2024.01.24

Z世代新入社員の可能性に光を当てるOJT:OJTが担うべき役割とは?

Z世代が新社会人として入社してくる昨今、OJTに求められる役割は複雑化しています。
実際に弊社リ・カレントが実施しているOJTトレーナー向け研修でも、このような声が聞かれます。

「これまでと同じように教えているのに、どうも上手く通じない」
「仕事のことだけを教えるというより、もっと根本的な指導から必要になってきた」

本記事では、Z世代新入社員に対して、OJTトレーナーが気を付けるべきポイントについて解説します。

今日から使えるOJTフレーズをぜひお持ち帰りください。

鷲尾 大樹
監修者
鷲尾 大樹
略歴
リ・カレント株式会社 若手人材開発事業部

監修者詳細

OJTの基本:「業務指導」だけで終わらないニュースタンダード

OJT(On-the-Job Training)は、実際の業務現場で経験を積むトレーニング手法です。
企業においては、座学だけでは習得しづらい実際のスキルや知識を身につけるのに広く活用されています。

特に新入社員育成においては、先輩社員がOJTトレーナーとして会社の文化や配属先特有のプロセスを伝える役割を担うことが多いでしょう。

一般的に「業務指導」を指すことが多かったOJTですが、組織や新入社員の変化にあわせて求められる役割は増えています。

今、OJTに求められる役割は3つ。「業務指導」「精神支援」「内省支援」です。

OJTに「精神支援」「内省支援」が求められる理由:Z世代の傾向理解

OJTトレーナーや新入社員育成担当者の「OJTで仕事を教えるだけでは通じない」という悩みの種。
その背景には、組織全体としてキャリア自律の重要度が上がってきたことがあります。

新入社員のうちからキャリア設計を行うことは日々の業務のモチベーションや自社に対するエンゲージメントを高めることもあり、早期からキャリア教育を行う企業は増えています。

▶Z世代の早期キャリア形成について詳しくはこちら

本来キャリアとは“一見無駄に見えるもの”や“当時は重要さを理解していなかったもの”の連続や積み重ねによって「自分はなにがしたいのか」という問いが生まれ徐々に形成されるものです。

新入社員の業務においては、目の前の仕事に一生懸命に取り組み、社内外問わず多種多様な人と関わることが自身のキャリアを考えるための材料になると言えます。
OJTトレーナーには、新入社員が業務の中からキャリアの源泉を見つけるための支援役を担うことが期待されるようになったのです。

また、ここ数年間で新入社員の傾向も変化しています。
彼らの特徴を一言で表すと「内省(振り返り)が苦手」というものです。

実際にOJTに取り組む先輩社員に話を聞いてみると、新入社員の振り返りについてこんな言動が挙げられます。

  • ポジティブな言葉ばかりが並び、上司・先輩から見た様子とは食い違う
  • 何を聞いても「大丈夫です」「それなりにやれています」と通り一遍の回答ばかり
  • 個別のエピソードに対する反省は多いが、そこからの学びを聞いても「?」で返される

新入社員一人に内省を任せていると、自身がした言動に対して、「うまくいかなかった」「他人に迷惑をかけてしまった」と認識することで、自分に価値がないと感じて自己評価が低下してしまいがちです。
その結果、労働意欲が減少し、過度な配慮や避ける行動を取ることが増えていきます。

彼らは、他人に迷惑をかけてはいけないとの社会的なプレッシャーや、自己評価を過度に抑える謙虚さによって、フィードバックを受け入れにくい傾向があります。
また、業績の上昇や自己効力感が低いことから、自身の成長や能力を過小評価し、ネガティブな自己イメージが強化されてしまうことがあります。

そのため、彼らが適切に内省を行うための支援が、OJTトレーナーに求められるようになっているのです。

▶Z世代の「ネガティブ内省」対策について詳しくはこちら

OJTで押さえるべき3つの軸

では、ここからはOJTで押さえるべき3つの軸「業務指導」「精神支援」「内省支援」について、それぞれ詳しく解説していきましょう。

業務指導:「完璧じゃなくていいからやってみよう」

精神支援:「大したことじゃないから大丈夫」

内省支援:「そもそも根本は? それなら~」

OJTの大前提:あえて完璧を目指さない「業務指導」

業務指導はOJTの根幹を担います。
スムーズな業務指導には知識伝達だけでなく、コミュニケーションと信頼構築が重要です。

ポイントは「あえて完璧を目指さない」こと。

自身の言動に対して「うまくいかなかった」「他人に迷惑をかけてしまった」と過度に反省しがちな新入社員に完璧な理解・実践を求めて指導すると、彼らは失敗を恐れて挑戦を避け、試行回数が少なくなってしまう可能性が高いです。

