いまどき新人を読み解く vol.2 「クローズドマインド」「貢献あこがれ」

2015.12.3

【メンタリティ編】3.「クローズドマインド」4.「貢献あこがれ」5.「勝手にプレッシャー」メンタリティ

3.「クローズドマインド」メンタリティ


 

「クローズドマインド」とは、オープンマインドの反対を示した造語です。特に先輩・上司、世代の違う人たちから「何を考えているのかわからない」と言われたり、集団になるとその“クローズドさ”はさらに加速します。新入社員研修で前に立つと、わかったのかわかっていないのかその反応が年々読み取りづらくなっている、ということを各社の人事担当者からよく耳にするようになりました。

「クローズドマインド」メンタリティは、自分の外側に不必要な情報は出そうとしない、という状態を指しています。これは、

1. 周囲からマイナス評価されることを根本的に恐れる
2. モバイル台頭によるコミュニケーションの質の変化

の2点が大きく影響しています。

彼らは、周囲からのマイナス評価によって自分の存在が危うくなる、という環境で、周りの空気を読み、「正解」を言うことで集団に安全に身をおくことを覚えました。「自分が考え感じたこと」を素直に発信するということは大きなリスクを伴うことだったのです。

また、モバイルの発達による影響は大きく、「好きな時に好きな人と好きな分だけとる」ことがコミュニケーションの前提となりました。嫌な相手からの電話は出ない、言いにくいことはメールで済ませる…など、「異質で自分を否定されるであろう人」との関係は極力持たないという選択が出来るようになったのです。相手の理解を得るために自分の思考や感情をなんとか対面で伝えなければならない、という経験はほとんど無くなってしまいました。

1対1の時も集団の時も、相対しながらよく観察していると、自分が考えていることを隠そうとしているというよりは、自分の中にある不安を解消するために自分の内側にエネルギーを費やしているように感じられます。表面的には言葉や態度から読み取れなくても、一人一人じっくり聞いていくととても素晴らしい考えを持っていることに気づかされます。そして、人と競ったり争うことを好みませんので、基本的に優しい方が多いように思います。

ただし、「感じていても言わない」のではなく「感じたことを問われてもよくわからない」という、アンテナの感度自体が鈍くなっているケースは問題です。表情態度に現れない場合、どちらのケースなのかはよく見ていく必要があるでしょう。

4.「貢献あこがれ」メンタリティ


「社会貢献」この言葉はいまや採用面接で聞かない日は無くなりました。彼らがそう口をそろえて言うのにももっともな背景があります。
身近なところでは、震災や震災ボランティアの経験です。被災地での活動を通じて、人に役立つことの大切さを学んで絆を体感した、こんな無力な自分でも目の前の人に貢献できてありがとうと言ってもらえたことがとても嬉しかった、そんな風に仕事をしていきたい、という学生にたくさんお会いします。

 

社会情勢からみると、2000年の米国エンロン社の会計不正問題、国内では食品偽装や耐震偽装問題といった企業の不祥事が続いた当時、企業そのものの在り方を問う大きな動きがありました。厚労省による新入社員の働く目的調査では、2000年までは一貫して5%程度しかなかった「社会のために役に立ちたい」という項目が2000年を境に急増、2012年には15%まで上昇しています。その後同様の調査結果は公表されていませんが、おそらくいまはもっと上昇しているのではないでしょうか。仕事を通じて社会に貢献するという意識が若い世代を中心に広がっていることは間違いありません。

しかし、いまどき新入社員の言う「社会貢献」の文脈には、少々違和感を持つことがあります。社会的な問題を解決できる人材になる、そのために難しい仕事に挑戦したいというよりは、目の前の人に感謝してもらえることで世の中の役に立っている感覚、人とつながっている感覚が欲しい、そんなふうに見て取れるのです。つまり、社会貢献という言葉の根っこには「つながっていたい」という欲求が隠れています。

しかし、一方で「一人でいたい」という気持ちも強く持ち合わせています。4月の新入社員研修で1週間の長期プロジェクト型のプログラム中、グループワークで紛糾しているにも関わらず、昼食は1人で行く姿を目にするようになったことは非常に驚きの行動でした。気の合う相手とは一緒にいたいが、気の合う相手を自ら作るのはおっくう、気の合わない人と空気を読みながら調子を合わせるのはもっとおっくう、気を休めるためにも1人の時間が必要、そんな気持ちが働いているのです。

