ヒューマンキャピタル2018講演:「定時にコミット」新人が「成果にコミット」若手に化ける いまどきOJT3つのカギ

2018.09.10

【登壇者】
楠 麻衣香
リ・カレント株式会社 若手人材開発事業部トレジャリア
プロジェクトマネジャー


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貴社の1~3年目育成はOJTと連動していますか?
働くことに対する新人のホンネをOJTトレーナーがつかまずして、自立した貪欲若手を
育てることはできません。

近年、新卒採用数の増加に伴い、いわゆる氷河期世代にあたる中堅社員層ではなく、2・3年目の若手社員がOJTトレーナーとなることが増えています。彼らがやってしまいがちな”あちゃ~”なOJTは「Oお任せあれ! J自分で T手取り足取り教えよう」。良かれと思って教えすぎてしまうことで、指示待ち受け身状態の新人を育ててしまっているケースが良く見られると言います。

「目標は定時に帰ること。でも仕事で成長したい」という20代が職場に増殖するいま、新人とOJTトレーナーがともに「働くを楽しむ」若手にトランジションするためのコツを、今年の新人傾向を交えてご紹介します。

講演3つのポイント

  1. OJT有効化の当たり前「あるべきOJT像の可視化&共有」に潜む落とし穴

  2. 「乾けない」若手世代の特徴 5つのメンタリティから考える
    OJT課題と注力点

  3. 「新人とトレーナーが共育で」「成長ゴールを明確に」「OJT上長を巻き込む」いまどきOJT3つのポイント

OJTの課題とOJT有効化のポイント

いまどきのOJTについて、皆様はどのような課題をお感じでしょうか。会場内では、参加者の方から様々な課題が挙がりました。多く聞かれたのは次のようなものです。

  •  「きちんとした制度がなく、人事担当者は現場に任せきりで属人化している」
  • 「OJTトレーナーはとにかく大変だと言っており不安が大きい反面、新人のために頑張りたいという気持ちは強い。なんとか自分でやらなければと頑張りすぎて孤立している」
  • 「現場マネジャーが無関心、または関わってあげたくても関わり方がわからない状況にある。トレーナーも新人も若いので、教えなければいけない対象が多い」

こうした悩みを解消し、OJT有効化するためのポイントは2つ。
「あるべきOJT像を可視化し、共有すること」、「仕組み & Off-JT」です。

当たり前のことに思われるかもしれませんが、実はこの「あるべきOJT像」が可視化されていないケースが多く見られるのです。
あるべきOJT像の可視化とは、「OJTがうまくいったときの理想とする職場ってどんな状態なんだろう」を見える化することです。具体的には、理想とするOJT職場、自社の目指す新人・OJTトレーナー像、そしてそこに連動した自チームの目指す新人像を描くことになります。

「このときに大切なのが、新人・OJTトレーナー自身がイメージできる具体的な言葉で表すこと。
あるべきOJT像がないままにOJT研修をやってほしい、というご相談をいただくことが多いのですが、残念ながらそれではうまくいきません。人事の皆様がファシリテーターとなり、理想の姿を言葉にしている企業様は、やはりOJT施策がうまくいっているケースが多いですね。OJT上長を交えて、絵や文字で表してみることが効果的です」

トレジャリア(若手人材開発事業部)による、理想のOJT像

「あるべきOJT像」が明確になることではじめて、仕組みとOff-JT──関係者や役割を定義すること、面談シートなど場を運用すること、そして集合研修などを組み立てることが活きてくるのだと楠講師は言います。

いまどき若手の特徴 5つのメンタリティ

では、OJTの対象となる新入社員はどのような特徴を持っているのでしょうか。

リ・カレントでは、年間でのべ約2000人の20代の方とお会いする中で見えてきた彼らの特徴を、
「いまどき若手の5つのメンタリティ」と表しています。
メンタリティとは心理学用語で「物事を考える時の特徴的な心情のこと」で、物事の受け止め方にかかるフィルターのようなものです。そのため、このメンタリティ自体には良し悪しはありません。レッテルを貼るためのものではなく、あくまで若手世代を理解するための1つのツールとなっています。

