リ・カレントで実際に行った研修事例から見る オンラインで研修を行うポイントと課題を徹底解説!
コロナウィルスの影響により、テレワーク導入や従来の集合型研修のオンライン化を進めている企業のご担当者の方も多いことと思います。リ・カレントでは、外出自粛要請や緊急事態宣言発令の動きを受け、セミナーや研修をオンラインに切り替えて実施しております。3月から4月にかけては、従来集合研修のみで実施していた実践型演習を含む研修もオンラインで実施できるようになりました。
今回のコラムでは、リ・カレントが新入社員向けの3日間の集合研修をオンライン化した事例をもとに、オンライン化にあたり変更した点、オンライン研修におけるメリットとデメリット、またオンライン研修を実施するなかで見えたオンライン研修における今後の課題について解説いたします。
・研修プログラムの開発がどのように行われたのか?
・実際に研修を行ってみて、オンラインでできたこと・できなかったことは何か?
・オンライン研修を成功させるための課題は何か?
オンライン研修の開発から実施までの経緯と実施して見えた課題について、リ・カレントの人材開発プロデューサー湯口の声も交えつつ、ご紹介していきます。
目次・リ・カレントで実際に行った研修事例から見る
オンラインで研修を行うポイントと課題を徹底解説!
研修のオンライン化にあたり変更したポイント
オンラインセミナーのビデオ会議システムは「Zoom」を選択
これまでの集合研修では講師との対話や受講者同士のディスカッションなどは、実際の対面での会話でした。オンラインでの研修では、講師と受講者、受講者同士でディスカションなどはビデオ会議システムで行うことになります。
リ・カレントでは、参加者の顔を一覧で見ることができること、資料の共有やチャット機能等インタラクティブにコミュニケーションができることなどから、オンライン研修ツールとして「Zoom」を選択しました。
Zoomでの研修実施にあたり、研修の冒頭でZoomの使い方についての説明の時間を設け、受講者が安心して研修を受けられる体制を整えました。
「講義の初めに、Zoomの使い方の説明を追加しました。受講生が新入社員ということもあり、受講生によってはパソコンの使い方が不安な方もいらっしゃいます。そういったパソコンの習熟度の差によって学習の差がでないように、講師のほか、リ・カレントの事務局スタッフで手厚くフォローすることを心がけました」(リ・カレント:湯口)
体感ワークなどの演習は「オンラインで参加できる」内容に変更
通常の集合研修では5~6名のチームで取り組む演習を取り入れています。しかし、今回は、1人で自宅から参加する受講生もおり、どのような環境でも目的を達成できるように演習の運用方法を変更いたしました。
通常の集合研修では、「体感ワーク」と呼んでいる演習形式でアウトプットを出すことと、講義形式のインプットとを交互に繰り返すスタイルをとることで、受講者の納得感を深める構成にしています。この「実践」と「実践からの学び」を繰り返すサイクルをオンラインでも再現できるように、プログラムの内容を一部変更して対応しました。
オンラインになると、どうしても一方的に話を聞くスタイルになり、参加者からの発言・表現も言葉だけになりがちになります。リ・カレントの研修の特徴である、手や体を実際に動かしてアウトプットを行う体感ワークや、グループでひとつのアウトプットを作成する演習をすることが難しくなります。
「共同作業をする」「紙に書く」など、リアルな動作を含むワークはクラウド上の共有ファイルで対応
これらの演習の中に含まれる「共同作業をする」「紙に書く」など、リアルな動作を含むものや、2人以上の受講者で取り組む演習は、「クラウド上で共有したエクセルやパワーポイントファイルに書き込む」など、オンラインで対応できるワークに変更しました。
「会社の構造・報連相の重要性を理解するため体感ワークでは、役割分担とコミュニケーションの制約のなかから目的を達成するし、コミュニケーションの重要性を学んでもらう必要がありました。通常はコミュニケーションをポストイットを使った筆談の形で制約して行いますが、今回は共有のエクセルファイルに書くことで代用しました。加えて、役割分担は一人ずつ異なる役割カードを受講生に渡し、そのカードをもとに自分の役割を理解する方法に変更しました」(リ・カレント:湯口)
講義資料は伝える情報を極力シンプルに
もともと設計されていた研修では、3日間の研修期間中、架空の登場人物とストーリー設定があり、その世界観のなかで演習が進む内容でした。「That’s YOU!」という新入社員向け導入研修プログラムは、新入社員の目指す姿として、「全力行動メンバー」になることをコンセプトに、社会人の基礎となる「3つのスタンスとGDPCFAサイクル(※注釈)」を体感ワークなどを通して学びます。
この研修の特徴は、受講者が架空の登場人物と同期の役になりきることで、研修のワークをより身近な問題に置き換えることができます。そこで仕事のシミュレーションを行い、ビジネスパーソンの土台となる3つのスタンスを反復し、社会人としての土台を築くことを目的としていました。
