2024.02.23

【管理職研修】新任管理職研修において大切なこと3選

「プレイヤーとして優秀だった人材を管理職に登用したものの、あまり本来の力を発揮できていないようだ」

「新任管理職のマネジメントがうまくいっていない」

といった悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか。

組織の要ともいえる管理職層に問題があると、部下が育たない、チームの成果が上がらないといった事態を招きかねません。これらは、従業員のモチベーション低下や離職といった組織の存続に関わるリスクにつながるもので、それだけに、初めて管理職になったときに実施される研修は重要です。

そこで本記事では、新任管理職研修において大切な3つの事柄について解説します。

石橋 真
監修者
石橋 真
略歴
リ・カレント株式会社 代表取締役社長

監修者詳細

管理職とは

管理職とは、企業のなかで一定の権限を持ち、部下や売上といった社内リソースを管理する役職を指しています。企業によって呼び方は異なるものの、日本では部門であれば「部長」、課であれば「課長」に当たる人材を指すのが一般的です。

管理職に求められる役割

管理職に求められる役割は、主に以下の5つです。

    業務管理

チーム全体を率いて売上や利益といった業績に関わる成果を上げるために、目標や進捗、改善といった業務を管理することが求められます。

  労務管理

従業員が安全に、安心して業務に当たれる環境を整備することも、管理職の役割のひとつです。

  経営層と従業員の橋渡し

管理職の役割は、「管理をする」ことのみにとどまりません。経営層と従業員をつなぐのも管理職です。

組織をひとつの目標に向かって動かすためには、経営層の考えや方針を細部にまで浸透させる必要があります。管理職には、組織全体が目指す方向性やビジョンを正しく理解したうえで、チームメンバーに浸透・定着させることが求められます。

  人材育成

チームメンバーの育成やサポートも管理職の仕事です。チーム全体で大きな利益を上げるためには従業員一人ひとりのモチベーションやスキルの向上が不可欠で、管理職はそのための環境づくりを担います。

  チームビルディング

優秀な人材を集めさえすればよいチームができるわけではありません。管理職には、多種多様なスキルや背景を持つメンバーをまとめてひとつの方向性を向かせつつ、それぞれが能力を最大限に発揮できるよう整備することも求められます。

 管理職は、上記5点を実施しながら人材を動かして成果の創出を目指します。

管理職に求められるスキル

企業や業種にもよりますが、一般的に管理職には以下の3つのスキルが求められます。

    テクニカルスキル

テクニカルスキルとは、業務を遂行するうえで欠かせない知識や能力のことです。

営業職なら製品・サービスに関する知識、エンジニアなら技術的な知識やスキル、と部署によって必要な能力は異なりますが、管理職としては、マネジメント能力や人事評価能力は所属に関わらず身につけておきたいところです。

  コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルとは、ものごとの本質を見定めることでメンバーやチームの可能性を最大限まで高める能力のことで、概念化能力とも呼ばれます。

部下を正しく解決に導くためには、業務上で発生する問題の本質を見抜く力が必要です。

  ヒューマンスキル

ヒューマンスキルとは、良好な人間関係を構築する能力のことです。コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力なども含まれます。

チーム内だけでなく、他部署や他社との関係づくりも管理職の重要な仕事です。

マネジメントスキルの取得

プレイヤーとして優秀と認められた人材をそのまま管理職に任命するのはよく見られるケースですが、優秀なプレイヤーが必ずしも管理職として成功するとは限りません。

管理職には社内リソースのマネジメントといった、プレイヤー時代とは異なる役割や能力を求められるため、いきなり管理職に任命されてもどうすればよいのかと戸惑ってしまうのも当然でしょう。

そこで有効なのが、新任管理職研修です。新たに管理職に昇格した人を対象に、必要な心構えやスキルを習得する場を用意することは、企業の重要な務めのひとつだといえます。

新任管理職研修で大切なこと

では、新任管理職研修を実施する際にはどういった点を重視すればよいのでしょうか。研修で大切にしたい3つのポイントを確認しておきましょう。

研修の目的を明確にする

新任管理職研修に限った話ではありませんが、企業が研修を実施する際には、その研修を行う目的を明確にしておくことが重要です。どのような課題に対し、どのような解決策を示すのか、研修の軸やゴールとなる部分をはっきりとさせる必要があります。