これらのメンタリティは主に育ってきた環境によって作られるものです。大きな要因は3つ、
家庭環境・学校教育・社会経済です。

「彼らの育ってきた環境を一言で言うと、『頑張れば上がっていく』という感覚がない中で成長してきた世代なのです。そうした外部環境、保護者や周囲の友人との関係性が変化したことによって、次のような特徴が出てきています」

「で、いいや」メンタリティ
全般的にそこそこで満足ですという感覚です。特徴的な言動としては、いわゆる指示されたこと以上のことをやらない、ということが見られます。
ポイントとしては、彼ら自身は決して手を抜いているわけではなく、100%で取り組んでいるが、上の世代から見ると80%くらいに見える、というギャップが生まれているということです。
反面、言われたことは手を抜かずまじめにやるという良い面もあります。

「正解を検索」メンタリティ
「物事には正解がある」という感覚と、「その正解は自分の外側にある」という感覚です。わからないことがあると検索エンジンや周囲の先輩に正解を求め、自分で考える力が鍛えられていないように見られます。
一方で、情報検索に慣れているため、ハッシュタグ文化に見られるような高いキーワード力を持ち、あいまいな情報を処理することに長けています。

「クローズドマインド」メンタリティ
思考や感情が表に出ず、何を考えているか分かりづらいという特徴です。
彼らはモバイル文化の中で育ってきました。彼らにとって情報は文字・絵でやり取りするもので、コミュニケーションはとりたいときに好きな相手ととりたいだけとるものであると言えます。対面でのコミュニケーションで何かを読み取ることをしてきていないため、単純に表情筋が鍛えられていないと言えます。
良い面としては、対立を好まず、まず調和を取ろうという姿勢を持っています。

「貢献あこがれ」メンタリティ
遠い世界の「貢献」にあこがれ、目の前の努力がそれに結びつかないという感覚です。「誰かにありがとうと言われる仕事がしたい」といった思いを彼らが持っていることを、新卒採用面接などの場面でよく耳にします。貢献のために周囲に働きかけることで人間関係に摩擦が起きることを恐れ、つながりたいのにつながれないジレンマを抱えている、という特徴を持っています。
反面、「目の前の人が自分を受容してくれる安心感を得られたとき」に、強いエネルギーを発揮する点が特徴的です。この点は、いまどき若手のOJTを考えるうえで大きなポイントとなります。

「勝手にプレッシャー」メンタリティ
叱られることに慣れておらず、指導する側としてはちょっとした指摘として伝えたことを「人格否定」のように受け取ってしまうという感覚です。
相手の言葉の裏側にある意図を組む力が弱くなっているため、指導者側からの意図とずれたところで指摘を受け止めてしまう傾向があります。
早期に挫折突破体験とストレスコーピングを身につける必要がある一方、きちんと動機付けを行うことで高いパフォーマンスを発揮します。

「乾けない」世代──『モチベーション革命』(著:尾原 和啓、幻冬舎出版)より

こうした特徴は、世代ごとのモチベーションの源泉について記した書籍、『モチベーション革命』にも紹介されています。

「著者の尾原さんはいまどき若手世代を『乾けない世代』だと表しています。何かを満たしたい、飢えているという感情で行動しない世代である、と。5つに大別される人間のモチベーションの源泉のうち、良好な人間関係、意味合い(仕事の意義を求める)、没頭できることを重視しているということなんですね」

「定時にコミット」新人のマインドを「成果にコミット」に変えるポイントは、ここにあります。
彼らは、自身が取り組んでいる仕事の意味合いがわかると、一心にそこに打ち込めるのです。
裏を返すと、OJTトレーナーが新人に「彼らが取り組んでいる仕事の意義」を語れなければならないと言えます。

