2023.12.12

新入社員の”びっくり退職”を防ぐ 内省力強化「メタ・リフレクション」3ステップ

新入社員のメンタルダウンに関する不安は、どの企業においても悩ましい問題です。

    • ・配属されてから、だんだんとモチベーションやパフォーマンスが下がっている
    • ・「自分なんかまだまだ」「先輩に助けてもらってばかり」とネガティブな言葉が並ぶ
    • ・「キャリアの先行きが見えない」「やりがいが見つからない」と不安が見える

こうした状況の根幹には、新入社員の内省力が例年より低い状況があるとリ・カレントでは考えています。
自身を振り返る力が低いために、「一人前」「キャリアプラン」を過度に理想視し、かつ、自身のことを過少評価して落ち込んでしまうのです。

彼らのメンタルダウンを防ぐには、次の2つが重要です。

    • 1.行動と内省を繰り返して自分を客観視する習慣をつける
    • 2.視野を広げて認知の歪みに気づかせる

今回のコラムでは、新入社員のメンタルダウンを防ぐためのポイントを解説するとともに、日々の経験を学びにつなげて成長を加速させる内省力強化の3ステップを紹介します。

鷲尾 大樹
監修者
鷲尾 大樹
略歴
リ・カレント株式会社 若手人材開発事業部

監修者詳細

【忙しい人のための1分でわかる解説】

1.新入社員の「びっくり退職」に潜む心理的要因

新入社員や若手社員の退職において、最も顕著な要因の一つが「メンタルダウン」です。配属当初の面談では元気に見えるものの、突然の退職や精神科への通院といった事態が起こり得ます。

育成側からすると「不調が本格化する前に相談してくれれば……」と思ってしまうかもしれません。

しかし、当人からすると意図して上司や人事に不調を隠しているというわけではなく、自身が抱える不安に無自覚であり、体調等に表れてはじめて気づくというケースが少なくないのです。

なぜ、こうしたことが起きるのか。
私達リ・カレントは、2つの心理的要因があると考えています。

心理的要因①:Z世代は不満よりも「不安」で辞めていく

一つ目の心理的要因は「不安」。

若者世代の退職理由についてデータをもとに解説された『ゆるい職場-若者の不安の知られざる理由』では、若い世代は不満よりも「不安」で辞めていくと著されています。
(参考文献:古屋 星斗『ゆるい職場-若者の不安の知られざる理由』、中央公論新社、2022)

「今の会社にこのままいて成長できるのか」という不安が新入社員に与える影響は大きく、実際に新入社員・若手社員の方々から話を聞いていても「これでよかったのか」「後悔はないだろうか」と現在・未来に対する不安を抱えている方が非常に多くいらっしゃいます。

こうした不安の背景には、自己決定感の不足が関係していると考えられます。
自身の理念や考えに基づいて決定・判断するのではなく、他者にとって迷惑でないか・悪く思われないかという他者依存の判断軸で物事を選ぶことが常態化しているために、どこまでいっても自分に対する納得感が得られない状態になっているのです。

心理的要因②:「曖昧さ耐性」の低さ

二つ目の心理的要因は「曖昧さ耐性」の低さです。
「曖昧さ耐性」とは、不明確な状況にどれだけ不安を感じるかを指します。

曖昧さ耐性が高い人は、先の見通しが立たない状況でも冷静に対処できる傾向があります。
一方で、曖昧さ耐性が低い人は、はっきりとした答えがない状況で不安を感じ、自分の気持ちを整理するのが難しいとされています。
特に新入社員や若手社員において、曖昧さ耐性の低さが顕著に感じられることがあります。

「新入社員が正解探しをしている」と感じるのは、ここに起因しているでしょう。
自分の判断が難しい状況で、けれど曖昧なままにしておくことに耐え切れず、他人に正解を求めることで安心感を得ようとするのです。

