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2018.11.21

HRカンファレンス2018秋「理念浸透による組織開発 ~『仕組み先行型』から『共感ベース型』へ~」Part.2

2018年11月13日(火)~16日(金)「HRカンファレンス2018秋 -東京-」(主催:株式会社アイ・キュー)にリ・カレント株式会社が出展しました。

今回は、11月13日(火)に行われた、リ・カレントの講演
理念浸透による組織開発
~「仕組み先行型」から「共感ベース型」へ~

の様子をお届けします。

HRカンファ2018秋-堀井-組織開発

講演者

戦略人財コンサルタント 代表
鬼本 昌樹 氏

リ・カレント株式会社 人材組織開発プロデュース部リーダー
堀井 悠

講演概要

先行き不明なVUCA時代。
変化に打ち勝つ企業は、理念を軸として社員が自律的に行動する「組織力」を持っています。
組織開発において制度や仕組みが機能するには、社員一人ひとりの企業理念への共感がベースとして不可欠です。
そこで、本講演では理念浸透による共感をつくり出す、マクロ=トップダウン型組織開発の成功要因と、トップのメッセージを縦横無尽に組織に届ける新手法「マイクロ組織開発」をご紹介しました。


今回の講演は、前半で戦略人財コンサルタント代表の鬼本講師より、日本企業の組織構造における弱点と、「これからの組織」をつくるためのポイントをお話しいただき、

後半ではリ・カレント株式会社、人材組織開発プロデュース部の堀井から、リ・カレントのお客様事例をもとに、社員一人ひとりの企業理念への共感を引き出す理念浸透・共感ベース型の組織開発についてご紹介しました。

今回のセミナーレポートでは、リ・カレント株式会社、人材組織開発プロデュース部の堀井による後半パートのお客様事例を中心にお届けします。

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世界唯一の技術で発展した名門企業に訪れた危機とは

今回、HRカンファレンスの講演で、リ・カレントが支援を行った「共感ベースによる理念浸透」の成功ケースとしてご紹介したのは、ある機械メーカー様です。世界唯一の技術をもつ優良企業で、その独自技術を開発したカリスマ技術者によって、一代で急成長を成し遂げました。地元では、“名門”として知られています。

ところが、その名門企業に「人材流出」という危機が訪れました。発端は企業のトップ交代により、大手企業の制度をそのまま移入、営業部マネジャーに大手出身者を起用するなど、拡大・合理化路線へ大きく舵を切ったことから、翌年には営業部員の半数以上が退職し、さらに次の年には外部から起用された営業マネジャーまでが会社を去ってしまう事態に直面しました。社内の雰囲気の悪さは、当時経営会議の議題に上るほど深刻化し、やがて営業以外の部署にも若手社員の離職が広がっていったそうです。

このような危機に直面した同社・人事部様よりご相談を受け、リ・カレントがヒアリングを行いました。トップの世代交代の前後わずか2、3年の間にいったい何が起こったのか――。制度の実態や組織内・組織間の関係性などを調査・分析した結果、まず見えてきたものは「理念の形骸化」でした。

「同社の経営理念は『新しく役に立つものを創造提案』です。この理念を、創業者のカリスマ技術者自らが掲げ、浸透させていた時代には、たとえば営業は顧客のわがままな要望にも柔軟に対応し、技術・製造もその無理難題に果敢にチャレンジすることで、結果的に新しくて価値がある製品や独自技術の開発につながり、顧客からの評価・信頼も自分たちの充実感も増幅するという好循環が組織内に存在していました。
ところが、社長交代後は、営業に顧客や社内からの共感を無視した販売管理が導入されたため、営業と技術・製造など他部署との間にいわゆる“セクショナリズム”が発生。ノルマを追うことへの疲弊や、責任のなすりつけ合いが組織の至るところで見られるようになり、『新しく役に立つものを生み出す』という経営理念が急速に形骸化していました」