会場内での感想シェアでは、
「うちの新人は『勝手にプレッシャー』の傾向が強いみたいで周りから心配されていて……」
「彼らが上に立つ中堅層や管理職層になったときにも、この特徴は重要ですね」
といった声が挙がっていました。

いまどきOJT3つのポイント

これらの特徴を踏まえた、いまどきOJTのポイントは次の3つです。

新人・OJTトレーナーの「共育」

OJTにおいて見落とされがちな視点の一つに、OJTは新人のみならずトレーナーにとっても成長の場であるという点があります。新人とトレーナーがOJTを通してともに成長していく環境をデザインすることで、新人を一人前にするにとどまらない成果を生み出すことができます。

「わたしもできないから一緒に学ぼう」と言い切る

育成現場の担当者のお話を伺っていると、若手OJTトレーナーの中には「勝手にプレッシャー」メンタリティをはたらかせ、「新人に未熟な姿を見せてはいけない」と思い込み、不安を抱えている方が多くいることに気づかされます。
人事部門からOJTトレーナーに「できないことは一緒に学ぶ」というスタンスを共有することで、トレーナーにとっては不安を解消できると同時に、新人から見ると「自分に対して、そんなに率直に話してくれるのか」とトレーナーを身近に感じるきっかけになります。それによって、いまどき新人が持つ「貢献あこがれ」メンタリティがはたらき、強いエネルギーを引き出すことができるのです。

トレーナーの成長も同時にデザインする

トレーナーがOJTを通してどのように成長していくかを描くことで、自身も成長過程にある若手トレーナーの早期戦力化。また、ゴールが明確になることで、トレーナー自身がOJTの意味合い(仕事の意義)を理解し、モチベーションを高めることにもつながります。

新人の成長ゴールを明確に!

全社新人像×現場新人像

「OJTの課題とOJT有効化のポイント」の項でも先述したように、理想とするOJT職場、自社の目指す新人・OJTトレーナー像を具体的なイメージに落とし込むことが重要です。
そのうえで、会社の新人像に連動する形で自チームの目指す新人像を描くことで、トレーナーが一人で新人育成を抱え込むことなく、チームで新人を育てる体制を作ることができます。

業務スキル×社会人の基礎

育成プランを組み立てていく際、実務に関わるスキルを身につけさせようと考えるトレーナーは多いのですが、抜け落ちがちなのが社会人の基礎という視点です。人事部門と現場で連携し、プランを作り上げていく必要があります。

OJT上長を巻き込む

OJT担当と新人への1on1ミーティング

上長からOJT担当・新人に関わりを持つことは重要です。同時に気をつけるべきは、上長から一方的に何かを教えることで、指示待ち受け身の体制を作らせてしまうという点です。
こうした場合に効果的な施策の一つが、1on1ミーティングであると楠講師は言います。1on1ミーティングは自立を支援するものであるため、結果が出るまで時間はかかりますが、新人・トレーナーへの関わりとして有効です。
ある企業では、OJTトレーナーの育成会議を新人配属先のOJT上長間で行っています。育成方針が定期的に上長間で共有されることで、トレーナー自身の成長像をぶらすことなく、OJT現場でのサポートにつなげることができます。
OJT現場の上長を巻き込む施策を、人事部門から作り上げていくことが重要であると言えます。

「最後に、どの世代であっても、新人・若手の方には無限の可能性があるということを忘れないでいただきたいのです。メンタリティはレッテルを貼りたいのではなく、彼らの特徴を理解してよい方向に向けてあげるためのものです。彼らのモチベーションの源泉が、これまでの世代とは少し違っているだけ。うまく方向を合わせてあげることで、爆発的な力を発揮する可能性を彼らは持っています」

参加者の声

「うちの新人だけが出来が悪いのか、と考え込んでいましたが、彼らの世代の特徴として捉えることが大切だとわかりました」
「トレーナーはみんな懸命に取り組んでいるからこそ、彼ら自身の成長につなげられるOJTになっているか、今一度考えてみようと思います」
「いまどき世代の特徴だけでなく、その背景を知ることができ、よかったです」


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