特に若い世代は、自己効力感が低いがゆえに、未知の状況に適応することに苦労する傾向が見受けられます。

2.新入社員が陥る「ネガティブ内省」

では、こうした「現在・未来への不安」や「曖昧さ耐性の低さ」によるストレスに対して、育成側はどのように対処していくべきなのでしょうか。

リ・カレントではこれらの心理的要因から引き起こされる「ネガティブ内省」状態こそ、解決すべき課題であると考えています。

これは3つの要素によって形成されています。

  • 認知の歪み:うまくいかなかった・迷惑をかけた(と自分が思っている)
  • 能動性の低下:余計なことはやめておこう・迷惑をかけないようにしよう
  • 自己評価の低下:自分には価値がない・同期より遅れている

まず、過去の失敗や経験に対する認知の歪みが、自己評価を下げる要因となります。

自身がした言動に対して、「うまくいかなかった」「他人に迷惑をかけてしまった」と認識することで、自分に価値がないと感じ、自己評価が低下してしまいます。

その結果、労働意欲が減少し、過度な配慮や避ける行動を取ることが増えていきます。
仕事に対する積極的な姿勢が損なわれ、過度な自己制約が生じることで、成果やパフォーマンスが十分に発揮されない可能性があります。
それによって、さらにネガティブな認知が強化され、不安やストレスを引き起こす要因となっていくのです。

特に、新入社員や若手社員には、他者からの期待や、自己評価の低さに関連する問題が見受けられます。
彼らは、他人に迷惑をかけてはいけないとの社会的なプレッシャーや、自己評価を過度に抑える謙虚さによって、フィードバックを受け入れにくい傾向があります。
また、業績の上昇や自己効力感が低いことから、自身の成長や能力を過小評価し、ネガティブな自己イメージが強化されてしまうことがあります。

このような認知の歪みから生まれるBADサイクルは、新入社員・若手社員の自己効力感を上げようとするにあたって非常に厄介な問題です。

ネガティブな認知を払拭し、前向きな姿勢を養うためには、適切なフィードバックと共に、自己肯定感や自己効力感の向上を促す取り組みが重要です。
リ・カレントでは、そのカギが「内省力の強化」にあると考えています。

3.なぜ内省力強化が新入社員育成に効果的なのか

内省力強化のメリットは大きく、特に今のビジネス環境では、内省を行うことで得られる価値が増しています。

実は、内省が現代の「業務」において、影響を及ぼすことは少ないでしょう。
なぜなら、内省なくとも仕事が進むように仕組みを作っていくことが、現代における成果の上げ方だったからです。

しかし、業務を行う「人」において、内省は自己評価やキャリアの方向性を明確にすることに役立ちます。
現代の仕事は多様で変化が激しいですが、内省を通じて自分自身の強みや弱点を把握することで、キャリアプランを描く手助けになります。
また、日々の業務の結果を振り返り、学びを得ることで、成長の機会を逃さずに済むでしょう。

内省を通して将来のキャリアビジョンや目標を持つことは、仕事に対するモチベーションを高め、やりがいを感じる源となります。
自分の価値観や適性を再確認し、その基盤の上にキャリアを築いていくことができるのです。

一方で、内省の不足が招くデメリットについても把握しておきましょう。

内省を怠ると、自己評価やキャリアの方向性が曖昧になり、自分自身に対する自信を失うことがあります。キャリアに期待感を持てない状況が続くと、モチベーションが低下し、業務のやりがいが損なわれることもあります。

また、最も大きなデメリットとして、内省を通じて得た学びを活かせなくなることがあります。
簡単に言うと「抽象化ができなくなる」のです。

この「抽象化が苦手だ」というキーワードは、新入社員の特徴として挙げられることが近年急激に増えてきました。

日常の業務で学んだ経験を振り返り、類推する力は、成長のために非常に重要です。
しかし、内省の機会を逃すと、「ここでやっている仕事が、いったい何の役に立つのか」が自身の中で意味づけられなくなり、新しい状況や業務に対する対応力が低下してしまいます。

内省を通して自身のキャリアに向き合う機会を持つことで、新入社員の「このままでよいのか」という現在・未来への不安解消につながります。
また、内省から自身の考えや価値観を明確にすることで、自己決定のための判断軸が育っていくのです。

