フォロワーシップになぜ着目するのか?
1.フォロワーシップとは何か?
フォロワーシップとは、日本語で一言で表現すれば、
「リーダーへの自律的支援」と「組織への主体的貢献」 です。
フォロワーシップは、部下という立場の人が目的を共有するチームを機能させるため、
上司やチームメンバーに対して、主体的に働きかけることです。
そのため、フォロワーシップでは決して受身で行うことではなく、自律性と主体性が問われるのです。
2.なぜ、フォロワーシップに着目するのか?
現在、上場企業においては課長職のほぼ全体でプレイングマネジャー化が起きています。
日本能率協会の調査では、1985年には個人の業績目標を持っている課長の割合は20%に満たなかったのですが、2000年には90%に上昇しました。
結果を厳しく査定される成果主義では、どうしても自身の実務遂行に力を注いでしまいます。
課長職の多くが部下育成や職場のチームマネジメントに集中できない状況に追い込まれています。
日本が右肩上がりの経済成長時代に戻ることはもうありません。今後の国内市場はどんどん成熟化に向かいます。つまり拡大再生産ではなくイノベーションが求められます。
またグローバル経済下では、激しい競争状態を現場で勝ち抜かなければなりません。本社の指示待ちではなく、自律的判断をスピーディーに行わなければなりません。
したがって強力なカリスマのリーダーシップによる求心力で動く組織ではなく、
組織の示されたミッション・ビジョンの実現に向けて現場で自律的に主体的に支援や
貢献が行われるフォロワーシップによる遠心力で動く組織が求められています。
3.フォロワーシップの特性-リーダーシップとの相乗効果
フォロワーシップは単独では影響力を発揮できません。リーダーによるリーダーシップとの関係の中で効果を発揮します。(図2参照)
例えば「方向」という領域では、リーダーシップは「ビジョンを示す」のに対して、フォロワーシップでは「翻訳して、具体化する」です。
これは、リーダーによって組織の目的や方針が示されたら、フォロワーがブレイクダウンして実現可能な施策や計画に落とし込んでいくということです。
個人毎にバラバラで組織として動けないチームは、リーダーとフォロワーの間で「目的・方針共有-具現化-実行-検証」ができていないのです。
リーダーシップの「焦点」が「決定する」に対して、フォロワーシップでは「提言する(健全な批判をする)」です。米国におけるフォロワーシップの定義では「批判する」となっていますが、個人と会社が対等な契約関係では結ばれていない、個人の自律性が未熟で集団としての同質性が強い日本の企業組織では「提言する」とか「健全な批判をする=自分なりの代替案を示す」という考え方がフィットするでしょう。
4.フォロワーシップの効果
フォロワーシップの提唱者である米国カーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授の調査によると、組織が出す結果に対して「リーダー」が及ぼす影響力は1~2割。対する「フォロワー」が及ぼす影響力は8~9割にものぼるそうです。
企業再生や組織変革の成功企業の中には、企業トップの功績として取りざたされているものが多数ありますが、マスコミとして劇的なストーリーを作り易いからであり、実際は多くのフォロワーの活躍がなければ成立しなかったものばかりです。
組織改革を始めるのはリーダーですが、完遂させるのはフォロワーなのです。
フォロワーシップには、チームにとっての「組織的効果」と、フォロワー自身にとっての「個人的効果」の2つの側面があります。
<組織的効果>
①目的・方針を共有して実行に移すことができる
②上司の判断や決断のミスや、ぬけもれを防ぐことができる
③現場の生の情報をボトムアップすることができる
④チームとしての一体感や凝集力を高めることができる
⑤提案・提言する雰囲気や文化をつくることができる
<個人的効果>
①指示待ち的な姿勢が、自律的に考えて行動する姿勢に変わる
②人間的な好き嫌いに依存することなく、上司と仕事をするようになる
③上司の立場で考えることにより、マネジャーとしての予備的訓練になる
④上司からの評価が向上して、より大きな権限を獲得することができる
⑤一匹狼的な動きが、他メンバーと協働する動きに変わる
5.フォロワーシップは誰のものなのか
フォロワーシップは部下の立場の人のためにあると定義しましたが、実際の組織では、リーダーとしての立場にある人にも求められます。
つまり全ての構成員に求められるものなのです。
具体的には次の2種類があります。企業は方針展開や公式の権限行使で組織活動が行われます。したがって課長は部長に対して、部長は役員に対して、役員は社長に対してフォロワーシップが求められるのです。
そしてもう1つは実務遂行における考え方です。
チームの中では、役職の上下に関係なく、そのテーマや課題において一番当事者意識や経験のある人が権限を獲得してリーダーシップを発揮した方がいい結果を出せます。
上司は自分の役職や肩書きに関係なく、リーダーシップを発揮している部下に対してフォロワーシップを発揮することが求められるのです。これは、ビジネスパーソンが仕事への当事者意識とモチベーションが高まる「自己決定」をした時でもあります。
つまり上司が部下にある分野の仕事を任せてリーダーとして「決定」を委任して、そこに対して「提言する」「健全な批判をする」ようになれば、部下はやる気を起こすようになります。
部下に十分な経験や知識があればリーダーを任せ、上司が意識的にフォロワーシップを発揮すれば、部下はストレッチできてチームとしても強くなれるのです。
6.日本企業の人材・組織の特徴について
組織の2:6:2の原則と人材・組織開発とはどんな組織も2:6:2の原則(できる層20%、ふつう層60%、できない層20%)に当てはまると言われます。組織全体をとっても、ある階層だけに限っても、ある部署だけに限っても同じです。
「できる層」2割は、心に火がついたリーダー層ですから自律的に動きます。問題は「ふつう層」6割です。火種を持ってはいるが本気さの見えにくい彼らに、自律層・主体層に自ら変わってもらえるかが組織力強化の要となります。
「ふつう層」6割に組織の中でリーダーシップを強要してもプレッシャーを感じたり、周囲からの期待と本人の志向のミスマッチが生じてマイナス効果です。彼らは決してサボっている訳ではなく、一担当者として一生懸命にやっているからです。
では、どうすればいいのか。
「ふつう層」6割に期待すべきは、上位者にもっと関わり、チームメンバーと協働していくフォロワーシップです。
フォロワーシップ発揮によって、リーダーシップとの相乗効果を起こして、チームワークを高めていく推進役になってもらうことが、組織力強化のカギなのです。
またフォロワーシップは「ふつう層」6割のモチベーション向上と組織のチームワーク向上に結びつきます。
「ふつう層」6割のフォロワーシップの発揮によって、「できる層」2割との協働が生じ、 結果として組織目的や目標の達成がチームとして推進されるようになるのです。
7.企業の年代層別に見た特徴と人材・組織開発とは
企業の年代層別に見てみると、ロストジェネレーション世代の中堅層、ゆとり世代の若手層など、リーダーにはなりたくないと思っている社員が多く、彼らにリーダーシップを過剰期待すると不適応を起こします。
組織の人員構成上突出しているバブルミドル層で役職者として昇格できていない人たち、また役職定年を迎えて過去の自分の成功体験をどのように活かせばいいのか逡巡している人たちの多くは、モチベーションダウンとチーム不関与の状態に陥っています。彼らにリーダーシップを期待しても、それは自分の仕事ではないと反発が生じるでしょう。
では、どうすればいいのか。
答えがフォロワーシップにあります。
リーダーシップとの相乗効果を発揮してチームワークに貢献していくというフォロワーシップの価値をもっと知ってもらいリーダーへの自律的支援、チームへの主体的貢献に力を注いでもらうのです。
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