新任管理職研修では、あらかじめ自社が理想とする管理職像の定義やロールモデルを決めておくのがおすすめです。そして研修の冒頭で参加者へ提示し、目指すべきゴールを共有しておくと、より研修に対する理解が得られやすいでしょう。

スキル・マインドの両面を強化する

階層別研修といえば企業がその役職に求めるスキルや能力に重点を置いた技術的課題の強化が重視されがちですが、変化の激しい今のビジネス業界で活躍する管理職を育成する場合、特定の能力のみを伸ばすだけでは不十分です。特に管理職への第一歩となる新任管理職研修では、特定のスキル付与にとどまらず、管理職として活躍するために必要なマインドセットと両面からの強化が行われるのが理想的です。

管理職として活躍していくうえでは、自分の強み・弱みや価値観に向き合いながら、時代に合わせてマネジメント観をアップデートしていく力が求められます。スキル・マインド両面を強化する新任管理職研修であれば、変化に強く中長期的に効果を発揮する管理職の育成が可能です。

自社の状態・課題に応じた研修プログラムを組む

新任管理職研修の内容・プログラムを検討する際には、まずは自社の現状や現在の管理職が抱えている課題などを調査するとよいでしょう。研修内容があまりにも自社の課題とかけ離れていると、研修を行っても、受講者が自分ごととして捉えられず、効果が十分に発揮されない恐れがあります。

企業向けに研修を提供するサービスの中には、フォーマット化されたカリキュラムしか用意されていないケースも存在します。企業の置かれている環境や抱えている課題はそれぞれであることを考えると、外部委託する場合には自社の状態や課題に応じて柔軟にプログラムを作成・変更できるところを選ぶのがベストです。

新任管理職研修の目的

管理職研修は、対象者の階層によって新任管理職研修と上級管理職研修の2つに大別されます。初めて管理職になった人にとって大切なのは、管理職としてあるべき姿や求められている役割を理解し、管理・マネジメント力の基本となる知識やスキルを学ぶことです。

管理職としての役割理解

これから管理職として働いていくためには、まずは「自社が管理職に期待している姿」はどんなものかというところを正しく知る必要があります。自分に求められていることが最初に理解できていなければ、どのような姿を目指すべきかがわからなくなってしまったり、間違ったゴールに向かって進んでしまったりするためです。

新任管理職の多くは、つい先日まで主にプレイヤーとして活躍していた人たちです。プレイヤー時代には、自分自身の取り組みのみが評価される場面がほとんどのため、新任管理職には、こうしたプレイヤー視点を引き続き持っている人が少なくありません。

個人的視点から、チーム全体をプロデュースする立場へ、プレイヤー視点からマネージャー意識への改革が、新任管理職の第一歩です。

マネジメントの基礎力

適材適所な人材配置からチーム目標の設定、プロジェクトの進捗管理……プレイヤー時代にはほとんど経験することのない業務であるマネジメントについては、基礎の基礎から身につけていくことになるでしょう。

逆説的にいえば、新任時点で基礎的なマネジメントスキルをきちんと揃えられれば、チームのマネジメントも早期から円滑に進むということです。ここで企業側が新任管理職に対して適切な機会を与えられるかどうかというところは、管理職育成の成功を左右する大きな分かれ道といえそうです。

コンプライアンス

従業員が安心して安全に働ける環境を整備するためには、労働にまつわる法令や法律に関する知識の習得はもちろんのこと、情報漏えい等のリスク管理、メンタルヘルスやハラスメントに対する理解も欠かせません。新任管理職研修ではこれらを網羅的に学ぶことができます。

業務管理・効率化

プレイヤーとして優秀だった人材にとっては業務の管理や効率化はお手のもののように感じますが、チーム全体のこととなると、話は違います。チームの業務管理・効率化では、ヒト・カネ・モノといった社内リソースをどのように配置し、どこに集中させるかといった見極めが重要になります。

また、チームが目標を達成するためには、管理職によるKPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)の把握や適正な進捗管理、トラブル対応も必要です。

部下の育成・指導能力

プレイヤー時代にOJTやメンター制度といった一対一の育成は経験している人であっても、複数の部下をまとめて育成するといった管理職ならではのミッションには戸惑うことも少なくないようです。それだけ、管理職として部下を育成したり、指導したりすることは難しいということでしょう。

いきなり育成施策について問われても、「部下を育てる具体的な方法がわからない」といったところが本音のようです。特に近年は若手社員の価値観や仕事に対する考え方も大きく変化し、多様化の一途を辿っているため、今の時代に即した効果的な部下の育成手法を習得する機会は欠かせません。