HRカンファ2018秋-堀井-組織開発

現場レベルから組織全体を動かすための組織開発3つのステップ

「会社のピンチなんです」――堀井が同社へお話を聞きに伺ったところ、お客様はまず、問題の緊急性を強調したといいます。そして、最優先の課題として取り組むべき、3つの具体的な要望がありました。

・現在の社長が、古くからいる古参役員と良好な関係性を構築できていない
・会社の未来を担う中堅社員の離職に歯止めがかからない
・中堅社員のモチベーションの低下にできる限り早く歯止めをかけたい

「組織開発の定石は『“上”から変えていくこと』ですが、緊急性の高さを考えると、同社のケースにそれを当てはめるのは良策ではない」――そこで、経営層の改革を待たずに、現場と人事のレベルから組織全体を動かしていく改革フレームをご提案しました。そのフレームとは、形骸化してしまった同社本来の経営理念を再浸透させるために、以下の3つのステップで同社の社員の皆様へ「腹落ち」へ導くものです。


共感ベースの組織開発提唱フレーム|リ・カレントSTEP①「現状の見える化」
組織の現状を同じ言葉で認識する。「理念の形骸化」に気づく。

STEP②「腹割り対話」
当事者全員を集め、“腹を割った”対話を行う。「言えない・聞けない」のない、安心・安全が担保された環境を整えた上で本音をぶつけ合う。

STEP③「腹落ち理念経営」
個人の挑戦を皆で支援する。会社としての挑戦を皆で喜ぶ。

「私たちがこだわったのは、この3つのステップを『共感』をベースにして、全員で実践していくことです。極端なことをいうと、理屈抜きです。理屈、ハード面だけで組織を動かそうとしてもうまくいきません」

なぜ組織内、組織間の関係性が悪いのか?
「人の関わり方」「制度のあり方」の両面から分析した結果、「対話なき組織」が浮き彫りに

この3つのステップによって、具体的に何が明らかになり、どういう成果が現れたのか。改革ストーリーは核心へと進みます。

まず、STEP①「現状の見える化」では、「なぜ組織内、組織間の関係性が悪いのか」という問題について、ソフトとハードの両面から分析を加えました。ソフトとは、「人の関わり方」。ハードは「制度のあり方」です。

「人の関わり方でいえば、もともと同社社員には、経営理念を体現する『ものづくりへの熱いプライド』がありました。ところが、社長交代に伴う「大手企業の制度」をそのまま導入してしまった。ハード面の変更によって、社内から対話がなくなってしまった。その結果、仕事の無目的化が進み、ものづくりへのプライドが『やって当たり前』や『やるだけ損』といったネガティブな風潮へ変わっていったのです」
ここで「対話なき組織」という要因が抽出され、共有されました。職場から対話が奪われると、理念の形骸化や仕事の無目的化を招き、自分たち本来のいいところまで見失ってしまうという構図が浮き彫りになってきたのです。

失われた対話を回復すべく、「腹割り対話」の実践へ
社長に賞与アップを直訴した腹割り対話の意外な結末とは?

そこで、失われた対話を回復すべく、STEP②「腹割り対話」の実践へ。人事部門の要請に応え、とりわけ緊急度の高い中堅社員を対象に、研修という形で働きかけを行ったところ、大きな変化が訪れました。

堀井は同社のターニングポイントとなった出来事を、以下のように振り返ります。

「リーダーシップのインプットや会社に対する想いの共有など、さまざまなテーマでセッションを重ねていくなか、“事件”は起こりました。受講者の中堅社員に自社の問題点を自由に語り合ってもらうと、『ボーナスが低いよね』『こんな金額じゃあ、やる気が出ないよね』という声が相次いだのです。

そして、ある受講者が突然、オブザーバーとして同席していた社長に向かって、『社長!ボーナスを上げてください。やっても、やっても報われません』と直訴したのです。もちろん筋書きなどありません。われわれも想定外の展開でした。すると、社長も憮然として、『わかりました。では、いくら上げてほしいのですか?』と切り返し、場の空気が一気に緊迫しました」