4.内省力強化「メタ・リフレクション」3ステップ

では、実際にどのようにして内省力を強化することができるでしょうか。

私達リ・カレントの研修では、次の3つのステップで新入社員の内省力強化を行っていきます。

ステップ1:経験を拡げる・蓄える

ステップ2:俯瞰する・抽象化する

ステップ3:活かす

それぞれを具体的に解説します。

内省力強化ステップ1:経験を拡げる・蓄える

新たなステップを踏んで経験を拡げるためには、具体的な事象や知識を蓄えることが不可欠です。
これには自分自身の経験だけでなく、他者の経験や代理経験も含まれます。
自己の考えや価値観、業務の本質を内省するための材料を集め、抽象化していくことが重要です。

これは研修の場でトレーニングと成功体験を通じて育むことが効果的です。

もし貴社の新人フォロー研修などで「1年間の振り返り」を実施しているのであれば、そこにぜひ「感想フィードバック」の時間を設けてみてください。
同じ経験を他者がどのように受け取り、どう表現するのか。似たような経験をしていても、全く違った感想を持つ人もいるかもしれません。
感想のフィードバックを通してやり取りすることで、彼らの中にある「抽象化の辞書」を育てることに役立ちます。

内省力強化ステップ2:俯瞰する・抽象化する

個々の経験を俯瞰し、抽象化することで、それらを統合し理解を深めることができます。

先ほどの「感想フィードバック」の例で言えば、先輩・上司から褒められた経験をグルーピングして何か一つのラベルで表してみるという作業です。
仕事が早い、挨拶が元気、人の目を見て話を聞いている……この三つをまとめて抽象化すると「実直さ」になるだろうか、といった具合です。

また、ここで重要なのが同じことを他者の視点でも試してもらうことです。

例えば先ほどの「実直さ」を「エネルギッシュ」と捉える人がいるかもしれません。
仕事が早い、先輩に物おじせず声をかける、よくメモをするという括り方に変えて「報連相がスムーズだ」と捉える人もいるでしょう。

自己の強みや課題、他者の視点を比較しながら捉えることで、異なる角度から物事を見る力が養われます。
具体事象を抽象化し合い、異なる捉え方を共有することで、より多様な視点を得ることができ、内省力や抽象化力を高めることができます。

内省力強化ステップ3:活かす

経験や知識は、抽象化したうえで他の場面にどう活かすかが重要です。
活かそうと行動することで得られる、成功・失敗や指導の経験も貴重であり、それらを通じて新たな気付きが生まれます。

私達育成側は育成において自主性を重んじるが故に、つい彼らに経験することの重要性とか必要性を説得し、その気にさせようとしてしまいがちです。

しかし、1章をお読みいただいてお分かりの通り、彼らの自己評価や曖昧さ耐性の低さは経験数の少なさが大きく関係しています。
そのため、育成側としては体験・経験の場を研修等で提供したうえで、事後の意味づけを重視するのが望ましいでしょう。

まとめ

本記事では、新入社員のメンタルダウンを防ぐためのポイントを解説するとともに、日々の経験を学びにつなげて成長を加速させる内省力強化の3ステップを紹介しました。

新入社員のメンタルダウンを引き起こすと考えられる心理的要因は2つ。
「現在・未来に対する不安」と「曖昧さ耐性の低さ」です。

リ・カレントではこれらの心理的要因から引き起こされる「ネガティブ内省」状態こそ、解決すべき課題であると考えています。

これは3つの要素によって形成されています。

  • 認知の歪み:うまくいかなかった・迷惑をかけた(と自分が思っている)
  • 能動性の低下:余計なことはやめておこう・迷惑をかけないようにしよう
  • 自己評価の低下:自分には価値がない・同期より遅れている

3章では、こうしたネガティブ内省に対して、内省力強化が効果的である理由を解説しました。

具体的な内省力強化は、大きく3つのステップに分けられます。

ステップ1:経験を拡げる・蓄える

ステップ2:俯瞰する・抽象化する

ステップ3:活かす

本記事が、貴社の新入社員育成にご活用いただければ幸いです。

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