
役職がなくても発揮できる「共感型リーダーシップ」
役職のない入社5~10年目の中堅社員に、「リーダーになりたくない症候群」は増えていませんか?
それは、「リーダー=集団の先頭に立ち、方針を示し、統率する者」…という”思い込み”のせいで、自信を持てないことが一つの要因かもしれません。
変化の激しいVUCA時代、「リーダー」の形も多様化しています。
しかし、リーダーシップの発揮条件は変わりません。それは、役職に紐づく権限などではなく、『目的思考』によって生まれる自らの『想い』で、周囲の『共感・協働』を引き出す力です。
「目の前のお客様や仲間を幸せにしたい」
「自社の商品サービスで課題解決の助けになりたい」…
これらは、「そもそも何故、何のため」を自らに問う「目的ドリブン思考」から生まれる純粋な影響力。誰もが持てるリーダーシップの源泉なのです。
「こうしたい!」という想いの発信で、周囲を自然と動かす『共感型リーダーシップ』についてご紹介します。
目次
若手・中堅社員がプレイヤーを志向する要因
最近の若手社員や中堅社員は管理職になりたがらず、プレイヤー志向が強い傾向にあります。
なぜそのような傾向にあるのか、4つの要因が考えられます。
- プレイヤーとしてのリスキリングやアップスキリングで手一杯
変化が激しく、予測の難しいVUCA時代に、リーダーや管理職としてのスキルが身に付いていない状態で抜擢されることに対して、後ろ向きなリアクションをするケースが多く見られます。
- 学生時代、入社以来の経験
学生時代をSNSを中心としたフラットな人間関係の中で行動してきた人が増え、また入社後に後輩がいないまま育ってきたというような環境の人が多くいます。それゆえ、自分にはリーダーができない、または向いていないと感じていると考えられます。
- チャレンジやキャリア開発に対する心理的”非”安全性
変化の激しいVUCA時代において、チャレンジや変革は必要ですが、心理的に”非”安全な状態ではなかなか一歩を踏み出せないのだと考えられます。
- ジョブ型人事制度の影響
近年のジョブ型人事制度の浸透・拡大によって、マネジメント量や対人能力よりも職務遂行能力(スキル)を高める方が市場価値を高められるのではないか、という意識が強まったものと考えられます。
リーダーシップを高める2つの要因
では、どのようにリーダーシップを高めればよいのでしょうか。
リーダーシップを高めるためには、継続的な学習が欠かせません。継続的な学習として、次の2つが求められます。
(1)個人としての経験学習サイクル
(2)チームとしての組織学習サイクル
個人:経験学習サイクル
経験学習サイクルとは、経験を通じて学んだ内容や知識を次に活かすプロセスのことです。「経験→内省→持論化→挑戦」というサイクルを繰り返すことで成長する仕組みとなっています。
個人としての経験学習サイクルは、次の4つのプロセスを通じて、リーダーシップに必要なスキルとは何かをインプットします。
①さまざまな業務体験・経験を積む
②体験や経験を振り返り、内省する
③「どうすればうまくいくか」と持論化する
④再び挑戦(チャレンジ)する
ただし、この①〜④だけでは個人の頭の中だけで完結してしまうため、自分のチームで実体験を積み、学習する必要があります。
チーム:組織学習サイクル
先ほど説明した個人の経験学習サイクルを通じて学んだことや取り組みたいことをチームの組織学習に拡げるには、以下4つのプロセスがあります。
⑤チーム内の上司やメンバーに訴え、共感を得る
⑥上司やメンバーから支援を受ける
⑦上司やメンバーと協働する
⑧チームとしての成果・価値創出活動に貢献する
①〜⑧を通じてリーダーシップの経験がアップデートされ、新たな学習サイクルにつなげることができるのです。
個人における経験学習サイクルとチームにおける組織学習サイクルの両立を実現するためには、チーム内の上司やメンバーのサポート体制が必要不可欠です。
では、これらを踏まえて「自分はリーダーに向いていない、なれなくてよい」と考えているメンバーには、どのようなリーダーシップ発揮の形が考えられるでしょうか。
セルフドライブ型リーダーシップ/巻き込み型リーダーシップ
リーダーシップの経験がなく自信がない若手・中堅社員は多く存在しますが、実はリーダーシップは役割性格であり、立場や周囲からの期待によって割り当てられるものです。
つまり、リーダーはDNAや育ち(キャラクター)などによって決定されるものではないため、社会的または組織的ポジションがない人にも求められます。
そのことを若手・中堅社員たちに認識してもらうことが重要です。
若手・中堅・リーダーの3つの層において、立場や周囲からの期待によって求められるリーダーシップは大きく次の3つに分けられます。
(1)セルフドライブ型リーダーシップ
(2)巻き込み型リーダーシップ
(3)チーム・エンゲージメント・リーダーシップ
