CASE
個人と組織も未来を変えていく
人材開発担当者様の挑戦ストーリー
OJT担当者を独りにしない
職場全体が共に育つ
「共育職場」を浸透させる
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KNT-CTホールディングス株式会社
人事部 鈴木様
西川様 増田様
KNT-CTホールディングス株式会社様にて、OJT担当者研修および新入社員研修を企画・実施しました。全8回の研修をすべてオンラインで開催し、グループ全社にむけて、OJT担当者・新入社員それぞれの研修を同時期に開催しました。
コロナ禍において、在宅勤務や休業状態が続いた2020年。新入社員にとって、彼らに対する研修だけでなく、OJT担当者の新入社員への関わり、OJT担当者への上司からの関わりが重要な局面にありました。上司と部下が上下関係でなく「ヨコの関係」をつくって一緒に成長すること、新入社員育成においてOJT担当者を独りにせず、職場全体が共に育つ「共育(ともいく)職場」のメッセージを、研修の場にとどまらずいかに現場に浸透させるかが課題でした。
今回のインタビューではリ・カレントが実施した研修によって期待される変化や、今後の育成方針、会社として求めたい人材像についてお伺いしました。
教えられる側の新入社員は「ヨコの関係」を求めている
-OJT担当者研修・新入社員研修をリ・カレントに依頼いただくまでの経緯を教えていただけますか?
HR関連 のカンファレンスでリ・カレントさんを初めて知り、その時「今どき新人の5つのメンタリティ」について教えていただいたことがきっかけでした。新入社員も含め、最近の若手社員の傾向を熟知されている点を魅力に感じて、依頼しました。
-OJT担当者・新入社員の育成に対してどのような課題を持っていましたか?
私たちから見れば新入社員とOJT担当者は同じくらいの世代に見えていますが、新入社員とOJT担当者同士ではお互いに違って見えていると思うのです。世代間理解を的確に行って、それぞれに対し適切なメッセージを伝えることが課題でした。
弊社の社員はかつて「野武士」と呼ばれた集団で、トップダウンでがつがつ営業をする環境で育ったので、管理職層は今もそういった感覚を持っています。上司と部下という「タテの関係」が当たり前で、部下は指示を出して素直に行動するものと思っていますが、今の若手社員がそのような指導で育たないことに問題意識を持っていました。
OJT担当者研修を担当いただいた森講師からは、「ヨコの関係」の概念を教えていただき、私たちの「タテの文化」が自覚されました。教えられる側の新入社員は「ヨコの関係」を求めているということがOJT担当者に伝わったのがよかったと思います。今後はOJT担当者だけでなく、OJT担当者の上司にもこの考え方を伝えていくことが課題ですね。
OJT担当者・新入社員それぞれで共通言語を作ることができた
-OJT担当者・新入社員研修、それぞれ実施してみていかがでしたか?
9月に両研修を全てオンラインにて実施しましたが、まずオンラインで研修をするのがグループ全社で初めてだったので、運用面で大きな不安がありました。新入社員研修に関しては、もともと入社後の半年間の振り返りの場だったのですが、4月に入社してから休業状態で、グループ各社によって始まった月がばらばらだったり、そもそもスタートを切れていたかも分からない中でした。入社してから一度も顔を合わせたことがないことからも、どう進めていいか不安がありました。リ・カレントさんは他社様でオンライン研修を実施された実績がすでに多数あって、運用面でサポートいただけたことが大変心強かったです。
OJT担当者研修では、森講師がなんでも受け止めるスタンスで進めていただいたことで、OJT担当者にとっても思っていたことをはきだし、共有する場になったのは貴重だったと思います。
ヨコの関係を伝えるために、「二人で」や「二人三脚で」という言葉で何度も声掛けをされていました。とはいえ、コロナでお互い会えていない中、まずは関係づくりから取り組むこと、そのために具体的にどんな言葉を使うといいのかを教えていただきました。
また、OJT担当者研修と新入社員研修を同じ研修会社さんに依頼するのも初めてでしたが、結果的によかったと感じています。ちょうど二つの研修を同時期に開催したこともあり、OJT担当者・新入社員それぞれで共通言語を作ることができました。OJT担当者研修で学んだ新入社員への声掛けのしかたや評価ポイントと、新入社員研修で学んだ内容が異なっていると、新入社員はやるべきことをやっているのにOJT担当者から評価されないという事態が起きかねません。お互いが研修でどんなことを学んでいるか共有できたことで、認識の齟齬がなく進められたのはよかったです。
-オンラインでの研修は実施していかがでしたか?
始める前は不安もありましたが、参加者が戸惑う場面もほとんどなくスムーズに進みました。また従来の集合研修では東京・大阪2拠点に全国のグループ会社が集まって実施していて、西側の会社と東側の会社でいつも同じグループ会社の組み合わせになっていたのですが、オンラインだと場所にとらわれないので、全国のメンバーが集まれたことはいい情報共有の場になったのではと思います。
課題だと感じたこととしては、オンラインだと集合研修と違って休憩時間に雑談ができないので、関係づくりのために雑談の場も意図的に作っていく必要があるという点です。
-研修の事前・事後に動画やアンケートを活用したことについて、どのような変化がありましたか?
事前に動画で学べるコンテンツを用意していただいたり、事後にアンケートを活用したことで社員の現状把握がより明確にできたと思います。特に新入社員にとっては、動画のように繰り返し見られるものがあったほうが心強いと思います。
また、オンラインの研修で何をやるか分からない不安があったと思いますが、事前に動画があったことで、安心して参加できたのではと思います。
小さな成功例を作りながら、「共育職場」に近づけていきたい
-今後どのような人材育成、人材像を求めたいと思われますか?