理論的な理解だけでなく、経験を通じて成長するためには、新人が積極的に挑戦し、失敗を恐れずに学べる環境を整えることが必要です。

「完璧じゃなくていいからやってみよう」と実践を促し、分からないことがあればいつでも質問できる雰囲気を醸成することが生産性向上に繋がります。

ただし、曖昧な指示で実践を促すのは注意が必要です。
次の「精神支援」の章で詳述しますが、Z世代の新入社員は「曖昧さ」にストレスを感じやすい傾向があります。

OJTトレーナーとしては、全体像や詳細の説明といったインプットは行ったうえで、アウトプットの完璧さを問わずに実践を促すという姿勢が望ましいでしょう。

OJTトレーナーが”保護者”にならないための「精神支援」

OJTにおける精神支援は、新入社員が安心して業務に取り組めるように背中を押すことが求められます。
特に、新入社員が初めて取り組む業務への挑戦に際した不安やストレスを軽減できると良いでしょう。

そのために知っておきたいのが、Z世代の新入社員は「曖昧さ耐性」が低い傾向にあるという点です。

「曖昧さ耐性」とは、不明確な状況にどれだけ不安を感じるかを指します。

曖昧さ耐性が高い人は、先の見通しが立たない状況でも冷静に対処できる傾向があります。
一方で、曖昧さ耐性が低い人は、はっきりとした答えがない状況で不安を感じ、自分の気持ちを整理するのが難しいとされています。

Z世代の新入社員は、自分では判断が難しいものに対して曖昧なままにしておくことに耐え切れず、大きなストレスを感じている可能性があります。
そして、それらは往々にして、OJTトレーナーから見れば「そんなことで?」と思うような些細なことだったりするのです。

ポイントは、共感を示しつつもケアに偏りすぎないこと。
新入社員のストレスを気にかけるあまり先回りでケアをしすぎてしまうと、彼らの体験をかえって損なう可能性があります。

新入社員が自分自身で実践に踏み出し、成功体験や「失敗したけど大丈夫だった」という体験を獲得するプロセスが重要です。

OJTトレーナーは、新入社員の曖昧な物事に対する不安に共感したうえで「大したことじゃないから大丈夫だよ」と視野を広げてあげると良いでしょう。

▶Z世代の「曖昧さ耐性」対策について詳しくはこちら

Z世代のOJTに欠かせない「内省支援」2つのポイント

内省支援のメリットは大きく、特に今のビジネス環境では、内省を行うことで得られる価値が増しています。

現代の仕事は多様で変化が激しいですが、内省を通じて自分自身の強みや弱点を把握することで、キャリアプランを描く手助けになります。
内省を通して将来のキャリアビジョンや目標を持つことは、仕事に対するモチベーションを高め、やりがいを感じる源となります。
自分の価値観や適性を再確認し、その基盤の上にキャリアを築いていくことができるのです。

また、日々の業務の結果を振り返り、学びを得ることで、成長の機会を逃さずに済むでしょう。
日常の業務で学んだ経験を振り返り、類推する力は、成長のために非常に重要です。

しかし、内省の機会を逃すと、「ここでやっている仕事が、いったい何の役に立つのか」が自身の中で意味づけられなくなり、新しい状況や業務に対する対応力が低下してしまいます。

OJTにおける内省支援のポイントは次の2つです。

1.抽象度をあげる「そもそも」、学びを転用する「それなら」

新たなステップを踏んで経験を拡げるためには、具体的な事象や知識を蓄えることが不可欠です。
新入社員のOJTにおいては、日々の業務の中から自己の考えや価値観、業務の本質を内省するための材料を集め、抽象化していくことが重要です。

そのためにOJTトレーナーは、次の2つのフレーズを活用して、新入社員の抽象化と学びの転用を促すとよいでしょう。

「そもそも、今回のことの根本は何だろう?」

「それなら、こういう場面でも生かせそうだね」

2.価値観にあたりをつける

内省力を強化するうえで、OJTトレーナーからのフィードバックは重要な役割を果たします。

内省支援をスムーズに行うためには、新入社員の価値観に合わせたフィードバックができるとさらに効果的です。

たとえば「社内イベントを避ける傾向がある」「”雑用”という言葉をよく使う」といった特徴がある新入社員であれば、「自己成長に貪欲、キャリアを拡げることが価値観にありそうだ」とあたりをつけるといった具合です。
こうした新入社員相手であれば、「次はこうした点に気を付けられると、役職が上がって○○を担当するときにも役立つよ」とフィードバック時に添えるといった工夫ができます。

▶新入社員の内省力強化プログラムについて詳しくはこちら

まとめ

本記事では、Z世代新入社員に対するOJTのポイントについて解説しました。

一般的に「業務指導」を指すことが多かったOJTですが、組織や新入社員の変化にあわせて求められる役割は増えています。

今、OJTに求められる役割は3つ。「業務指導」「精神支援」「内省支援」です。

特にZ世代の新入社員に対するOJTにおいて知っておきたいのが、Z世代の新入社員は「曖昧さ耐性」が低い傾向にあるという点です。

このため、「精神支援」「内省支援」の役割が重要となります。

記事内では、これら3つの軸それぞれについて詳しく解説するとともに、OJTトレーナーが今日から使えるフレーズをご紹介しました。

業務指導:「完璧じゃなくていいからやってみよう」

精神支援:「大したことじゃないから大丈夫」

内省支援:「そもそも根本は? それなら~」

OJTトレーナーや新入社員育成担当者の「OJTで仕事を教えるだけでは通じない」という悩みを解消するために、本記事をぜひご活用ください。

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