ここでは、役職がないメンバーでも発揮可能な「セルフドライブ型リーダーシップ」と「巻き込み型リーダーシップ」について詳しく解説していきます。
セルフドライブ型リーダーシップは、自分自身を導くことを目的としています。
発揮のポイントとなるのは、「自己効力感」です。
忍耐や挑戦、学習を繰り返すなかで高めていく必要があります。
その発展形である巻き込み型リーダーシップでは、他者を先導することが目的となります。
意思発信力や関係構築力、問題発見解決力を発揮して「主体性」を見失わずに周囲を巻き込む必要があります。
リーダーシップを高める2つの力
これらを踏まえて、リーダーシップを発揮し、自身の思いや感情をチームや組織に伝播するためには、「認知」と「思考」の力を高めていく必要があります。
認知 … 現在の状況をどのように認知するか
思考 … 目的やミッションをどう考えるか
リーダーシップを高める「認知」
リーダーシップを高める「認知」の方法は次の5つです。
①アンコンシャスバイアス(無意識な認知の歪み)を解く
②成長マインドセットを持つ
③自己効力感を高める
④ネガティブ認知からポジティブ認知へと転換する
⑤ABCD理論で認知転換する
リーダーシップを高める「思考」
先述の5つの方法を用いて、バイアスがかかっていたり、ネガティブだったりする「認知」を脱却できた後は、「思考」を変えていきます。
リーダーシップを高める「思考」の方法は次の3つです。
①計画(施策・手順)と目標(ゴール・目標)を、目的(意義・価値)と結び付ける
②「とにかく思考」ではなく「そもそも思考」で問いを発する
→「Why」を語ると情動が突き動かされてハイモチベーション状態になる
→「そもそも思考」は目的に対する問いを考えるようになるため、自発的に改善策を考えるようになる
=目的ドリブン思考になる(自己を導く若手層が特に求められる)
③「そもそも思考」でミッション(使命)、ビジョン(将来像)、バリュー(行動規範)を考え、仕事の意義や意味に立ち返る
=ミッション・ドリブン思考になる(他者を導く中堅層が特に求められる)
特に、ミッション・ドリブン思考は、「顧客」や「社会」にとってというよりも、貢献する相手への「利他的つながり」で目的や使命を考えることを意味します。
したがって、外部環境に対する視野を広げ、監督や管理だけではなく経営にまで視座を向上させ、自部署に限らず他部署や社外にまで視点を転換する必要があります。
また、中堅層として他者を導き巻き込むリーダーシップを発揮するためには、共感を得ることも重要です。
共感とは、頭で理解(認知的共感)し、心で納得(情動的共感)することを指します。
若手・中堅のリーダーシップを高める上司の役割
これまで、若手や中堅社員のリーダーシップを高めるためには組織学習が必要であり、組織学習には上司やメンバーの協力やサポートが必要だと説明してきました。
上司は業務を教えるだけではなく、組織における役割を一緒にデザインし、将来的なキャリアも描いていくような人材育成をする役割が求められています。
また、若手・中堅社員にはそれぞれの価値観があるため、各メンバーの価値観が活きる役割を期待することで、リーダーシップを向上させていく必要があります。
リーダーへと成長するための中長期的な関わり方とは
若手・中堅社員がリーダーへと成長するために、上司は次の4つのポイントを押さえて中長期的に関わっていくことが求められます。
①若手のうちは「目的ドリブン思考」である「何のためにやるか?」を問いかける
②「人・組織の価値観」を既に持つ若手には、早いうちから指導・支援的な役割を経験してもらう
③日々の業務のやり取りだけに留まらず、リーダーとしてのキャリア開発の期待を伝え、支援や承認を行う
④リーダーとしての適性や能力があるという自己肯定感を高め、さらにチームを牽引できるという自己効力感を高める
役職がなくても発揮できるリーダーシップ
変化が激しく、予測が難しいVUCA時代においては、特に、若手や中堅社員を中心にリーダーになりたがらずプレーヤーであることを志向する傾向にあります。要因はさまざまですが、学生時代や人生において、リーダーやリーダーシップを発揮した経験が乏しいことも一因です。
しかし、リーダーシップは、DNAや生まれ持った気質、性格などによって向き不向きが決まるのではなく、本来は役割性格(ペルソナ)なのです。そのため、社会的または組織的なポジションにない人であっても向き不向きに関係なく、立場や周囲の期待によって、誰もが求められる役割といえます。
リーダーシップに対する経験や知識を獲得してもらうためにも、まずは個人の経験学習とチームの組織学習に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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