ですから、素のままの自分を受け入れて認めてくれる、面倒見の良い先輩やOJTリーダー、上司がそばにいると、その人のために俄然頑張るという底力を発揮します。誰かの役に立ちたいという純粋な思いから、基本的に成長欲求は高いですから、信頼できる人(=素の自分を受け入れてくれる人)のために一生懸命努力する姿勢は素晴らしい強みといえるでしょう。

5.「勝手にプレッシャー」メンタリティ


「最近の新人はストレスに弱い」とはいまさら始まった話でもないのでは…という方もいるかもしれません。
ストレスを感じる多くの場面は対人関係にあります。既述の通り、異質な人と困難なやりとりをすることに不慣れないまどき新入社員たち。彼らにとって、世代の違う上下関係の中に放り込まれることは、これまで経験したことの無い人間関係を求められるため、この上ないストレスとなることは否めません。ましてや気心の知れた一部の人としか一緒にいたくないと本心で思っていればなおさらです。

ただ、そこまで事は単純ではなさそうに思います。近年では新型うつが話題となるなど、彼らの感じているストレスの実態は少しずつ変わってきているようです。

あるプロのカウンセラーの方から「万能感を捨てきれないまま社会に出る人が増えている」という話を聞いたことがあります。万能感とは、心理学用語で「自分は何でもできる」という感覚を指します。たとえば赤ちゃんは泣くことによって親をコントロールし欲求を満たす、といった具合に幼少期には誰もが万能感を持っています。通常は思春期になるにつれ、発達段階で他者との関わりにおいて葛藤や失敗、挫折などを通じて徐々に万能感を捨てていきます。

しかし、反抗期が無くなってきたといわれるように、近年の親子関係や学校社会の変化によって、万能感を捨てきれずに社会人となってしまう環境が整っているとそのカウンセラーの方はおっしゃっています。万能感が強いほど、他人をコントロールしようとするだけでなく、なにごとにも自分が影響していると考えてしまうのだそうで、これが非常に厄介な問題となります。
例えば、

• 自分が価値の低い人間だから相手が挨拶をしなかった
• 自分が上手く話せないから相手が沈黙してしまう
• 周りが自分の意見を聞いてくれないのは自分が受け入れられていないからだ

といったように、直接的には影響していないことにまで自分のせいだと感じてしまいます。ですから職場においては、何か大きな失敗をした、上司から叱責を受けた等、落ち込んでしまう具体的な事象が伴わないケースが出てきています。先輩・上司からすると、モチベーションが下がっていたりメンタル的な問題を抱えている若手が、なぜそうなってしまったのか理由がわかりにくく、打ち手が遅れてしまうということが起こります。

もちろん、すべてのいまどき新入社員が万能感を持ち合わせているというわけではありません。しかし、メンタル的な問題を抱えやすい土壌を持っているのだとすれば、早期に手を打つべきということになります。

以上、3つの環境的要因を背景にした5つのメンタリティをご紹介しました。
実際には5つのメンタリティがそれぞれ影響し合っているので、きれいに割り切れるタイプ分けというものではありませんが、何か特徴的な言動が見られるとすれば、おそらくいずれかのメンタリティが影響しているのではないかと思います。

次回はこれら5つのメンタリティを持つ新入社員に対し、どのような育成が必要となるのか、そのヒントを「10の成長力」に分けてご紹介していきます。

楠 麻衣香
リ・カレント株式会社 若手人材開発事業部マネジャー中央大学総合政策学部卒。経営コンサルティング会社、外資系研修会社を経てリ・カレントに参画。社会人1年目の挫折が原点となり、現代の新人教育のあり方の 追求に取り組むようになる。大手企業を中心とした人材開発支援に携わる傍ら、ゆとり世代新入社員育成のための「ゆとレスプロジェクト」を発足しゆとり世代 にフィットした新人研修を開発。現在は講師として登壇する傍ら、同社マーケティングや新卒採用も担う。
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