その場で講師が機転を利かせた結果、社長の質問にどう答えるかを受講者が討議し、上げてほしい金額がまとまったら、社長に報告しに行くことになりました。「5万円か?10万円か?いっそ20万ぐらい言ってみるか」「いや、何だか申し訳ない気がしてきたぞ」――当事者全員による侃々諤々の「腹割り対話」の末にたどりついた結論には、堀井も正直驚いたといいます。

「中堅社員たちが社長に要望したボーナスの値上げ額は、なんとゼロ円だったのです。では、何が本当に欲しかったのかと言えば、社長からの『ありがとう』のひと言。
がんばったことに対して、『心からの感謝の言葉』さえもらえれば、ボーナスの金額を上げてもらう必要などないということに、社員自身も腹割り対話を通じて気が付いたんです。これには、社長も『大いに反省した』と、後日語っていました」

中堅社員が本音で求めていたこと、伝えたかったことは、お金の充足ではなく、まさに「共感の充足」だったのです。その真実を自ら導き出したことで、会社の雰囲気は劇的に変わっていきました。

経営理念を“自分事化”すると未来への挑戦が始まる

この「腹割り対話」を経験して以降、同社の中堅社員に訪れた最も大きな変化は「経営理念の自分事化」でした。

「新しく役に立つものを生み出す」とはどういうことか。自分なら、それをどう実現するか。
すっかり形骸化し、額縁の中のお題目に過ぎなくなっていた経営理念の意味を、一人ひとりがもう一度、自分の頭で考え始めるようになったといいます。

「理念の自分事化が進むと、たとえば、研修での内省から過去に理念を体現していた頃の充実感が蘇り、理屈抜きに『あのときは楽しかったな』となることが少なくありません。経営理念と、自身のモチベーションの原点がマッチングするわけですね。そうして初めて、自分たちの仕事の本質は、お客様に『売る』ことではなく、お客様といっしょに『創る』ことなのだと思い至る。つまり、経営理念が“腹落ち”したのです」

「経営理念の腹落ち=共感的理解」が進んだ結果、低下していた社員のモチベーションにもふたたび火が付き始め、現場の個人レベルから創造提案への挑戦が活発に出てくるようになりました。

こうした動きを待ち望んでいた会社側も、個人のチャレンジをサポートし、より活性化する仕組みを用意して支援しました。それが、STEP③の「腹落ち理念経営」です。

個人の挑戦を促す経営理念の共感と仕組み

たとえば、人事評価制度においては、「創造提案への挑戦」を評価項目として設定。チャレンジした結果だけでなく、そのプロセスも評価するしくみを導入しました。理念に向かって挑戦する姿勢や行動そのものを承認・称賛することで、共感ベースによる理念のさらなる浸透・実現を促す狙いがありました。

会社が成長し続けるためには、個々人のチャレンジと、それを促し支援する組織風土が欠かせません。腹割り対話によって経営理念が自分事化すると、未来への挑戦が始まる。「このことが今回、この会社が得られた最大の教訓ではないでしょうか」。

理念浸透に伴う内発的動機によって組織が変わった

「①~③のステップを経て、現場から未来への挑戦が始まった結果、現在では、会社自体にも目に見えてさまざまな変化が起こっています。業績の回復で新工場を立ち上げたり、顧客満足度と売上の成長性でビジネス誌のランキングトップ100に特集され会社の知名度も飛躍的に向上しました。あまりの変貌に、誰よりも社長が驚きました。

なぜなら、これらの成果は、いままで社長がどれだけやれと命令しても、できなかったことばかりだからです。あくまでも理念浸透に伴う内部の力、個々の内発的動機によってもたらされた成果にほかなりません」

こちらで紹介した企業様に対するご支援はリ・カレントで現在も継続しています。堀井は担当プロデューサーとして、「『個人の挑戦を皆で支え、会社の成長を皆で喜び合える会社』へと確実に生まれ変わりつつある手応えを、強く感じています」と締めくくりました。

HRカンファ2018秋-堀井-組織開発

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