2022.12.9

チームを業績プレッシャーから解放する幸福優位マネジメント

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2023年4月には、賃金支払いに関連する労働基準法等の改正が行われ、中小企業においても就業時間内の生産性をいかに向上するかがより重要となってきます。
一方で、現場のマネジャーにヒアリングすると、以下のようなお悩みが挙がります。

・業績向上へのプレッシャーで、メンバーに対して指示命令スタイルになってしまう

・短期的な目標を追いかけてしまっており、チームの将来像を描けないでいる

・心理的安全性の高い職場づくりを目指しているが、実態は真逆になっている気がする

日々、仕事の目標を設定してPDCAを回すビジネスパーソン、その上司であるマネジャーはどうすれば良いのでしょうか?
このような不安な心理状態のマネジャーに対する処方箋が、「幸福優位」の考え方です。

今回は、既に1,000名を超える営業職マネジャーに受講、好評をいただいている「PERMAモデル」をベースにして幸福優位を導く「ハピネス・マネジメント3つの原則」をご紹介します。

ビジネスパーソンを取り巻く環境と幸福度

変化が厳しい現代は、予測が難しいVUCA時代と言われ、私たちビジネスパーソンを取り巻く環境は大きく変わりました。
そのような環境変化に伴い、イノベーションや変革などの要求が強くなったため、ビジネスパーソンが抱える業績プレッシャーやストレス、将来への不安などは高まっています。

ビジネスパーソンの幸福度

現代のビジネスパーソンはどのような時に幸福感を得るのか、日経が行った調査を参考に見ていきましょう。
「職場で幸福感が高まる時は?」という質問に対し、次の回答がトップ5を占めました。

1.仕事がうまくいったとき(40.5%)

2.給与が上がったとき(29.1%)

3.人間関係が良好なとき(26.1%)

4.仕事にやりがいを感じるとき(25.9%)

5.ボーナスが出たとき(17.9%)

(出典:日経BPコンサルティング,2021,「働く人のウェルビーイング調査」)

このアンケートでは、給与やボーナスが上がったときではなく、仕事がうまくいったとき=成功したときに、最も多くの人の幸福感が高まっていることがわかります。

現代の「成功と幸福」の捉え方〜幸福優位〜

ここからは、近年変わりつつある「成功と幸福」の関係性について見ていきましょう。

外因的成功・内因的成幸

私たちは幼いころから、目標を達成すれば幸せになれる、誰かに認められれば幸福になれる、という思考で育ってきました。そのため、ビジネスパーソンとなってからも、「がんばって成功をつかめば、幸福になれる」と考えがちです。

しかし、がんばって手に入れた業績や結果、報酬や地位、他者承認や競争優位といった外因的要素に基づく成功(外因的成功)は、一時的な効果しかないことがわかっています。

一方、近年の欧米では、内因的要素=PERMAを満たせば幸福感が持続するという考え方が主流になりつつあります。PERMAは幸せを構成する要素の頭文字を取ったもので、ポジティブ心理学の第一人者であるマーティン・セリグマン博士によって提唱されました。要素は次の5つです。

以上5つを満たすことが幸福感を高める要因(内因的成幸)なのです。このように「成功と幸福」の関係性は、「幸福感が高くなれば、必然的に成功する=幸福優位」という考え方にシフトしつつあります。

幸福感とパフォーマンスの関係

幸福優位の考え方では、幸福感が高くなれば必然的に成功すると考えられているわけですが、幸福感はパフォーマンスにどのような影響を与えるのでしょうか。

過去にアメリカでは、以下のような調査結果が出ています。

・創造性は3倍

・生産性は31%高い

・売上は37%高い

・欠勤率が低い

・離職率が低い

また、日立製作所のフェロー・矢野和男の著書『データのみえざる手』によると、日本においても、幸福感によって売上や生産性で10%差が出ていることが示されています。

幸福感の高まる組織とは

今後、生産性や創造性が向上する組織を形成するためには、業績中心のクローズド・ピラミッド型組織から脱却し、幸福中心のオープン・ネットワーク型組織へとブレイクスルーしていく必要があります。

そのような幸福中心の組織では、チームメンバーの幸福感がお客様の幸福感につながる、という良い関係性が生まれます。

そして、幸福中心の組織を形成するためには、チーム全体で、幸福感が高まる習慣を身に付け、理念を共有し、メンバーとの関係性を高め、相互に共感する状態を目指していかなければなりません。

幸福優位マネジメントを実現するために重要なのは、次の4つのポイントです。

・幸福感が高まる習慣

・相互共感

・理念共有

・関係促進

幸福感が高まる習慣をつけるには?

幸福感を高めるには、「レジリエンス力」が重要となります。

「レジリエンス力」とは、逆境や強いストレス、トラブルなどに直面したときに適応できる精神力のことです。速やかに立ち直る力とも言い換えられます。
仕事上で困難な状況にあった際に以下の4つの観点を持って向き合うよう癖づけることで、幸福感を高める習慣が身についていきます。

I HAVE : 自分のサポーター、味方となってくれる人

I AM   : 自分の得意なこと、強み

I CAN   : 過去の困難な状況の乗り越え体験

I LIKE   : 自分の大切な人、好きなこと、楽しかったこと

組織やチームのトップ、マネジャーの言語・非言語コミュニケーションはメンバーに伝染して組織の「感情規範」を決め、その結果として「組織風土」がつくられます。したがって、組織やチームのポジティブムードはトップやマネジャーが率先して取り組むべき仕事となります。

