2023.04.21

速報! 23卒新入社員 導入研修から見えた成長ポイント

監修者
鷲尾 大樹(リ・カレント株式会社 ラーニングD³)

23年度新入社員の研修を行っている中で、彼らの特徴的な言動がいくつか見えてきました。

真面目であるがゆえに自らの首を絞めてしまう。
「この場をきちんと乗り切りたい」という気持ちが強く、研修内容に集中しきれない。
人事の皆様も、次のようなシーンが思い当たるのではないでしょうか。

「話を聞く姿勢は真面目。だが、内心を聞いてみると不安・焦りが強い」
「ビジネスマナーなど具体的なケースへの質問は多いが、他の場面では手が挙がらない」
「研修を振り返らせてみると、内容の理解よりもその場での振る舞いに重点を置いている」

こうした特徴が見られる23年度新入社員が、研修を「その場のこと」としてこなしてしまわないために今からでもできるポイントとは?
導入研修から見えた成長ポイントを解説します。

23卒新入社員の2つの傾向

導入研修の中で各社に共通して見られたのは、次のような特徴です。

1.明るく前向き(のように見える)

2.素直で真面目(のように見える)

それぞれについて、詳しく解説していきましょう。

傾向1:明るく前向き(のように見える)

1つ目の傾向は「明るく前向き(のように見える)」です。
今年の新入社員は言動・コミュニケーションともに明るく元気があり、ポジティブに過ごしているように見えます。

しかし一方で、「疲れた」「眠い」などの声が漏れたり、全体ではなく講師への個別質問になると不安げな内容が多くを占めたり、ややちぐはぐな印象を受けます。

研修中に質問を促してもなかなか手が挙がらないが、ビジネスマナーなど具体的な場面になると「○○なときはどうすればいいですか」等の詳細な質問が増える。
こんな光景を、担当者の方であれば目にしているのではないでしょうか。

また、聞きたいことを講師や人事に問いかけるのではなく、SNSやインターネットでその用を果たそうとするケースもあるようです。

こうした点から、新入社員にとって研修という場は真に「安全だ」と感じられていない可能性があるかもしれません。

傾向2:素直で真面目(のように見える)

2つ目の傾向は「素直で真面目(のように見える)」です。

言われたことはきちんとやろうとする姿勢があります。
ただし、その程度や言われてないことについては、人事・講師の目から見ると少し物足りないと感じることが多いようです。

ともすると、真剣とは言い切れない”ゆるさ”や、一生懸命というより”うまくこなす”といった印象を受けるでしょう。
特に講師からすると、研修を受けつつ彼らが何を考えているのか、きわめて読み取りづらいと言えます。

先述の傾向1と合わせて考えると、研修の目的が「怒られずに終わる」ことになっているかもしれません。

形無き不安と戦い続ける知識偏向型新人……?

これらを総合すると、今年の新入社員の傾向は「形無き不安と戦い続ける知識偏向型新人」と表せます。

ここで言う「形無き不安」とは、例えば次のようなものです。

・どんな人たちがいるのか(対人不安)

・自分はうまくやっていけるのか(将来不安)

・入社の選択は間違っていないのか(キャリア不安)

・収入や暮らしは大丈夫か(生活不安)

しかし、こうした不安は経験によってしか解消・軽減・理解ができないものです。
私たち育成側は、彼らが「まずやってみる」「やって失敗しても大丈夫だ」と思えるようサポートをできると良いでしょう。

次章から傾向を踏まえた育成ポイントを見ていきます。

▶ 新入社員が大人しい、その背景は? 集団適応のための”生存戦略”について詳しくはこちら

23卒新入社員育成 3つのポイント

以上を踏まえて、23卒新入社員が不安を解消あるいは受容しつつ、自身の成長に向き合うための育成ポイントは次の3つです。

1.感情や思考を言語化させる

2.”被受容感”を持たせる

3.自己効力感獲得の体験を持たせる

それぞれを詳しく見ていきます。

感情や思考を言語化させる

一つ目の育成ポイントは「感情や思考を言語化させる」です。

「社会人としての自分」の仮面をかぶることに良くも悪くも慣れている今年の新入社員ですが、その反面、自身の言動の奥にある思考や感情は関係がないものだと捉えている可能性があります。