当社の理想の人材像を「接客スタンダード」としてまとめ、冊子にしてグループ全社員に配布しています。私たちのグループの社員として必要なマインド・スキルを定め、人材育成もこの「接客スタンダード」に基づいて企画しています。
接客スタンダードでは、「当社では刻々と変わる社会環境、ビジネス環境の中で、どんなときも個々の知力、能力、マインドを発揮し続け、お客様に心の満足を与えることができる人材を育成していきます」と育成方針を謳っています。
今後の研修の方向性として、研修が現場と切り離されたものにならないようにということは心がけたいです。研修の場でできたことが日常の場でできるようにするためには、日々の上司のかかわりが重要になってきます。今後は上司からの関わりを変えていくために、管理職にも「ヨコの関係」や「共育」のメッセージを伝えていきたいです。
一部の研修を、全員参加ではなく手上げ制にしていますが、研修に参加したい新入社員はそれぞれの事業所で上司と相談して参加してもらうようにしました。すると、参加した社員のアンケートの中に「課所長と相談して、後押しをしてもらい、自分でも有益だと思って期待してきた」というフィードバックがあり、導入部分で少しかかわりを持つだけでやる気が全く変わってくることに驚きました。
「社内コミュニケーションの量と質をあげる」、「上司・部下間の定期的な会話の定着」、「経験や周囲のサポートを通して若手が自ら育つ力の強化」の3つを育成施策として掲げていますが、 これらの地道な積み重ねが必要だと実感しています。小さな成功例を作りながら、「共育職場」に近づけていきたいです。
-2020年は新型コロナウィルスの流行と自粛要請があり、例年と異なる環境の中でしたが、職場のコミュニケーションに変化はありましたか?
外出自粛が続いた時期はやはり旅行が控えられ、例年に比べて業務量が少なくなったことで、普段忙しい管理職も時間の使い方や部下とのコミュニケーションを考える余裕が生まれたと思います。人によっては、新入社員育成をOJT担当に任せきりにせず、チーム全体で新人をみる関わりをしています。一方、まだ昔の「野武士」のままで、例えば研修の後押しの言い方ひとつとっても「いい研修だから行ってきなさい」とトップダウンな態度が変わらない人もいるので、まだまだメッセージを投げかけ続けなければと感じています。
コロナは私たちの会社にとって決していい影響を与えていませんが、コロナがなければ例年と同じように研修をやっていたかもしれないと思うと、人材育成の転換期になったとポジティブにとらえられるかもしれません。
-「共育職場」に向けて、今後の育成方針をどのようにお考えでしょうか?
今の管理職は、タテの関係で育てられ、ぐいぐい営業した結果今の地位についています。自分たちが経験したことと同じように若手に接しても、今の若手はそれをやると離れていってしまいます。「ヨコの関係」「共育職場」というキーワードを伝えながら考え方を変え、ともに育っていこうというメッセージを伝えていきたいです。
若手社員に対しても、「やってもらえるのが当たり前」になるのではなく、自ら育つ力を育てていきたいと考えています。そのための研修の形として、今後オンラインが欠かせなくなってくる中で、今年のチャレンジを振り返りつつオンラインの効果的な活用について考えていきたいです。
講師の声
森 仁OJT担当者研修(3月実施・9月実施)の一貫したテーマは「新入社員を指導・育成する機会を通して、自己(OJT担当者)と新入社員双方の成長を最大化する」(=『共育』)でした。
3月の研修では、OJT担当者の方の心理的負担を和らげることを目的に進めました。OJT担当者として「新入社員にすべてを教えなければならない」と考えると途端にハードルがあがります。自分が教えることと職場のメンバーに依頼することを分けることによって「すべてを自分で抱え込まない」OJT環境のデザインを考えていきました。
9月の研修では、KNT-CTホールディングさま初のオンラインでの研修実施となりました。受講者の方もオンラインははじめて、かつコロナ禍でこれまで経験したことない職場環境の中でのOJTと、不安が折り重なった状況での研修となりました。そこでキーワードになったのが「ヨコの関係」です。今まで誰も体験したことない状況ですからお互いに不安を共有し、一緒にこの状況を打破していく仲間として新入社員と関係性を築いていくことをお伝えしました。
研修が終わったときの受講者の方々の晴れ晴れとした表情が今でも忘れることができません。
最後に、外部環境が大きく変わる中、一貫して「できるだけOJT担当者の不安を解消したい」と社員の方に寄り添い、成長を喜び合える鈴木様・西川様・増田様とご一緒できたことは本当に感謝しかございません。
担当プロデューサーの声
髙橋 夏帆KNT-CTホールディングス様が掲げる育成方針、「刻々と変わる社会環境、ビジネス環境の中で、どんなときも個々の知力、能力、マインドを発揮し続け、お客様に心の満足を与えることができる人材を育成していきます」という言葉が、まさに今年1年、皆さまと一緒に体現しながら、目指した姿だったと感じております。
新型コロナウィルスにより、事業、人員の配置、育成の環境、受講者の皆さんのお気持ち、あらゆるこれまでの条件が変わる中でも、OJT担当者研修と新入社員研修実施の機会をいただき、心より感謝を申し上げます。
コロナ禍でありながら、むしろこれまでに実施したことのないオンライン研修や研修前後の取り組み、OJT担当者との連動施策までも併せて挑戦させていただけましたのは、鈴木様・西川様・増田様の「OJT担当者と新入社員だけでも、なんとか研修を実施し、現場で困っているだろう不安や課題を解消する場にしたい」という想いがあればこそでした。
大変お忙しい中でも快くインタビューに応じてくださりました、鈴木様・西川様・増田様に改めましてお礼申し上げます。誠にありがとうございました。