マネジメントをする立場の人は、脳内物質が分泌されるような習慣を積み重ね、困難な場面においてもポジティブな認知へ転換し、組織の関係性や共感を高めるムードをつくっていくことが重要なのです。

相互共感を得るためには?〜共感は非言語で示そう〜

相互共感とは「頭で理解する認知的共感」と「心で納得する情動的共感」がどちらも満たされている状態のことです。片方だけでは、相互共感とはいえません。日頃においては、情動的共感ができない、または、得られないことが多いのではないでしょうか。

人間は、言語情報よりも非言語情報(言語ではない情報)で物事を判断する傾向にあるため、マネジャーは部下やメンバーからの相談や雑談といった対話をする場面では、非言語情報によって共感を示すように心がけましょう。

理念共有をするためには?〜ミッションを自分の言葉で語ろう〜

マネジャーとメンバーの間ではコミュニケーションの十分度に大きなギャップがあり、以下のシーンではマネジャーは十分にコミュニケーションを取っていると感じている一方、メンバーは不十分だと感じています。

・仕事の意味について語る

・期待をかけていることを伝える

・貢献に対して感謝する

・意見やアイディアを求める

普段からマネジャーとメンバーとの間で情動的共感を得られていないことが、特にメンバーにとって「コミュニケーションが不十分だ」と感じる原因と推測されます。

理念共有をするためには、マネジャーとメンバーの間で共感を得ることはもちろんですが、まずはマネジャーがミッション(使命)やビジョン(将来像)、バリュー(行動規範)を自らの言葉で発信することが求められます。

関係促進をするためには?〜利他性で自分もメンバーも幸福に〜

幸福感を保つためのロサダ比率

人間が幸福感を保つためには、ポジティブな関わりとネガティブな関わりを2.9対1(約3対1)にすると良いとされています。これを「ロサダ比率」といいます。

つまり、ネガティブなことをメンバーに伝えなければならないとき、ネガティブなフィードバック1つに対して、ポジティブな承認や感謝を3つ添えると、単にネガティブな印象では終わらず釣り合いが取れるということです。

ポジティブな関わりでメンバーの自信を高める

自信は大きく「自己肯定感」と「自己効力感」の2つに分けられます。

「自己肯定感」は成功体験や実際の経験による過去の自分に対する自信、「自己効力感」は今後直面する課題や問題を解決できるという将来の自分に対する自信、と言い換えることができます。

マネジャーはもちろん、メンバーも「自己肯定感」と「自己効力感」が低ければ、より良い自分に変われる可能性は小さくなってしまうのです。

そこで、ポジティブな関わりでメンバーの自信を高めるように心がけることが重要です。自信を高めるといっても過去を変えることはできないため、将来、つまり「自己効力感」を高める必要があります。

自己効力感をどのように育てるか

それでは、どのように「自己効力感」を育てていけばよいのでしょうか。アルバート・バンデューラは以下のとおり「自己効力感を高める4つの要素」を提唱しています。

(1)制御体験  : 自分でやり遂げる経験をする

(2)代理体験  : 人を見て学ぶ

(3)言語的説得 : 周囲から承認の言葉をもらう

(4)生理的状態 : 良好な肉体・精神状態

このように、周囲からの承認はもちろん、肉体的・精神的に健全良好であることも「自己効力感」に影響する要素であることがわかっています。具体的な中身を見ていきましょう。

(1)制御体験によってメンバーの自己効力感を高め育成するためには、コーチング(自己決定を促す共育)とティーチング(他者決定で実行に導く教育)の両利きになる必要があります。つまり、答えを教えるティーチングだけではなく、シーンによっては、相手の答えや自主性、可能性を引き出すコーチングも欠かせないのです。

(2)代理体験をするためには、チームで経験学習サイクルを回す必要があります。職場ミーティングなどで成功体験を共有し、リーダーはメンバーを「褒める・魅せる・乗せる」ようにコミュニケーションを取ります。モデル人材がいれば、他のメンバーにも自己効力感が育まれます。

(3)言語的説得では3つのK(感謝、関心、観察)が重要です。本人がいない場で承認したり、本人の存在そのものを承認したりして、メンバーの幸福感を高めていきましょう。

(4)生理的状態は健全良好なものにするようメンバーにも発信します。「セロトニン的幸福」が高まる習慣のなかで紹介したように、6〜7時間の睡眠や朝15分の散歩などを繰り返すと変化していく、などの情報を伝えるのもよいでしょう。

相手も自分も幸福になるカギは「利他性」

リーダーやマネジャーとしてチームを引っ張っていく年代になるにつれて、「保守性(自分だけのため)」や「利己性(自分のため)」が強まってしまいがちですが、それではチームの幸福感は高まりません。

「利他性(メンバーやチームのため)」を磨き、ビジネス的技量だけではなく人間的器量を育むことが、相手だけではなく自分も幸福になるカギを握っており、チーム全体の幸福感を高めることにつながっています。

幸福優位マネジメントを実現するために

幸福優位マネジメントを実現するためには、幸福感が高まる習慣を身に付け、メンバーと相互共感・理念共有・関係促進を実践することが大切です。

幸福優位マネジメントでは、自分自身だけではなくメンバーが幸福になり、お客様も幸福になっていきます。

まずは、「職場の幸福感づくり」のためにできる小さな一歩を見つけるところから始めてみてはいかがでしょうか。

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