プレイフル・マネジメント|遊びの如く仕事に熱中して結果を出す4つの原則

2014.05.28

有名な「3人のレンガ積み職人」の話には続きがある

 

講師:石橋誠(いしばしまこと)氏

プレイフル・マネジメントは、私が研修会社を経営するなかで、他社にも学び、工夫と試行錯誤をしながら体系化したマネジメント手法だ。これを実践して、私たち自身、高業績を達成させていただいているが、お客様の企業の方々からも、このマネジメント手法を採り入れて結果を出したという声をお聞きするようになった。そこで、今日は皆様にご紹介したい。
プレイフル・マネジメントとはどういうものか、人材開発系の分野でよく知られている「3人のレンガ積み職人」の話を例にご説明する。この話は次のようなものだ。西洋のある街に教会を建てることになり、3人のレンガ積み職人が雇われた。長期間の難工事になったため親方が慰問に訪れ、職人たちに「ところで君はなぜレンガ積みをやっているんだ?」と聞くと、1人目は「だってあなたが命令したでしょう」、2人目は「家族を養わなきゃいけませんから」、3人目は「教会を造るためですよ」と答えた。仕事とは労働ではなく、目的を持ったものだとリーダーが伝える必要があることを示す話だ。ここから先は私の創作だが、プレイフル・マネジメント版では職人が5人いて、4人目は「私はレンガにすごく興味がある。調べると世界には素晴らしいレンガがあるとわかり、隣の国で買い付けたレンガをいま積んでいるんだ」、5人目は「この教会ができた後が楽しみなんだ。ここに人々が集まり、時を告げる鐘が響き渡ることで街中が幸せになる。ワクワクするね」と答える。プレイフル・マネジメントは、言ってみれば、この4人目、5人目の職人を増やしていくためのチームマネジメントだ。長期間の難工事、1人目2人目はただ「しんどい」と思っているが、4人目5人目は違う。遊びのように仕事に熱中しているから、「しんど(楽し)い=しんどいけれど楽しい」。そう思える状況に持って行くのがプレイフル・マネジメントだ。

マインドセットを「コチコチ」から「ワクワク」に変える

プレイフル・マネジメントの理論は、困難な状況をいかにポジティブに変えるかという認知行動心理学、それを組織としていか
に実行するかという組織心理学、人間の人生の幸せをいかにビジネスの成功とシンクロさせるかというポジティブ心理学がベースとなっている。コアになるのは、いかに自分自身のマインド(思考様式)をセットするかという「マインドセット」。
ドライバーになるのは、4つの原則「夢・ビジョン」「コミュニケーション」「場・環境」「インセンティブ」だ。
まずマインドセットだが、プレイフル・マネジメントでは、努力しても自分の能力は伸びないと考える人の「Fixed Mindset」と、努力すれば自分の能力は伸びると考える人の「Growth Mindset」という2つがあると考える。わかりやすく言えば、前者はコチコチマインドセット、後者はワクワクマインドセット。もちろん大事なのは後者だ。両者の特徴を対比すると、コチコチマインドセットでは「固定概念」にとらわれ、やったことがないことはできないと考えるし、「結果」を重視するため「失敗回避」の姿勢になる。決めるのは「他者」だから人任せになり、関心事は「自分」がどう評価されるかだ。一方、ワクワクマインドセットでは何事にも「好奇心」がわき、「成果」すなわち成長の伴う結果を重視するため、「機会挑戦」することができる。決定は「自己」が行うからモチベーションが高く、関心事は「仲間」だから、チームで仕事に熱中できる。
では、コチコチからワクワクにマインドセットを変えるためにはどうすればいいか。セミナーでワークを行っているが、ポイントは認知をいかに変えられるかだ。コチコチに固まった自分を俯瞰して、ネガティブ思考をしている自分を『メタ認知』することが重要になる。その手法をいくつか考案し、私自身も実践している。失敗したら最悪どういうことが起きるか考える「ワーストシーン想定法」は、失敗したとしても損失はこの程度だと計算できると、逆に「思い切って投資しよう」といった意思決定をワクワクしてできる。「アクション・キュー法」は、直感的に面白いと思ったことを、ネガティブな思考が起きる前に、即実行に移してしまう方法だ。ビジネスではいろいろ考えて行動を回避するよりも、直感に従ってとにかく行動してしまう方が結果がでる確率が高いのだ。

精神的なインセンティブをいかに充実させるか

次に、プレイフル・マネジメントのドライバーとなる4つの原則をご説明したい。まず、夢・ビジョンは仕事に対して強い想いを持つこと。それをチームとしてやっていくためには、その想いを使命にまで高める必要がある。同時に、利己的にならず、周囲のいろいろなステークホルダーのためにというところをミッション、ビジョン、バリューにしていくことが大事だ。そして、夢・ビジョンをどうコミュニケーションしていくかだが、ポイントは「共感」だ。共感ができればつながりができ、絆ができる。そうすればみんなで一体となって困難に立ち向かえる。また、場と環境を考えること、これはワークプレイスマネジメントだと考えている。実現したい組織像やサービスにリンクさせて意図的に場と環境を作れば、これら全てがメッセージ(コミュニケーションツール)になる。最後に、インセンティブは金銭的な報酬も大事だが、精神的な報酬をいかに充実させるかがポイントだ。プレイフル・マネジメントでは、メンバー同士がいろいろなものを与え合う互恵関係を設計することに工夫を凝らす。これは、会社単位でなく職場単位で行える。

目の前の仕事を、仲間と一緒に面白くしてしまおう

以上のような考え方に基づき、私なりのマネジメントの仕組みをいろいろ作って運用している。従来からの仕組みに新しい意味合いを持たせ、ネーミングにも工夫したものが多いが、たとえば「週・造」は週を新しく造るクレド・ミーティングで、端的に言えば朝礼だ。自分たちの言葉で組織のミッション、ビジョン、バリューを考え直し、それを全員で唱和して、前の週にやったいいこと、素晴らしかったこと、学んだことを1人2~3分でプレゼンし合う。あるクライアント企業では、エリアマネジャー研修に「週・造」の仕組みを採り入れたところ、6カ月後には全員が目標を達成する結果を出していただいた。
また、「サンクスシャワー」は、ちょっとしたことでも社内で感謝の気持ちを伝え合うインセンティブの仕組みで、小ぶりのカードにメッセージを手書きし、各自のロッカーに設けたカードホルダーに入れる。これを月1回集計して感謝数No.1の人を表彰している。ほかにも、営業のアポ取りをインセンティブ付きキャンペーンに仕立てた「世界のなべアポ」、1泊2日で会社の新しい取り組みをみんなで議論して決める「Aじゃないか!」など、さまざまな仕組みがある。
最後に、プレイフル・マネジメントの基本メッセージは次のようなものだ。
「仕事で成果を出すのも能力。仕事を面白くするのも能力。面白い仕事を探すのをやめて、目の前の仕事を仲間と一緒に面白くしてしまおう」。
プレイフル・マネジメントを実践し、まるで遊ぶが如く、個人でワクワクしながら、チームでワイガヤしながら仕事を楽しんで、高業績を達成していただきたいと思っている。

※2013年HRサミット講演より

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