しかし、オンライン研修においては、このような登場人物の設定などのストーリー要素があると、オンラインという限られた情報共有の場では、かえって「学び」の本質的な部分を削いでしまう可能性があります。
そこで、架空の登場人物の設定などのストーリー要素はすべて省く変更を行いました。
「オンライン研修では伝える情報を極力シンプルにするため、演習そのものに関連しない情報は省き、内容をシンプルにしました」(リ・カレント:湯口)
事務局から「サポーター」を配置し、運営体制を強化
受講者のサポートだけでなく、受講者と講師の繋ぎ役、フィードバックまで行う
リ・カレントが行ったオンライン研修では、講師のほかに「サポーター」を配置し、受講者のきめ細かなサポートを行いました。グループワークを行う際はZoomの機能である「ブレイクアウトルーム」を活用し、グループワークではグループごとにオンライン会議室を分け、各グループにリ・カレント事務局より1名サポーターが入る体制を整えました。講師に加えて、リ・カレント事務局から8人、サポーターとして追加で参加しました。
サポーターは、担当のグループでの議論の内容を講師に伝えるブリッジ役として、またグループ内でパソコンの使い方が分からない受講者のサポート役、議論のフィードバック役など、多方面でサポートを行いました。
研修の中にサポーターを配置することで、講師はカメラの前で講義内容を伝えることに専念でき、サポーターと明確な役割分担ができるようになります。
「『ブレイクアウトルーム』でルームを分けてしまうと、それぞれのグループでどのようなコミュニケーションが行われているか講師が把握しにくくなります。そのため、分けたルームにそれぞれサポーターを配置し、パソコンの使い方で迷った受講生をフォローしたり、フィードバックしたり、各グループの状況を講師に伝えたりする役割を担いました。受講者様同士のコミュニケーションを円滑に行うためにも、サポーターの役割は重要でした」(リ・カレント:湯口)
オンラインという制約条件があるなかでも、サポーターとして事務局が積極的に関わることにより、演習の目的を達成しながら、ウェブでも実践できる研修プログラムを実践することができることがわかりました。
実施したことで見えてきたオンライン研修のメリット・デメリット
ここからは、リ・カレントが実際にオンライン研修をご提供するなかで見えてきた、オンライン研修ならではのメリットとデメリットを解説していきます。集合研修でできてウェブ研修ではできなかったことはあるのか、逆にオンラインだからこそできる集合研修とは違ったメリットなどをご紹介いたします。
オンライン研修のメリット
①グループ内で行われるワークの内容を、講師がリアルタイムに把握できる
従来の集合研修では、研修の場で模造紙や演習のシート、ポストイットなど、その場で紙に手書きで書く演習では、講師が受講者のグループ内でどのようなコミュニケーションが行われているかを把握することが難しい側面がありました。
しかし、研修をオンライン化するにあたって、ワークのアウトプットをオンラインの共有ファイルへ書き込んでいく形式に変更したことで、講師がグループ内でどのようなアウトプットをどのようなコミュニケーションで進めているのか、リアルタイムに確認することができるようになりました。
②グループワークで作成した成果物がデータで残る
集合研修で受講者がメモをポストイットに書いて、大きな模造紙などに貼って成果物を作っていくようなワークの場合、グループで出した成果物の写真を撮影したり、データ化する作業が必要でした。あとから振り返りを行うときにも、わざわざ大きな模造紙をもう一度貼り出すなど、振り返りに手間がかかっていたところもあります。
これらのアウトプットも、オンラインで共有ファイルに書き込む形式に変更したため、受講者が作成したアウトプットを、データとしてそのまま残して、必要なときにすぐに取り出して使えるようになりました。
③ワークでのコミュニケーション量が増える
従来は受講者が手書きで書いていたワークを、キーボードからのタイピングによるテキスト入力に変更したことにより、手書きよりも多くの情報量を伝えることができるようになりました。
「演習で作成するアウトプットを、すべてエクセルやパワーポイント等の共有ファイルで行ったことで、講義後もデータが残せることや、講義中リアルタイムにグループで行われているコミュニケーションを講師が把握できたことは、新しい発見でした。
また、人によっては手書きよりもタイピングのほうが早いため、ワーク内でコミュニケーションできる情報量が増えたのもウェブ研修ならではのメリットでした」(リ・カレント:湯口)
オンライン研修のデメリットと解決策について
①受講者のリアクションが分かりづらい
→事務局のサポーターが積極的にオーバーリアクションを行うことでサイン出しを促す
オンライン研修では、講師が受講者の表情、姿勢、メモを取る様子など、受講者のリアクションを認識しづらいことがデメリットとして挙げられます。
リ・カレントの集合研修では、受講者の反応に合わせて講師が話す内容をその都度変えていきます。受講者がメモを取るタイミング、表情、姿勢などから、受講者の理解度や納得度を測って説明を補足したり、ワークに取る時間を伸ばしたり、ワークの途中に講師からフィードバックを行うのです。
