当者はどのように4月の導入研修を準備すればよいのでしょうか。

リ・カレント 若手人材キャリア開発室「ワカテカ」では、自ら行動するメリットとメソッドを伝えたうえで、彼らが経験から学びを応用するためのサポートをするための2つのポイントが重要だと考えています。

  • 自律的キャリアの描き方を伝える
  • 将来への投資として内省を習慣づける

それぞれについて解説していきましょう。

25卒育成ポイント①自律的キャリアの描き方を伝える

一つ目のポイントは、自身にとっての正解=自律的キャリアの描き方を伝えることです。

「自律的」というワードは近年、社員育成のゴールイメージの一つとして用いられることが増えてきました。
この言葉が指すイメージを個人視点で見ると、変化が激しい時代で何があっても「自分らしく」行動できることが市場価値を高めることにも繋がるといったもの。
組織視点で言えば、社会の多様性に伴って、自身の考えで行動を起こせる人材となってもらうことで変化に対応する力を育てたいという考えがあります。

両者に共通するのは「自身の考え・価値観」が重要な判断軸となるという点です。

しかし、25卒新入社員は自分の考えを表に出すことが増えて出会ったり、そもそもその元となる価値観が自身の中で言語化されていなかったりすることが予想されます。

導入研修では、自身の価値観を軸にして判断・行動することがどんなメリットを生むのかを伝えたうえで「経験の多層化」を促すことが効果的です。

ライフ、ワーク、ジョブなどさまざまな観点で自身の経験から軸となる価値観を見出していくトレーニングを、導入研修のうちから取り入れていくのがおすすめです。

▶経験の内省・言語化を促す内省力強化「メタ・リフレクション」研修はこちら

25卒育成ポイント②将来への投資として内省を習慣づける

二つ目のポイントは、先述した内容と一部重なりますが、自身の経験から成功パターンを導くための内省を習慣づけることです。

25卒新入社員が自発的な行動をリスクと捉えるのは、自身の中で成功経験が少ないことで“未知のもの=リスク”という意識が強くなりやすいことが原因の一つです。

自身の経験を振り返って、学び・気づきを言語化する内省を習慣づけることで、一つの経験を多様な場面で応用できる成功パターンに変える方法を身につけることができます。

導入研修に日報や振り返りシートを取り入れている企業もあるかと思いますが、25卒新入社員に向けてはぜひ新入社員がそれぞれ個人で記入するだけでなく、グループ内で「どんなことから何を学んだか」「それを他の場面で活かすならどう使うか」を共有・意見交換する時間を設けることがおすすめです。

同じ経験を自分とは違った目で捉えている他者の価値観に触れることで、自分の考え方・ものごとの捉え方が自身で認識しやすくなります。

▶経験の内省・言語化を促す内省力強化「メタ・リフレクション」研修はこちら

まとめ

本記事では、25卒新入社員の就業に関する意識などから、新入社員育成担当者が知っておきたい傾向予想をご紹介しました。

安定志向の強い25卒新入社員は“まだ見ぬリスク”を避けてリターンを得るための「貰い手意識」が強く表出することが考えられます。

新入社員導入研修などの場において「まずはやってみよう」「失敗から学ぼう」という育成スタンスは、25卒新入社員のリスク警戒を強め、行動をむしろ狭めてしまう可能性があります。

リ・カレント 若手人材キャリア開発室「ワカテカ」では、自ら行動するメリットとメソッドを伝えたうえで、彼らが経験から学びを応用するためのサポートをするための2つのポイントが重要だと考えています。

  1. 自律的キャリアの描き方を伝える
  2. 将来への投資として内省を習慣づける

25卒新入社員がまだ見ぬリスクを恐れて行動を足踏みしてしまう前に、育成担当者がすべきサポートは行動のきっかけを作ることです。

彼らの主体的な言動を期待して待つのではなく、アクションを起こす場面を意図的に設計することをおすすめします。

本記事が新入社員育成に関わる皆様のお役に立てましたら幸いです。

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