チームマネジメント

これまでプレイヤーとして活躍してきた人にもっとも欠けている視点がチームマネジメントかもしれません。個人ではなくチームを動かすことによる成果の創出を求められる管理職では、自分が成果を生み出すことよりも、「いかにチームをうまくマネジメントするか」といったことのほうが重要になってくるのです。

新任管理職研修では、チームメンバーの誰もが働きやすい職場を整えるためのノウハウを身につけることも目的のひとつです。

組織改革・調整力

チームの目標を達成するためには、時には組織の在り方を見直す必要が出てくることもあるでしょう。

現在抱えている課題を洗い出し、必要な対策や施策を講じるのも管理職の仕事です。従来のやり方や考え方を変えることは容易ではなく、当然ながら反発も予想されます。その際、いかに周りを巻き込み、味方につけながら改革できるかは、管理職の手腕にかかっているといっても過言ではありません。

組織改革のために必要なコミュニケーション能力や調整力を身につけることも、新任管理職研修の目的に含まれます。

戦力立案

管理職は、これまでの取り組みの成果拡大だけでなく、新しいプロジェクトの立ち上げといった、未来を開拓し想像する視点も必要です。特に、潮流の速い現代のビジネスシーンにおいては、時代の流れや市場のニーズを捉え、引き寄せる計画立案力が早い段階から求められるようになってきました。

企業状況や業界にもよるものの、新任管理職研修のフェーズから戦力立案に触れておくと、チームや組織全体の熟成も早められると予想されます。

新任管理職研修を成功させる秘訣

最後に、新任管理職研修をより実りあるものにするための秘訣を紹介します。研修を設計する際には、以下の4点を頭においておくとよいでしょう。

現状の課題を把握する

一般的に新任管理職が共通して抱えがちな課題に対応するのはもちろんですが、より自社の管理職の悩みにアプローチできるプログラムが組めれば、新任管理職の効果は一層高まるでしょう。

自社の現状把握など具体的な課題の洗い出しには、現場への事前ヒアリングが効果的です。研修後の目標と現状とのギャップが、自社で不足している知識やスキルです。 

研修の目的を明確にする

研修後にどのような姿になってほしいかといった目的を事前または研修冒頭で受講者と共有しておくと、受講者が主体的に研修に取り組みやすくなるだけでなく、研修の効果が測定しやすくなる点もメリットです。

また、新任管理者のなかには管理職として働くことに不安を抱えている人も多く、そのまま放置していると退職につながってしまうほど悩みが深刻化してしまうかもしれません。こうした不安を軽減するためにも、研修で目指すべき姿を具体的に提示することは重要です。管理職として活躍する自分の姿がイメージできれば、より前向きに研修に取り組めるでしょう。

管理職に必要なスキルを理解する

先に紹介したように、業界を問わず管理職に求められるスキルはテクニカルスキル、コンセプチャルスキル、ヒューマンスキルの3つです。ただし、これらを研修で習得するためには、まずはプレイヤーからマネージャーへの意識転換が欠かせません。

したがって、研修冒頭に思考をシフトチェンジする機会を設けることが、新任管理職研修成功への近道となるでしょう。

マネージャーとプレイヤーで業務を切り分ける

新任管理職によく見られる課題に、「なにもかもを自分一人でこなそうとする」というものがあります。これも、プレイヤー時代の視点から脱却できていないがゆえに起こる問題です。

これから管理職として活躍していくためには自分でやるべきことを取捨選択していく必要がありますが、新任管理職研修を受講する初期段階で意図的にマネージャー・プレイヤーとしての業務をそれぞれ選択し、切り分けるようなプログラムを研修に取り入れるのも手でしょう。そうすることで、実践的に理解が深められると期待できます。

まとめ

管理職は、組織の成果拡大のためにチームの労働環境を整備し、人事育成やチームビルディングまで行う役職です。管理職がうまく機能することが、企業の強化や生産性の向上につながります。

上記のような役割をしっかり果たしてもらうためには、企業側も管理職に任命した段階からしっかりとサポートを実施する必要があるでしょう。新任管理職研修によって企業が求める姿を共有し、知識とスキルを身につける機会を提供するのが効果的です。

社内に研修ノウハウがない場合には、管理職研修・階層別研修をサポートまたは提供するサービスを活用するのがおすすめです。自社に合った新任管理職研修によって、理想的な管理職の育成体制を構築していきましょう。

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