しかし、Zoomの画面上だと受講者一人ひとりの表情を追うのが難しく、受講者がメモを取る手元が見えないため、受講者がそれぞれきちんと理解ができたか分かりづらいという問題がありました。
そこで、受講者のリアクションについては、あらかじめグランドルールとして「オーバーリアクション」を設定することで対処しました。大きめにうなずく、理解したらOKサインを示すなど、画面越しでも講師とコミュニケーションを円滑にする工夫をして、サイン出しができるように設計を行いました。
ここでも、事務局としてのサポーターが重要な役割を担っています。
「コミュニケーションを円滑に行うためにも、サポーターの役割は重要でした。サポーターが画面上で一緒に参加し、サポーターが率先してサイン出しを行うことで、受講者のみなさんのコミュニケーションのサポートができました。
対講師について言えば、受講者からのうなずきや笑い声が、講義を行う会場のムードや講師の熱量にも影響します。講師と同じ現場にリ・カレント事務局サポーターが在席し、サポーターがある意味盛り上げ役となり、会場のムード作りにも貢献しました」(リ・カレント:湯口)
②集中力の持続が難しい
→集合研修よりも多く休憩の回数を設けて、1回の休憩を長めに取る
オンライン研修では、同じ姿勢でパソコンの画面とWEBカメラに向かい続けるため、体を動かすような集合研修よりも、受講者が集中力を持続させるのが難しい側面もあります。
英国のBBCテレビは「オンラインでの通話は対面で話すよりも集中力が必要とされる。相手の意図を読み取りにくいため、対面よりもエネルギーを余計に使う」と伝えています。また、米国の研究によれば、「カメラに映ると自分が舞台の上に立っているようなプレッシャーを感じてストレスになる」という分析もあります。
そこで、リ・カレントでは受講生が集中力を持続できるように、オンライン研修では集合研修よりも多く休憩の回数を設け、1回の休憩を長めに取るようにしています。
また、WEBカメラに映るとストレスを感じるという疲れを軽減するために、モニターを少し離れた場所に置く。ときにはカメラ機能をあえてオフにすることが効果的だと言われています。必要がないときにカメラ機能をオフにしてもらうなど、臨機応変に対応していくことが求められます。
実施して見えてきた、オンライン研修の課題と解決策のポイント
ここからは、オンライン研修を実施して見えて来た、オンライン研修ならではの課題を解説していきます。集合研修とは違い、オンラインだから生まれる新たな課題とその解決策についてご紹介します。
事務局による意図的な受講者同士の横のつながりづくりの必要性
集合研修では、数名ずつのグループに分かれて着席して研修を受講します。同じグループになった受講者同士や、ランチの際に自然と受講者同士の交流や講師と受講者の交流が生まれます。
オンラインではそれぞれがリモート環境にあるため、あえてコミュニケーションの場を設ける必要があります。
「物理的に場所が離れてしまうことで、少人数グループでのコミュニケーションの時間が減ったことは確かです。研修会場であれば、同じグループになった人で休憩時間に話したり、横のグループの人と会話が生まれたりといったことが自然に発生するのですが……。
オンラインでの研修では、休憩時間中にZoomのグループをシャッフルするなど、意図的にコミュニケーションの場を設計する必要があると感じました」(リ・カレント:湯口)
2人以上で行うワークの再開発
新入社員研修で行う名刺交換、お辞儀の練習等の「マナー研修」などをどのように行うかは、今後の検討が必要です。新人導入研修ではプログラムの中に2人1組で行うビジネスマナー研修がありました。これらの2人以上で行うワークについては、電話対応の練習など、リモート環境でもできる演習から取り入れていくことも一案でしょう。
リ・カレントが考えるオンライン研修実施のポイントまとめ
ここまでリ・カレントが実際に行ったオンライン新入社員研修の実例から、オンライン研修実施のポイントを解説致しました。
リ・カレントでは、受講者に伝えるべき情報をきちんと伝えきる、1人で参加しても目的を達成できるように、受講者の様子を見ながら研修当日もプログラムの組み替えを行ってオンライン研修を実施しました。
これからオンライン研修を検討されている人事担当者の皆様に、少しでも参考にしていただければ幸いです。
<リ・カレントが考えるオンライン研修実施のポイントまとめ>
・一方向の講義になりがちなオンライン研修も、オンラインでできる演習を取り入れインタラクティブな内容にする
・アウトプットをクラウド上で共有して学びを可視化する
・講義で伝える情報はシンプルにする
・「サポーター」を配置しパソコンの使い方を含めた受講生のサポートや講師とのブリッジを行う
・受講者は「オーバーリアクション」
・集中力を切らさないよう休憩の取り方に工夫をする
※注釈:3つのスタンスとGDPCFAサイクル
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