社会人としての自身を持つこと自体はけして悪いことではありません。
しかし、「プライベートで辛いことがあったが、社会人たるもの、出社したら何事もなく振舞わなければ」といった無理を半ば無意識にしてしまう、そんな危うい傾向があるのです。

社会人の自分とそうではない自分で乖離を起こさせないためには、(講師や人事に吐き出せなくとも)まず本人が自身の感情や思考を言語化して自覚できることが重要です。

また、研修のようにレクチャーを行う場においてもこのポイントは有効です。
付箋などに「不安の書き出し」をさせ、周囲も同じように考えているのだと新入社員同士で共有することで、その場の安心感を高めることができます。

“被受容感”を持たせる

二つ目の育成ポイントは「“被受容感”を持たせる」です。

“被受容感”とは噛み砕いた表現にすると、「私はこの場に受け入れられている」という感覚を指します。
話すことで満たされる、物理的な時間・空間の共有で満たされる、質問されることで満たされるなど被受容感を持つタイミングはそれぞれ。しかし、満たされないと“学習どころではない”というのが重要です。

たとえば外部講師の行う研修の場に新入社員がいたとして、
「厳しそうな顔をしているけど、怖い講師なのだろうか」
「どんな難易度のことをやらされるのか」
などが気にかかってしまった状態では、学習の内容を頭に入れるどころではなく、自身の安心感を求めて「とにかくこの場を乗り切るための振る舞い」に走ってしまう……。
こんなシーンが、各社の導入研修のあちこちで程度は違えど見られました。

この“被受容感”を満たすことが、研修効果を高める大きなポイントとなるのです。
先ほど「被受容感を持つタイミングはそれぞれ」と書きましたが、総じて言えるのは、場や人に対して自分からアクションし、承認される体験がキーとなるということです。

育成側としては、研修内で意図的に発言機会をつくり拍手でそれを受け止めるといった仕掛けをぜひ取り入れてください。
人事の立場からすると「促すのではなく、彼らの主体的・自主的な行動を待ちたい」という気持ちももちろんあるでしょうが、まずは育成側から機会を作って成功体験を積ませましょう。
その成功体験によって「受け入れてもらえた」という感覚を彼らが得た先に、はじめて自主的な行動は生まれます。

自己効力感獲得の体験を持たせる

三つ目の育成ポイントは「自己効力感獲得の体験を持たせる」です。

自己効力感獲得の体験とは、次のようなことを指します。

・やり遂げ、達成する成功体験:チャレンジすることを明確にして行動する

・他者を通して学ぶ代理体験:他者の話を自分事化して聞く

・承認やフィードバックによる言語的説得:講師や人事、周囲から承認・ポジティブフィードバックを得る

・リラックスした心身・メンタルを通した情動的喚起:周囲との良好な関係性を築く

受講者自身が影響力を発揮したと感じられる機会を意識的につくることが、能動的に行動し続ける力へと繋がります。

この点に関しては新入社員自身に直接伝えるのも良いでしょう。
「こういった力が今後あなた達の役に立つ。だからこそ他者と経験を共有してほしい、フィードバックしあってほしい」といった育成側から開示してみることをおすすめします。

まとめ

本記事では23卒新入社員の2つの傾向と育成ポイント3つを解説しました。

【2つの傾向】

1.明るく前向き(のように見える)

2.素直で真面目(のように見える)

【3つの育成ポイント】

1.感情や思考を言語化させる

2.”被受容感”を持たせる

3.自己効力感獲得の体験を持たせる

導入研修中の方も、配属先の上司・先輩にあたる方も、ぜひ「形無き不安」と戦う新入社員の成長を後押しするためにこれらの情報をご活用ください。

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