2022.12.15

【2022若手意識調査:徹底解説③】コロナ禍で揺らぐ若手の「不安・ストレス」が7割、4割に「価値観変化」も

若手が今何を思い、「働く」をどうとらえているのか。そして、これからの時代の若手育成に何が求められていくのか。
リ・カレントで一昨年から実施されている独自調査をもとに紐解く本コラム第三回では、若手社員が感じる「コロナ禍の影響」に着目し、調査の中から見えてきた生の声をお届けします。

単純集計解説:コロナ禍での精神状態・不安の内訳・価値観の変化

2020年の新春頃から日本でも急速に拡大した新型コロナウイルスの流行。
まもなく丸三年となる、感染症対策を行いながらの業務や教育施策実施に、我々設計側は徐々に順応しつつありますが、
コロナの影響を強く受けながら成長している若手社員たちの本音はどのようなものでしょうか。
特に、2021年度以降に新入社員として入社した方々は、いまだに対面での集合研修の機会をもてていないという場合も少なくありません。
今回のコラムでは「コロナ禍の影響」に関して、若手社員の心境や価値観の変化に踏み込んだ設問をまとめて解説します。

解説▷新型コロナウイルス感染拡大が日本で本格化してから1 年以上が経ちました。現在、ご自身はどのような精神状態にありますか。率直にお答えください。

「常に大きな不安・ストレスを感じている」(13.1%)、
「時折大きな不安・ストレスを感じることがある」(24%)、
「時々不安・ストレスを感じる」(35.6%)と、
なんらかのストレスを感じながら生活している回答者は全体の7割となっています。

今回の調査では、この何らかの不安・ストレスを感じている回答者に、その内訳を聞きました。

解説▷前の質問で「不安・ストレスを感じる」と回答した方にお伺いします。以下のうち、あなたの「不安・ストレス」において最も大きな割合を占めているものをひとつ選んでお答えください。

結果は、「自身の経済状況に対するもの」(27.7%)が最も多く、「世の中に対する漠然としたもの」(17.4%)、「キャリアに対するもの」(17.0%)が続きました。

各選択肢に比較的分散した回答となっていますが、コロナ禍といえど、直接的な「健康に対する不安」は全体の1割程度に留まっている点に注目すべきでしょう。

大きな打撃を受けた経済についてや、それに伴った自身のキャリアなど、感染症の拡大がもたらした社会への影響と、それが自分自身にどのように波及してくるかという部分への不安が表れた結果といえます。

解説▷新型コロナウイルス感染拡大によって、市場や就労環境に大きな影響が出ています。仕事やキャリアに対する考え方に変化はありますか。

また不安やストレスの有無に関わらず、自身の仕事やキャリアに対する考え方への変化有無を聞いた結果、
「大きく変化がある」(9.6%)、「部分的に変化がある」(29.9%)と何らかの変化を感じている回答者が全体の4割となりました。

クロス集計解説:コロナ禍での観変化ごとに見る「仕事観」「不安・ストレス」

リ・カレント調査部では、
「Q23:コロナ禍を経た仕事観・キャリア観の変化」について、
回答者のより詳しい状況を探るべく、Q23の回答結果を集計軸として、他設問とのクロス集計を行いました。

解説▷コロナ禍での価値観変化×仕事観

以下は「Q7:仕事観(=なんのために働くか)を所持しているか」の回答結果と照らし合わせた簡易グラフです。

結果として、
仕事観(=何のために働くか)を明確に持っている回答者と、コロナ禍を経て仕事観・キャリア観に大きな変化があった回答者に相関関係があることがわかります。
また同様に、仕事観を持っていない回答者と、コロナ禍を経て仕事観・キャリア観に変化がなかった回答者にも相関関係があることも見て取れます。

 

※**数値=全体との有意差検定で有意水準1%以下(99%以上の信頼性)で全体との有意な差がある結果

 「価値観が明確になっている」回答者ほど「価値観が変動している」という結果は、
一見すると矛盾しているように感じられるかもしれません。

しかし、コロナ禍以降の環境変化に戸惑う若手社員の皆様と、コロナ禍以前から研修現場でご一緒してきた弊社の視点でこの結果を読み解くと、コロナ禍に今なお揺さぶられている若手のリアルな姿が見えてきます。

仕事観を明確に持っている若手社員は、そのほとんどが自身のキャリアや働く意味に対し非常に関心が高く、自覚的です
会社組織から促されずとも、自社の状況や外部環境の情報収集を日常的に行っている人も少なくありません。
現状における自身の仕事観・キャリア観=何のために・どのように働くかを明確にしている、価値観の軸に自覚的である社員ほど、コロナ禍が自社や業界に与えた影響や変化、それが自身のキャリアにどのような影響を及ぼすかに関心があり、それに伴った危機感を感じやすいといえます。

解説▷コロナ禍での価値観変化×ストレス・不安

自分がなぜ・どのように働きたいかが明確な回答者と、コロナ禍で仕事観・キャリア観に大きく変化を感じた回答者の相関関係を踏まえ、改めてQ21「コロナ禍でのストレス・不安」を見てみましょう。

コロナ禍で仕事観・キャリア観に大きな変化を感じた回答者と、今現在も「常に大きな不安・ストレスを感じている」回答者に相関関係があることが見て取れます。

また全体的な傾向としても、価値観の変化が明確で大きい人ほど、不安やストレスの大きさ・頻度も増している傾向があります。

これらのクロス集計結果からは、
働くことの根幹ともいえる「なぜ働くか」「どのように働くか」といった価値観や、それを支えてきた経験を、コロナ禍によって大きく揺さぶられ、今も大きな不安・ストレスの中にある若手社員たちの姿が見えてきます

育成のポイント:水面下で膨らむ若手社員の不安、安定には仕事の「軸」と応用可能スキルが必須

コロナ禍が始まった当初と比較し、感染症対策と並行した教育施策実施や、リモートワークへの対応など、社会の順応は進んでいるといえます。

しかし一方、こうした状況の中で自らのキャリアを築いていくことへの先例は確立されておらず、特にコロナ禍の真っ只中に入社し育成されてきた若手社員を中心に、働くこと・暮らすことへの不安は水面下で増幅し続けています。

今回のクロス集計で明らかになった、
仕事観・キャリア観を明確に持つ若手回答者と、コロナ禍での「観変化」の大きさとの相関関係、
また彼らがコロナ禍での「不安・ストレス」を強く感じているという結果は、
育成者として常に念頭においておく必要があるでしょう。

若手社員が今もまさに感じている「価値観の揺らぎ」「コロナ禍でのストレス・不安」は、社会情勢の不安定さゆえ、離職率といった見えやすい数値にはまだ表れていないかもしれません。

しかし、彼らがこの先、外部環境の大きな揺らぎに心身を振り回されることなく成長を続けるためには、
早い段階での、「自分はなぜ、何のために働くのか」という価値観の再言語化、
またどんな環境でも応用可能なスキルの習得がいっそう不可欠になっていくでしょう。

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